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    解凍みかん

    @kaitoMIKANE

    書きかけやチョロっとした話を投げています。

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    解凍みかん

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    ホークス+コンプレス×常闇くん
    ホークス+コンプレス→→常闇くんというかんじ。
    酔ってんのか?と疑うテンションで書いたもの。
    細かい設定や時間軸は忘れて読むものです。
    ホークスとコンプレスと常闇くんを「解凍みかん式だるまさんが転んだしないと出られない部屋」に突っ込んでみました。ギャグです。
    テンションのままに書いたら謎の疾走感が生まれたな…。
    せっかく書いたので、ここに供養します。

    #ホー常
    hoEra
    #コン常
    continuity

    ときめきめもりある真っ白な壁。真っ白な天井。真っ白な床。
    どこもかしこも白いこの部屋は、巷で有名な「○○しないと出られない部屋」というものだろう。
    ドアはあるがビクともしない。個性も使えない。
    いったいなんだってこんなことになっているのか。
    隣の人物を見ると、向こうも同じようにこちらを見ていた。
    そうしてふたりで溜め息を吐く。
    「なんでアンタと入らなきゃならないんスか…」
    「それはこっちが聞きてえよ」
    ホークスとMr.コンプレスだ。
    「これで条件がイチャイチャしろとかだったらさすがに俺ムリなんスけど」
    「同感だね。大の男とイチャつく趣味は俺もねえな」
    お互い敵だが今は個性も使えない。
    ただただ突っ立って話すだけだ。
    ああ、どうせここに閉じ込められるならこんなムサ苦しい男となんかじゃなくて、可愛い黒い子鳥が良かった。
    そうだったらどんな条件だって喜んでのむのに。
    むしろちょっとえっちな条件でも可。いや正直言えばちょっとえっちな条件がいい。
    そんなことをお互い思っていると、ドアの上にパッと文字が写し出された。
    【だるまさんが転んだをしないと出られない部屋】
    「セーフ!これならおまえと出来るわ」
    Mr.コンプレスが安堵の溜め息をついたその直後、新しい条件が下に追記される。
    【ただし鬼はこちらで用意します。】
    そうしてドアの横に画面が下りてきたかと思うと、ルールが写し出された。
    【・このゲームでは鬼が話している間のみ前進することが出来ます。前進以外でしたら話していないときも動いてもらって構いません。
    ・鬼が話す言葉はこちらで指示します。
    ・鬼にタッチ出来たらゲームクリアです。
    ・ちなみにこの部屋はよりゲームが愉しくなるよう、とある感情が通常の3倍動くように出来ています。】
    「…とある感情が通常の3倍ね…」
    「おーおー。公安ヒーロー様のポーカーフェイスが試されるってわけだ」
    「何の感情か知りませんけど、まあ、0に何かけたって0のまんまですから。そういうあなたはその仮面ズルくないです?」
    「別に仮面をしちゃいけねえなんてルールないだろ。それにおじさんの表情なんて誰も興味ねえのよ」
    「それはそうですけど」
    そんなやりとりをしていると、部屋の奥からガコンという音が聞こえる。
    今度は何事かと振り向くと、部屋の奥行きが少しのびていた。
    そして、その伸びた先には見知った姿が。
    「「と、常闇くんっ!?」」
    ふたりして大きな声がでる。
    いましがた、どうせならいっしょに閉じ込められたかったと想い描いていた人物が壁に張り付けにされている。
    しかも何をされたのかわからないが、常闇は息があがり涙目だ。
    おまけに寝間着のところを連れて来られたのか、黒いゆるっとしたパーカーから見える首筋や鎖骨は紅く色づいていて、とても目に毒だった。
    張り付けられた常闇の上に文字がパッとうつる。
    【このゲームの鬼は彼にやってもらいます。彼にはゲームをより愉しくするために20分ほどくすぐられてもらってあります】
    その文字を見てふたりは安堵する。
    とりあえず変なことはされていないらしい。
    そしてどうやら、ここから前進して常闇に触れられればこの部屋から出られるようだ。
