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    解凍みかん

    @kaitoMIKANE

    腐人(20↑)の雑多垢。
    書きかけやチョロっとした話を投げています。

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    解凍みかん

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    夜行性のしゃけ様(Code_1000_)からいただいた、「ホークスと黒影の中身が入れ替わる」ネタでお話を書かせていただきました。
    とても楽しかったです。
    ネタの使用を許可してくださり、本当にありがとうございました。

    #ホー常
    hoEra

    きみに触れる内と外なんでもない昼下がりのことだった。
    インターンとして赴いている常闇とのパトロールの終了地点を、たまたま高層ビルにしていて、たまたまその日、ビルの窓拭きが行われている日だった。
    パトロールが終わり、さあ事務所へ帰ろうかと腰をあげたところで「あっ」と下から声がした。下をのぞけばビルの清掃員が商売道具を落としかけている。ビルの高さは三十メートルはあるだろう。落下すれば、例え小さなものでも地面に到達するまでには相当の威力のモノになる。眼下の人通りは多い。咄嗟にホークスが手で、常闇が黒影に指示を出して、そして清掃員の男も必死になって、三つの手がその落下物へと伸ばされた。
    黒、黒、肌色。三つの手が合わさった瞬間。
    「あっ」
    今度は誰が言ったかわからない声が、その空間に響いた。

