Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    tsukumoans

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 12

    tsukumoans

    ☆quiet follow

    先日のイベントで檻頂いたので、🦊と🐰を入れてみましたシリーズ(シリーズ?)
    第1弾 🐰救出の巻。純愛風味。よくあるやーつ。

    #燐ひめ
    rinhime

    檻(その1)「ここ…は」

    檻の中、薄い敷物の上で目覚めるなんて最悪だ。なにか薬品を嗅がされたのか、まだ少しクラっとする。

    桜河と要と3人で果物を見つけに散歩していたら、急に銃声が聞こえた。要を逃がす事を第一に考えて移動していたら、気づけば目の前に人間がいた。それ以降は思い出せない。ここに居るのが俺だけって事は、彼らは無事に逃げられたんだろう。

    「くそ。人間に捕まるなんて、大失態だ」

    多数の兎を捕まえる予定だったのか、比較的大きな檻に入れられたのが、不幸中の幸いだった。不安は残るが、ここからどう逃げるかの算段も立てやすい。
    今は周りに俺を捉えた人間も居らず、足音も聞こえない。きっと他の獲物を狩りに行ったんだろう。
    逃げるなら今のうち…と考えを巡らせていると、カサッと草のなる音。どんどん近づいて来てるコレは…。

    「…!」
    「お?なんかいい匂いすんなァって来てみれば、メルメルじゃん。なに?捕まっちまったの?」

    フンフンと匂いを嗅ぎながら顔を出したのは知り合いのキツネ。近くに人間の気配がないと分かると、檻に近づいてきた。

    「なァ、アンタ捕まっちまったんだろ?助けてやろうか」
    「キツネの貴方に助けられても、結局は同じ末路ですので、遠慮しておきます」
    「えー?俺っち優しいキツネさんなんだけど?」

    それに、

    「知ってんだろ?俺っち、アンタの事気に入ってんの。他のヤツに取られんのヤなんだよ。素直に助けられとけ」
    「いつもそんな事言って…。そんなの、俺がウサギだから食べたいだけだろ」
    「違ぇって。何回言わせたら気が済むのかねェ、この頭でっかち」

    俺の近くに寄ってくるキツネ、もとい、天城。不安な状況で、こんな軽口が叩けるやつと出会えてまだ良かった。そして、頭の回るこのキツネが、なんの策もなく人間の罠に近づくはずがないのだ。

    「さて、と。んじゃ、開けるか」
    「な!そんなこと、出来るわけ」
    「まあまあ、焦んなって。ここ来る前にキラキラしてるの見つけたんだよ。ほら見ろよ、コレ」

    やっぱ俺っちツイてるっしょ!?と見せてきたのは鍵束。確かに、複数ついたその鍵の中に、実際にこの檻に合うのもありそうだが。

    「…それ、何個ついてるんです?」
    「あー、50個くらい?でも、数打ちゃ当たンだろ」
    「…探してる間に人間が帰ってきたらどうするんです。その中に、この檻の鍵か入っているかも定かでないのに」
    「そンときゃ、そン時だ」
    「はぁ。…鍵、渡してください。俺が中から探ります。俺のせいで貴方まで捕まるなんてごめんです」
    「俺っちの心配してくれんの?メルメルって実は大好きだもんな、俺っちの事」
    「ちが!こんな時に茶化すな!」
    「大丈夫だって。メルメルのおっきなお耳で足音聞き分けてくれるっしょ?」
    「それは、そうですけど」
    「それに、こんな一世一代の大勝負。逃げて負けなんて、勝負師の名が泣くっしょ!」

    ニカッと笑って、言い放つ。

    「すぐに助けてやっから、俺っちが勝つ方に賭けて待っとけよ」

    そんな事を言うだけ言って、南京錠と向き合う。そこからは黙々と鍵を刺しては回す作業だ。
    俺はハラハラしながらも周囲に気を配る役目。
    すぐに人間が戻ってこない事を祈りながら、鍵の行方を見守るだけだった。