    現状を理解した頭の良い大人たちの耳に、常闇の声がとどく。
    「…ほ、くす…?み…すたー…?」
    くすぐられたせいか息も絶え絶えに告げられた己の呼び名に、大人たちはバッと自分の胸を押さえた。
    「な、なんだ…?今すげえ心臓が痛かったんだが、俺まだそんな歳じゃねえよ…?」
    「……!?」
    ホークスはこの感覚に覚えがあった。
    もちろんこんな心臓に激痛がはしるほどのものではないが、これはあれだ、“きゅん”というやつだ。
    最近、いま囚われの身となっている可愛い弟子によくされるのでわかる。
    あの綺麗な赤い瞳で真っ直ぐ見つめられ、聞いているこっちが恥ずかしくなるような格好いい台詞を言われるとすごく心臓にくるのだ。
    「…ま、まさか…この部屋が3倍にしてる感情って…」
    ときめき…?そうぽそっと呟いたホークスにMr.コンプレスは引いた顔をする。
    「嘘だろ本気で言ってんのか…?ていうかお前弟子をどんな目で見てんのよ」
    「その言葉そっくりそのままお返ししますよ。名前呼ばれただけでそれって、あなたも相当こじらせてますよね、Mr.コンプレス」
    「…同じ反応した奴に言われたくねえな」
    そうこうしているうちに部屋の壁という壁に【start】の文字が浮き出て消える。
    このよく分からないゲームが始まったようだ。
    常闇の前にも天井から紙が釣り下がってきている。
    彼も彼で、この部屋についてはすでに説明され理解しているらしい。
    一刻も早く脱出できるよう、指示に大人しく従うようだ。
    とにかく何を話されるにしろ、常闇が言葉を発した瞬間に走り出して進めばいい。
    常闇の距離までおよそ30メートル。
    自分たちの足なら2回目には触れるはずだ。
    お互いに臨戦態勢をとり言葉を待つ。
    常闇が真っ直ぐホークスを見つめて口を開いた。
    「ホークス、好きだ」
    「ぎゃあっ!!」
    己のファンを雛鳥ちゃん呼びしている気障な男とは思えない、潰れた変な声が出た。
    今回はノーダメージだったMr.コンプレスが振り返ると、数メートル後ろでNo.2ヒーローが胸を押さえてしゃがみ込んでいる。
    「おいおい、大丈夫か?No.2」
    「…すみません、Mr.コンプレス。俺の身体っていまどうなってます?どっかの一部が弾け飛んでたりしてません…?」
    「どんなスプラッター映画よ、それ。言葉聞いただけで身体ミンチとか呪詛じゃねえか。残念ながら五体満足、どこも何ともなっちゃいねえよ」
    「…もう呪詛みたいなもんでしょこんなん…」
    初撃ですでに瀕死のダメージをおったホークスがよろよろと立ち上がる。
    身体がふらついて左右によろめくが、決して前には進めない。
    なるほど、これが前進は出来ないが他の方向には動けるというこの部屋のルールの意味らしい。
    Mr.コンプレスもその様子を見て理解した。
    もともと常闇が台詞を言い終わった瞬間に、どういう仕組みか足が止まったので前にいけないことは何となくわかっていたが。
    こりゃイカサマは出来ねえな、と心のなかで舌打ちする。
    ウィィンという機械音が聞こえて、ふたりで前を見直すと、常闇の前に新たな紙が下りてきていた。
    常闇はその紙を見つめ、今度はMr.コンプレスのほうを見る。
    なるほど、今度は俺のターンなわけね。
    Mr.コンプレスは身構え、心の準備をする。
    ホークスよりは歳を重ねているし、腐ってもヴィランだ。
    こうしてあらかじめ覚悟も出来ていれば、並大抵の言葉じゃ揺れない自信があった。
    それこそ「好きです」程度ならぜんぜん余裕だ。
    「……あ、あつひろさ」
    「あーっ!!オーケー、大丈夫。それ以上は止めてくれねえか。おじさん死んじゃうから」
    「…アンタほんと名前呼ばれんの弱すぎません…?」
    今のターンでMr.コンプレスより少し先まで歩を進めたホークスが呆れたように振り返る。
    もう立ち直ったらしい。さすが速すぎる男だ。
    「本名はだめだって…」
    心臓がビッグバンを起こしたのかと思うほどの衝撃を受けた30代の男は、ゆっくりとしゃがみ込んでいく。
    目の前の男はよくここから回復出来たなと感心する。絶対に言葉にはしないが。
    また機械音がした。
    もう次のターンかと身構えると、今度は紙ではなく小さな鳥籠が下りてきた。