    結果として、商売道具は三つの手に無事にキャッチされた。
    そこそこインパクトのある代償を残して。
    「フミカゲと繋がってないのやだあ!」
    「だ、黒影……今の状況では無理だ」
    「本当にすみません……」
    「……マァ、ワザとジャナイんデ仕方ないッスヨ」
    清掃員の男の個性は「入れ替わり」だった。男が触れた者と中身を入れ替えることが出来る、実用向きではないが、エンターテイメント的には最高の個性だ。
    それが、先ほど無事に商売道具を掴めた際、気を抜いたせいか発動してしまったらしい。そうして出来上がったのが、ホークスと黒影の中身が入れ替わった、ホークスの外見で中身が黒影、黒影の外見で中身がホークスという、常闇としては困惑を極める状態だった。
    とりあえず清掃員が使っていた命綱のロープを頼りに、ホークスと常闇の身体を地面に降ろしてもらい、男から上記の謝罪をもらう。
    当たり前だが、常闇の身体と離れたことなどない黒影は今の状況が不安で不安で仕方ないらしい。ホークスの中に入れられてからというもの、常闇のお腹にしがみついて「中に入れてくれ」とずっと泣いている。
    二十三の男が男子高校生に泣いて抱きついている光景は控えめに言っても酷く、黒影の気持ちは分かるが、「絵面が……」とホークスはついつい引かざるを得なかった。
    個性を発動した男によれば、この個性は半日待つか、男にもう一度個性をかけてもらうかすれば元に戻れるらしい。今の絵面が相当マズいものであることを理解している師弟たちは、迷わず男に「戻してくれ」と懇願したが、それはそれで一時間に一度しか使用出来ないので、最低でも一時間はこの状態で待ってもらわないといけないという。
    ちなみに男は今まで自分と相手の中身しか入れ替えたことがなかったが、幸か不幸か、今日こうして男が触れている人物同士の中身も入れ替えることが出来ると知り得たようだった。そして、入れ替えられる対象が“人間”ではなく“自我を持っているもの全て”であることも新たに知れた事実らしい。
    まるで成功した実験報告みたいに告げられたところで、入れ替えられた側は喜ばしくも何ともない。
    引き攣った笑顔で男の話を聞きながら、ホークスは自分の身体に抱きつかれている弟子を見る。頬が少し赤い。
    黒影の身体に入っているせいか、いつもなら「そうなのかな?」くらいしかわからない常闇の感情がしっかりわかる。照れている。
    (良かった……)
    ホークスは内心胸を撫で下ろした。
    弟子の常闇のことは、恋愛感情で好きだった。
    気持ちを伝えたら、なんの奇跡か常闇からも同じ気持ちが返ってきた。卒業したら恋人になろうと約束し、現在はその日をいまかいまかと楽しみにしながら過ごしている。
    常闇の気持ちを疑うつもりはないが、それでもこんな情けない姿ばかりしか見せていない師匠の一体どこに惹かれてくれたのか、皆目見当がつかずずっと不安だったことは確かだ。
    だから、良かった。
    あの赤い顔は、好意を寄せている相手に抱きつかれ照れている故のものだ。ちゃんと常闇に好かれている。
    今日は一日目の前のビルの窓拭きをしているという男に、また後でここまで来る旨を伝え、ホークスは弟子と自分の身体に入っている黒影に向き合った。
    黒影は少し落ち着いてきたのか、常闇に抱きつくのはやめて、今は向き合って座っている。
    黒影ーーが入っているホークスが、常闇の手を握ってすがるように呼びかける。
    「フミカゲ……」
    「な、なんだ……」
    「フミカゲ……」
    「う……そ、その顔であまり名前を呼ばないでくれないか……」
    常闇としては今、まさに想い人から名前を呼ばれている状態である。中身が黒影といえど見た目と声はホークスのそれだ。いつもは「常闇くん」と紡いでくれるその口が「ふみかげ」とささやけば、どこか落ち着かなくてどこか照れくさい。まるでホークスの恋人になったような気分だった。
    不安ゆえに、常闇の名前を呼んで落ち着こうとしているのだろう。気持ちはわかるのだが、呼びかけられれば呼びかけられるほど、自分でも顔に熱が集まっているのが分かる。
    「……キミらネ……そのビジュアルでいちゃツクの止めヨウ……?」
    「ホークス!」
    「ほ、ホークス……!別にいちゃついてた訳では……!」
    本人たちは無意識だろうが、端からみれば、お固い彼女を甘く呼んで口説いている彼氏のそれに近い。
    黒影がいつもの姿なら微笑ましかっただろうが、今は自分の身体である。黒影が羨ましいような、もう一人の自分が常闇と戯れていて面白くないような、ホークスとしては複雑な気分だった。
    そんな気持ちを紛らわすように「ハイハイ」と手を叩いて本題を切り出した。
    「トリあえズ、ホークス事務所で待っテヨウ」
    一時間とはいえ、この酷い絵面をこの公衆の面前にさらし続けたら、いずれ雄英高校にいる生徒想いの先生に知られて出禁にされそうだ、常闇が。ホークス事務所どころか福岡を。それはとても困る。
    弟子も屋内で待機していたほうが良いと判断したのだろう。「御意」と言葉が返されたが、すぐに戸惑ったような顔をした。
    「ドウしたノ?」
    「あ……えっと、その……ここからホークス事務所までは歩くとかなりの距離があるうえ、この状態で町中を歩くのは些か厳しいと思うのだが……」
    「エ?ウン、なら飛ンで帰レばイイ……あ」
    そこまで言って、優秀な弟子がなぜ戸惑ったのか気がついた。
    そうだ。今、常闇くんが飛ぶために頼る個性は俺だ。
    「ハハ……えっト……“黒の堕天使”、で合っテるカナ?」
    「はい。……出来そうですか?」
    「ウン……やって見ル。さすがニ歩いテ帰レル距離じゃナイからネ。あと、黒影くんモ。慣れナイ身体で飛ばナイ方ガイイから俺が何とかスル」
    常闇の技は一通り見せてもらっているし、しっかり記憶している。
    記憶から常闇が空を飛んでいる姿を引っ張り出し、とりあえず見様見真似で自分の手を伸ばしてみた。
    「ヨシ、イケそうダ」
    構えていたよりは身体を自在に操れそうで安心する。
    そんなホークスを見てか、黒影が近づいてきてアドバイスをくれる。
    「ホークス、手を伸ばしたらフミカゲのお腹あたりに巻くんだぜ」
    「オッケー。コウ?」
    「おう。それでもうちょっと手を伸ばせば完璧だ」
    「外套のここから手を、ここから顔を出してください」
    「ハイハイ」
    常闇も丁寧に己の外套をまくってくれた。
    視点がいつもと違うのでよくは見られないが、ぶっつけ本番でやったわりには見慣れた“黒の堕天使”らしくなっているような気がする。
    「これデ浮ケばイイんダネ」
    試しに浮上するイメージで身体を動かせば、徐々に常闇の足が地面から離れ始めた。