    *****

    「天城、もう、諦めてください」
    「ヤダね。ぜってー諦めねぇから!」
    「なんで…」

    もう何個目か分からないくらい鍵を回していた。鍵穴に入らないもの、入っても回らないもの、色々あった。この中に無いのか?と諦めが滲み始めた頃、カチャと回り鍵が開いた。
    すぐに檻から南京錠を外し、目の前の扉が開かれた。

    「ほら、来いよ」

    心配で扉の目の前で座っていた俺に手を伸ばしてくる。俺もまた手を伸ばすとギュと握られ引き寄せられる。そのまま天城の腕の中に包まれた。

    「あ、天城!?」
    「暴れんなって。少しくらい良いだろ?」
    「」
    「今メルメルを助けられたって実感してるとこなの」
    「そ、うですか…」

    ありがとうございます、と聞こえるか聞こえないかの声で伝え、ギュッと抱き締め返す。首元にスリっと擦り寄られれば、天城の耳が頬を擽る。擽ったくて首をすくめると、顔を覗き込まれる。碧の瞳と目が合うと、そのまま顔が近付いてきて額をコツンと合わせられる。

    「好き」
    「……」
    「ずっと、初めて見かけた時から好きだった」
    「…知ってる。でも、違うだろ?お前は俺の事、食べたいだけだ」
    「食べたいよ?でもそれは、アンタが思ってるのとは違うと思うけどな」
    「なに…?」

    怪訝な顔をしていると、髪を耳にかけられ、晒された首筋に唇が落とされた。チュと吸い付かれ、舐められる。

    「!?」

    ゾワッと今まで感じたことの無い感覚。思わず肩を押して距離をとる。…何、今の。

    「俺っち、こーいう意味でメルメルの事食べたい。こういう意味で、アンタが好き。なぁ、俺じゃダメ?食べられたくない?」
    「そ、なの、」

    視線がさまよって俯き、口を閉じる。顔が赤くなってるのが分かる。熱い。
    そもそも、食物連鎖として弱者は食われるのだと、思っていたのだ。こんなの、急に言われても、困る。

    「「……。」」

    何も言えない気まずさに、手を握りしめる。

    「…ま、とりあえず、ここから離れるか」
    「そ、うですね。ずっとここに居るのも危ないですし」

    そのまま背を向けられ、思わず手を伸ばしパーカーを掴む。え?と振り返った天城も、俺自身も驚いた顔で見つめ合い、一瞬時が止まる。
    ふっ、と笑って手を握られ、やっとちゃんと檻の外へ連れ出された。

    「んじゃ、行きますか♪」
    「行くって、どこへ」
    「さァて、どこだろうな?」


    まずは、人間のいない、安全な場所へ。話はそれからだ。


    -fin-
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺💞❤💙
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    tsukumoans

    TRAINING小話。ただ書きたかっただけ。801☆(今の時代でも伝わるのか?)

    ※以下言い訳(読まなくていい)
    書きかけが現時点で2本あり、燐ひめなんか書きたいんよ……ってnote開いたら\書きかけあるよ!/って主張されるから全然他が手付かない状況なう。燐ひめなんか書きたいちょっと健全なやつ。ドのつくエチしか書いてない。進まない。終わらない。ぴえん。
    ※ナチュラルに同棲
    (リビングのソファとかかなぁ)(ざっくり)


    「なァ、メルメル〜」
    「なんですか?」
    「今日一緒に寝よ?」
    「…嫌ですけど」
    「なんで?」
    「なんでとは?」
    「別にエッチしよって言ってるわけじゃねぇし、いいじゃん?」
    「ばっ!…黙るか死ぬかしてくれません?」
    「メルメルそればっかり!酷い!」
    「はぁ…」
    「なァ〜、たまには頑張ってる燐音くん甘やかしてくンね〜?」

    上目遣いでねだってくる。俺がこの顔に弱い事を知っていてやってくるからタチが悪い。

    「……。」
    「ダメ?」
    「……添い寝ですからね?」
    「やったー!メルメル愛してる!」
    「…安いセリフだな」

    ガバッと抱きつかれ、頬を少し赤らめながら言うセリフでは無い。それでも恋人を甘やかしている自分を誤魔化したくて、自分もしたいと思ってるなんて思われたくなくて、つい口に出してしまった言葉は戻らない。
    1046

    related works