    中には彼の個性兼相棒によく似た黒い小鳥が入っている。
    降下が終わると、その小鳥はゆっくり鳥籠から出て来て常闇にすり寄った。
    「ふふ、なんだくすぐったいぞ」
    「ぐはっ」
    「……ぅ」
    常闇が歳相応の幼い笑顔で笑う。
    何が起こるのかと一部始終を凝視していた男たちは、真っ正面からそのまぶしい笑顔を浴びてしまい、見事に胸を撃ち抜かれた。だいぶ強めに。
    「…ときめきが何たるかをよくわかってるじゃないの。姑息な手ぇ使ってくれちゃって…」
    「可愛い…すごい可愛い…」
    天を仰いで心情を隠すことなく吐露しているトップヒーローをみやり、こいつはもうダメだなとMr.コンプレスは溜め息を吐いた。
    ちなみに常闇はずっと小鳥と戯れているので、先ほどから常に言葉を発している状態だが、二人して一歩も進めていない。
    むしろその尊く可愛い光景を直視出来ていない。
    ホークスはずっと天から帰って来ないし、かくいうMr.コンプレスも、胸を撃ち抜かれてから地面かポンコツになったヒーローしか見れていなかった。
    普段ならば記憶に刷り込む勢いで見つめるのだが、今は一瞬でも目に映すと心臓が止まる。文字通り。
    この可愛い子鴉に殺される。文字通り。
    もう一周まわって、笑うんじゃない、可愛さを捨ててこいと意味不明なキレ方をしたいくらいだった。
    「はあ…もう、どうしてくれんだよ。初恋でもこんなときめかなかったぜ」
    「俺なんて今が初恋なんで、こんなことされたらもうこの先常闇くん以外の人マジで好きになれないですね」
    「そいつぁ良いこと聞いた。初恋は実らねえんだぜ。可哀想に」
    「そんなの迷信でしょ。ご心配なく。俺が使えるありとあらゆる力を使って絶対成就させるんで」
    「…へえ。じゃあ、見つからないようにしっかり隠しとかねえとな」
    常闇が選ぶ権利があるという、一番大事なポイントを忘れて互いに牽制しあう。
    ちなみに今は『だるまさんが転んだ』をやるべきであり、前進できる貴重な時間だが、やはり二人とも一歩も動けていなかった。
    このままではラチがあかないと思ったのだろう。
    小鳥が鳥籠に帰り、かわりに常闇が張り付けられている壁からマジックハンドのようなものが出て来て、常闇のことをくすぐり始めた。
    「なっ…!もっ…それはっ…」
    我慢していないと変な声が出てしまうと、思春期真っ只中の子鴉は必死に耐える。
    目に涙を浮かべて顔や肌を赤らめて、それでもときどき耐えきれなかった声が漏れでる。
    その様子が大人たちにとっては今までで一番心臓に負担がきた。
    ふたりはそろって顔をそらす。
    ついでに耳もふさぎたかったが、ポンッという電子音が聞こえたためその手を止めた。
    音の出所をたどれば、ルールが映っていた画面が切り替わっている。
    【今から5分間はボーナスタイムです。鬼がくすぐられている間は好きに動けますので、この機にゲームクリアを目指してください】
    一生クリア出来ないと思われたんだな、と賢い大人たちは察した。
    またも壁一面に【start】の文字が写し出され、ご丁寧に画面には5分のカウントダウンが示されている。
    しかし何がボーナスタイムだ、と文句が出る。
    ぜんぜんクリアさせる気が感じられない。
    指の隙間からちらりとクリア目標の様子を確認するが、どんどん目に毒な状態になっていくし、あのマジックハンドがくすぐる際にときどき腹チラを仕掛けてくるので、そのたびに胸に豪速球を投げつけられたような衝撃がきて前なんて全く進めない。
    「…Mr.コンプレス、俺より歳上でしょう。大人の余裕見せてくださいよ」
    「あのね、ヴィランが普段青春してると思ったら大間違いよ?こういうドキドキイベントとははるか昔以降ご無沙汰なの俺。わかるだろ。むしろ立ち上がれもしないから。お前立ててるだろ、何とかしてくれよ」
    「…仕方ないですね。貸しひとつですよ」
    そういうとホークスは深呼吸をする。
    目をつぶり、公安で習った感情のコントロール方法を思い出して身体に浸透させる。
    これは仕事。これは任務。
    よし、大丈夫。いける。
    ホークスがヒーローの顔になったことに気付いたのだろう。
    常闇が涙目で助けをこう。
    もう先に20分もくすぐられているのだ、いくら若く訓練もしているとはいえ体力は限界だった。
    「おねが…ほ、くす……、はやくっ…き、て…」
    バタンッ!!