    前に行きたい。右に行きたい。今度は左。ぐるっと方向転換してさっきのところまで戻りたい。
    剛翼とは違い、黒影の飛び方は、何かを操作するのではなく自分の身体を動かすような、いわゆる歩いたり走ったりするのと同じ感覚だった。
    その感覚を掴むために三分ほど自由に動き回り、だいたい良いだろうと、ホークスの身体で上空を見上げている黒影がいる元の場所へ着地したときには、常闇は目を回していた。
    「ウワ、ゴメン……。イツもハ常闇クンが指示シテ飛んでルんダッケ……」
    「あーあ、フミカゲ大丈夫?」
    「う……し、心配無用だ……」
    そうは言っても気持ち悪いのだろう。駆け寄って背中をさすっている黒影を片手で制しているが、見るからに顔色が悪い。
    少し落ち着いたところで、「俺の指示というよりは」と常闇がいつもどうしているか教えてくれた。
    「俺のしたいことを黒影が分かってくれている感覚に近いですね。俺が指示を出しているのは、ただただ話しかけているだけにすぎない。それは、意思がある以前に個性だからだろうとは思うが……。今回も行く方向はなんとかなく分かっていたんだ。……が、黒影が自分で動くとこんなにも気分が悪くなることはよく覚えておきます」
    「……ゴメんって」
    その後、今度は気をつけながら、黒影が入ったホークスの身体を持って飛ぶ練習をして、なんとか三人でホークス事務所まで辿り着いた。が、ここで一悶着があった。
    事務所の入口で「タダイマ帰りマシター」といつものように間延びした挨拶をすれば、職員全員が振り返る。
    そうして目に飛び込んできた光景が、なんだかふてぶてしい黒影と、大事なインターン生の腰に不安そうに抱きついている所長の姿である。
    無言で受話器を持ち上げ、黒マスクのサイドキックが110番を、鳥マスクのサイドキックが雄英高校の番号を押し始めたところで、「個性事故ナンデス!!」と黒影ーーの中に入っているホークスーーが高らかに叫んだ。
    一通り事情を説明し、まぎわらしいうえに仕事に支障もきたすということで、一時間経つまで大人しくしていろ、と事務所内に併設されている仮眠室へ師弟ともども押し込まれた。
    「……ドウスル?何か食べル?」
    「いや、結構だ。……黒影はどうだ?師の身体ではいつもより腹が減るのではないか?」
    「いらない……ぅ……。それよりも早くフミカゲの中に帰りたい……ぐすっ……外に出っぱなしだと落ち着かねえ……」
    「ぐっ、黒影、気持ちはわかるが頬擦りは止めてもらえないか」
    仮眠室へ入った途端べそをかきはじめた黒影に、常闇はまた照れていた。自分の好いている相手に抱きつかれたあげく、胸にとはいえ頬擦りをされたらそれはそうだろう。
    ホークスは自分の奥底に眠っている“恋人に思いっきり甘えたい”という願望が具現化しているようで、何だかいたたまれず、その光景は直視出来なかった。必死に、自分の泣き顔を見て気を紛らわす。自分自身の泣き顔など初めて見たが、想像していたよりずいぶんと情けない顔だ。
    一時間ずっとこのままなのはさすがに空気が重い。なにか気分展開になることはと考えて、ホークスはふと、先ほど常闇を抱えて飛んだことを思い出す。
    いつもの違う身体の動かし方や感覚は、いやに新鮮だった。個性に成れる日なんて今後二度とないだろう。そう思えば、自分のいまの身体に俄然興味が湧いてきた。
    「ネエ、常闇くん。黒影クンを体に纏ウヤツ、やっテ見てモイイ?」
    「そ、それは深淵暗躯(ブラックアンク)のことだろうか」
    「ウン、ドンな感覚なノカやっテみたクテ」
    「し、しかし……」
    「いいじゃねえか!やってみようぜ!オレが教えてやるよ!」
    涙をひっこめ、黒影は打ってかわって自身の身体に入っているホークスに嬉々としてやり方を教え始めた。きっと誰かに自分の得意を教えるのが楽しいのだろう。
    そんな相棒の様子を複雑そうに眺めながら、常闇は内心焦っていた。ただでさえ外見が恋人である黒影に、普段と変わらぬゼロ距離で接せられているのに、これから中身が恋人に文字通り密着されるのだ。恥ずかしいやら何やらで、もう常闇の頭のなかはぐちゃぐちゃでわけがわからなくなっていた。
    今にも目を回しそうな状態の常闇に、するりと黒影となっているホークスが巻き付いてくる。
    「上手いな、ホークス!そうやってフミカゲの体をなぞるように全身を囲うんだ」
    「ナルほどネ。コレって頭モ囲うンダっケ?」
    「そうだぜ!口から上までな」
    「……ぁ、も……」
    するすると全身にホークスが纏われていく感覚についに常闇の目が回りだす。
    仕方がないのだ。お互い好き合っているとはいえ、肌を重ねたことはない関係だ。それどころかキスさえも、手さえも繋いだことがない。おまけに常闇にそういった経験は一切ない。ウブな男子高校生にこの状況は刺激が強すぎた。
    手や腕などではなく、触れられ慣れていない箇所を意中の相手に触られるだけでも気恥ずかしいのに、優しく撫でるように全身を包みこまれていっているのだ。この真っ昼間に己の想像力をいかんなく発揮した夜の営みを想像してしまい、そしてそんな自分自身が恥ずかしくて、いっぱいいっぱいだった常闇の精神はついにキャパオーバーを迎えた。
    「ナンか常闇クンの体温なのカ今チョット温かク……アレ?」
    「……フミカゲ気絶してるな」
    「アハハ……やりスギちゃっタカナ。俺トしてハもうチョット遊んデみたカッタけド」
    「オレは早くフミカゲの中に戻りたい……」
    「ハハ、ソウだっタネ。トリあえズ、常闇クンが気絶しテモ黒影クンが起きテらレルことガ分かッテ収穫カナ」
    「違えよ」
    「エ?」
    「たぶん、今だけだろ。いつもはフミカゲが気絶したらオレも気絶する」
    「アー……ソウなんダ……」
    たしかに思い返せば、常闇が意識を失っている間、黒影が出現していたような記憶はない。
    自分に何かあっても黒影がいるなら、と少し甘い考えが浮きあがったが、それは捨てたほうが良さそうだ。
    何があろうと、何を失おうと、やはり常闇はーー大事な自分のヒーローはーーホークス自身の力で最後まで守りきってみせなければ。
    そうと決まればと意識をサッと切り替えたホークスは、自分の身体に向き合った。
    「黒影クンが良けレバなんタケド、残りノ時間、俺の動きヲ客観的に見セテもらエナいカナ?」
    「……それ、オレに羽根使って飛んでみろって言ってんのか?」
    向き合った本人にはすごく嫌そうな顔をされたが、ただただ座って待っているのも暇だと思ったのだろう。黒影が羽根をバサバサと動かしだした。
    未来のためには、まだまだ負けられない。休んでもいられない。これで少しは今よりさらに強くなれればと、黒い拳を握りしめながら、ホークスは黒影に身体の使い方のアドバイスを始めた。

