二人の世界「少し我慢できるか?」
普段は滅多に乗らない電車に乗車した途端、これだ。土曜日だし混んでるだろうな、とは思ってたが、想像以上に満員すぎる。ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、オレと梅宮はドアに押し付けられる形になっていた。潰されている、の方が合っているかもしれない。そろそろぺたんこになっちまう。端っこに追いやられたことで他の奴とくっつく範囲が少なくなったのはよかったが、その分梅宮との距離がいつも以上に近くなった。顔を上げればキスしてしまいそうな程、めちゃくちゃな距離に気付いてから無駄に意識してしまう。
オレより高い背、オレより厚い身体。オレとは全然違う。梅宮の体格の良さを改めて実感して、自分とこんなにも差があるのか、と悔しくなりつつも電車の中だというのに触れているところから梅宮の体温が伝わってきて、心臓が速くなるのを感じた。鼻に押し付けられている胸元からは梅宮の匂いがして、ドキドキしてしまう。
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