    部屋に響きわたるほどのすごい音をさせてホークスが仰向けで倒れた。
    よくみれば首から上が真っ赤である。
    標的をきっちり見据えたぶん、余すことなくナニカを浴びてしまったようだ。
    「死ぬなバカ!俺ひとりこんなクソみたいな部屋に残して逝くんじゃねえ!」
    「…もう、よくないですか…。ここから出られなくたって…」
    「おいおい諦めんな!お得意の公安仕込みはどうしたよ!?」
    「…流木ってあるじゃないですか。アレってどれだけ重くて大きくても河の流れのほうが強かったらけっきょく流されるでしょ。つまりそういうことなんスよ」
    「…イカれるのは勝手だが会話だけはしてもらえねえかな」
    ほんとに使いもんにならなくなったなとMr.コンプレスは呆れたようにNo.2ヒーローを見る。
    ホークスは気付いたのだ。
    感情のコントロールとは感情を殺すというより表に出さないほうに重きを置いているということを。
    コントロール出来るからと言って何も全く感じなくなるわけではなかったのだ。
    そう、つまりはゼロじゃない。ゼロじゃなければこの部屋の思うツボだ。
    「仕方ねえ」
    こうなりゃヤケだ、と30代の男は腹をくくる。
    30年も生きていれば色んな処世術を覚える。
    おまけにヴィランで奇術師なんかやっていればなおさらだ。
    聞きたくないことは聞かなければいい。
    見たくないものは見なければいい。
    そうして感覚をあえて鈍くして生きていた時代もあった。
    Mr.コンプレスとしても、別にこの目の前の可愛い子に一生振り回されていたって構わないのだが、ただひとつ、そこに転がっているトップヒーローと同じ場所で同じ死因でこの人生を終わらせるのだけは許せなかった。
    ポンッという電子音がまた聞こえて、【残り1分です】という文字が画面にうつる。
    仮面があることを良いことに、なるべく常闇を見ないように歩を進めていく。
    「……ぅ、くっ…」
    「そうそう。そうやって声はちゃんと抑えててくれよ。じゃないとおじさんすーぐギブアップしちゃうからさ」
    常闇としてもヴィランに命運を委ねねばならないのは屈辱なのだろう。
    せめて声は出さぬようにと歯を食いしばっている。
    しかし完全には声を殺せないようで、遠かったからこそ聞かないように誤魔化せていた声も、一歩一歩距離が縮まるたびによく聞こえるようになってしまう。
    「ひっ…!ぁ…、う…」
    「……」
    「…ん、ぐっ…ぅ…」
    「……」
    「お、ぃ…!みすたっ…はやく、し…」
    「~~あー!!もうダメおじさん限界だわ。これ以上はムリだわ。心臓がマジでもたねえわ」
    「なっ…!あと少しっ…だろうっ!」
    そう、ほんとうにあと少し、距離で言えば2メートルほど。あと一歩進めればMr.コンプレスの腕なら常闇に届くだろう。
    しかしその一歩が進めない。
    目の前の子鴉に邪な思いを抱いている身としてはここまでが心臓の限界だった。
    「あーあー、睨んでくれちゃって。可愛い顔が台無しって言いたいとこだけど、おじさんそういう強気な顔も実はけっこう好みなのよ。だから逆効果。むしろ心臓に追加でダメージ入るから、出来たら睨むの止めてくれねえかなあ…」
    そういうと何を思ったか、常闇は少し笑い声を我慢せず出すようになった。
    「ふはっ…じ、じゃあ、このように、ははっ…ぅ、笑って、いればっ…ふふふ、触、れるっ…か…?」
    バッ!!