    常闇が目を開けると、眼前いっぱいを埋め尽くす一対の瞳があった。
    「あ、起きた?おはよう、常闇くん」
    蜂蜜色のその瞳が、聞き慣れた声と聞き慣れた口調で話すのを聞きながら、直前までの自分の状況を思い出し、ああ、元に戻ったのだなと常闇は素早く理解した。
    「すまない、一時間も寝てしまったのか」
    「正確には四十分弱ってところかな。俺が好き放題やっちゃったのがいけないんだし、気にしなくていいよ」
    「黒影は?」
    「清掃員さんに中身戻してもらったらそのまま君のなかに帰ってったよ。きみが起きてないと黒影くんも意識ないんでしょ?」
    「左様。……俺が気を失っていた間は違ったのですね」
    「さすが。理解が早いね」
    常闇は自身のことをまだまだ未熟というけれど、普段のヒーロー業務はもちろん、こういった状況把握もだいぶ成長しているとホークスは思っている。そしてその成長スピードには毎度驚かされている。
    当の本人といえば、気絶したことを恥じていて、師匠が感心していることには全く気づいていない。
    頭を抱え、今回の失態をどう挽回しようかと考えを巡らせていれば、「ちょっとごめんね」と断りをいれられ、ホークスとの距離がぐっと詰められた。そうしてそのまま抱きしめられる。
    「ホーー……」
    「うん、やっぱりこうでなくっちゃね」
    ホークスは何かを確認するように、抱きしめる力の強弱をかえたり、常闇の背中を撫でたり、顔を常闇の首元に擦り寄るようにうずめたりする。
    今度は中身も外身も好意を寄せている人物から過剰なスキンシップをとられ、常闇がまたも目を回しそうになったところで元凶が離れた。
    「黒影くんの身体だとさ、肌の感触や温度は分かってもなーんか薄い膜がある感じで、しっかりきみのこと感じられなかったんだよね。きみの個性になれたのは新鮮だったけど、きみに触れるやっぱりこの身体じゃないと」
    そう言って弟子に笑いかける師匠は、とんでもない個性にかけられたというのに、いつになく上機嫌だった。
    それはそうなのだ。だってホークスにとってこの個性事故は得るものが山のようにあったのだ。まさに大収穫。不幸中の幸いどころか、事故に遭って良かったまである。
    その最たるものが、常闇の心が知れたことだろう。
    心配せずとも、自分は常闇に好かれている。
    この個性事故はホークスの経験値と、ホークス自身の自己肯定感が少しあがった体験となった。
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    解凍みかん