    勢いよくMr.コンプレスが自身の胸を握りしめる。ついでに仮面ごしではあるが口もおさえる。
    潤んだ瞳に漏れでる声、上気した肌ですでにいっぱいいっぱいだったのに、そこにぎこちない笑顔が加わったのだ。
    青春から何年も遠ざかっていた自称おじさんのときめきメーターなぞ、一瞬でキャパオーバーを迎えて飛散した。
    口から心臓が出てくるかと思った。
    ついでに少し後ろから何か重いものが倒れた音がしたので、No.2ヒーローが本日二度目の卒倒を決め込んでいるのだろう。それどころじゃなくて確認までは出来ないが。
    「……ほんと最高。こんな体験させられたらおじさん君のこと一生忘れられないわ。やっぱこの部屋から出たらおじさんとこ来ない?」
    「行きません」
    「…倒れてんじゃねえのかよ」
    常闇に声をかけたのに何故か後ろから返事が返ってきた。
    お前に聞いたんじゃねえんだけど、と吐き捨てる。
    まあ常闇に聞いたところで色好い返事がもらえるかと言われたら、おそらくないのだろうけれど。
    ポンッという、もはや聞き慣れた音とともに【残り10秒です】という文字が画面に表示された。
    それと同時に部屋の照明に赤色が混じる。急げという、部屋なりの催促だろう。
    「おいっ…!は、やく……ぅ、しろ」
    「…さあて、ここで可愛い常闇くんに問題だ」
    「は…!?」
    「おじさん、実はムカつく野郎に片腕ふっ飛ばされてんのよ。ほら、見ての通り片腕だろ?」
    言われるがままに常闇はMr.コンプレスの姿をみやる。
    たしかに腕が片方ない。しかし、どこか違和感を覚える。
    片腕がない、というその事実を言われるまで気付かなかった。腕という大きなものが欠損しているにも関わらず、だ。
    くすぐられ疲れて、あまり働かない頭で常闇は必死に考える。
    やはり、おかしい。思った通り、Mr.コンプレスはこの部屋に来た最初は両腕があった。
    「…やっぱ常闇くんいいわ。気付いたんだろ?そう、俺はここに来たときは両腕ともあった。義手を付けてたのさ。さあ、ここからが問題だ。その義手、今はどこにあるでしょーか」
    ポンッとまたお決まりの音が鳴る。【残りあと3秒です】の文字。
    正解は、と常闇の目の前で仮面ごしに奇術士がニヤリと笑った。
    「使い物にならねえポンコツヒーローのところさ」
    その言葉とともに、ホークス自身で出したとは思えないスピードで常闇の眼前にホークスが迫ってくる。
    どうやら腕に何かしらの細工をして、Mr.コンプレスがホークスを力業で投げ飛ばしてきたらしい。
    これは触れるというかもはや衝突になるのでは、と衝撃にそなえて目をつぶる。
    しかしおとずれたのは肩を軽く叩かれるという、想像した何十倍も優しいものだった。
    おそるおそる目を開ければ、ホークスが見事に常闇を避けて壁に着地していた。
    【ゲームクリアです。おめでとうございます。】
    部屋が明るくなったと同時に画面も切り替わる。
    常闇の拘束も解け、どこかからカチャリという鍵の開く音がした。
    「…やっとか…」
    やっとこのふざけた部屋から解放される。そう息をはいた常闇は、ふと、クリアした瞬間から大人二人が一言も声を発していないことに気付く。
    何か調子でも悪いのかと振り返ると、思っていたよりも近くに二人がいてビックリした。
    「な、なんだ…」
    「はあ…やぁーっと君の可愛い顔をしっかり拝めるわ。これだけ見ても心臓も何ともねえ」
    「ほんと常闇くんに殺されるかと思ったよ。まあ、君になら殺されてあげてもいいんだけど」
    真上から覗き込まれながら、ゲームの感想なのか愚痴なのかわからないものを聞かされる。
    一体何をしたいのかわからず戸惑っていると、ある程度語ったその大人二人は、それはそれはいい笑顔で常闇に笑いかけた。