    MOURNINGホークス+コンプレス×常闇くん
    ホークス+コンプレス→→常闇くんというかんじ。
    酔ってんのか?と疑うテンションで書いたもの。
    細かい設定や時間軸は忘れて読むものです。
    ホークスとコンプレスと常闇くんを「解凍みかん式だるまさんが転んだしないと出られない部屋」に突っ込んでみました。ギャグです。
    テンションのままに書いたら謎の疾走感が生まれたな…。
    せっかく書いたので、ここに供養します。
    ときめきめもりある真っ白な壁。真っ白な天井。真っ白な床。
    どこもかしこも白いこの部屋は、巷で有名な「○○しないと出られない部屋」というものだろう。
    ドアはあるがビクともしない。個性も使えない。
    いったいなんだってこんなことになっているのか。
    隣の人物を見ると、向こうも同じようにこちらを見ていた。
    そうしてふたりで溜め息を吐く。
    「なんでアンタと入らなきゃならないんスか…」
    「それはこっちが聞きてえよ」
    ホークスとMr.コンプレスだ。
    「これで条件がイチャイチャしろとかだったらさすがに俺ムリなんスけど」
    「同感だね。大の男とイチャつく趣味は俺もねえな」
    お互い敵だが今は個性も使えない。
    ただただ突っ立って話すだけだ。
    ああ、どうせここに閉じ込められるならこんなムサ苦しい男となんかじゃなくて、可愛い黒い子鳥が良かった。
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