    「ところでおじさん、君のその可愛い顔のおかげでちょおーっと元気になっちゃって今すぐお外には出られねえのよ。常闇くんも男の子だしナニがとは言わなくてもわかってくれるだろ?」
    「俺もね、こんな下世話な話を君にしたくはなかったんだけど、どうも刺激が強すぎたみたいでさあ…ぜんぜんおさまらなくて…。この状態で空とぶわけにもいかないじゃん?だからってここに残って二人でってのもねえ…。俺、仮面に興奮する趣味はないんだよね」
    「俺だってそのイケすかねえ面にも羽にも興奮しねえよ」
    「だから申し訳ないんだけど常闇くんにも残ってほしい」
    「な。おじさんたちちょっと困ってんのよ」
    まるで示し合わせたように、口も頭も回る大人たちに反論する暇も意見する暇も与えてもらえず常闇はガシリと両肩を捕まれる。
    右側をホークスが。左側はMr.コンプレスが。
    「また助けてくれる?ねえ」
    「助けてくれるだろ?なあ」

    「「マイヒーロー」」

    鍵が開いたこの部屋で3人が何をして、そしていつ脱出したのか。それはまた別のお話。
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    解凍みかん

    MOURNINGホークス+コンプレス×常闇くん
    ホークス+コンプレス→→常闇くんというかんじ。
    酔ってんのか?と疑うテンションで書いたもの。
    細かい設定や時間軸は忘れて読むものです。
    ホークスとコンプレスと常闇くんを「解凍みかん式だるまさんが転んだしないと出られない部屋」に突っ込んでみました。ギャグです。
    テンションのままに書いたら謎の疾走感が生まれたな…。
    せっかく書いたので、ここに供養します。
    ときめきめもりある真っ白な壁。真っ白な天井。真っ白な床。
    どこもかしこも白いこの部屋は、巷で有名な「○○しないと出られない部屋」というものだろう。
    ドアはあるがビクともしない。個性も使えない。
    いったいなんだってこんなことになっているのか。
    隣の人物を見ると、向こうも同じようにこちらを見ていた。
    そうしてふたりで溜め息を吐く。
    「なんでアンタと入らなきゃならないんスか…」
    「それはこっちが聞きてえよ」
    ホークスとMr.コンプレスだ。
    「これで条件がイチャイチャしろとかだったらさすがに俺ムリなんスけど」
    「同感だね。大の男とイチャつく趣味は俺もねえな」
    お互い敵だが今は個性も使えない。
    ただただ突っ立って話すだけだ。
    ああ、どうせここに閉じ込められるならこんなムサ苦しい男となんかじゃなくて、可愛い黒い子鳥が良かった。
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    テンションのままに書いたら謎の疾走感が生まれたな…。
    せっかく書いたので、ここに供養します。
    ときめきめもりある真っ白な壁。真っ白な天井。真っ白な床。
    どこもかしこも白いこの部屋は、巷で有名な「○○しないと出られない部屋」というものだろう。
    ドアはあるがビクともしない。個性も使えない。
    いったいなんだってこんなことになっているのか。
    隣の人物を見ると、向こうも同じようにこちらを見ていた。
    そうしてふたりで溜め息を吐く。
    「なんでアンタと入らなきゃならないんスか…」
    「それはこっちが聞きてえよ」
    ホークスとMr.コンプレスだ。
    「これで条件がイチャイチャしろとかだったらさすがに俺ムリなんスけど」
    「同感だね。大の男とイチャつく趣味は俺もねえな」
    お互い敵だが今は個性も使えない。
    ただただ突っ立って話すだけだ。
    ああ、どうせここに閉じ込められるならこんなムサ苦しい男となんかじゃなくて、可愛い黒い子鳥が良かった。
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