Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ☆ユズ☆

    @c_love_r123

    出来上がったもの、ざっくり書いたもの、書きかけのものなど、好きなものを好きな時に好きなだけ。
    閲覧やスタンプいつもありがとうございます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 24

    ☆ユズ☆

    ☆quiet follow

    前に書いたいい夫婦の日のヴァンアニ。いつかの未来。

    ##ヴァンアニ

    『目の前に愛しいひと』 午後三時のティータイム。
     アニエスの皿にはまだ数個残っているチョコレートも、彼の前からはとっくに姿を消していた。
     数ヶ月前にトリオンモールに入った美味しいと評判のショコラトリーの新作である。かなり気に入った様子だったし、これもどうぞと告げたなら喜ぶだろうなと思いながらアニエスは卓上に置かれた相手の左薬指へと視線を落とす。
     そこに収まった銀色は窓から降る春の陽射しに煌めいていた。
     二人で選んだその指輪の裏には揺るがぬ愛を意味する小さな青い石が埋め込まれている。同じものが自分の指にもあるという事──それにもう何度目かわからぬ喜びを覚え、きらりと光る輝きはまるで今自分が手にしている幸せな日々のようだと彼女は思う。
     柔らかな色の金糸を揺らし視線を上げ、アニエスは愛しい人を見つめた。
     あなたと一緒に恋に落ちて、毎日ではなくても手を繋いで歩いて、笑って、泣いて、怒って──気づけばいつか家族になりたいと願っていた。
     その願いが叶った先ににある今という時間が、伝えきれないくらい幸せに溢れたものであると。そう再認識すればアニエスの唇は自然と綻んで、微笑みという名を持つ花は柔らかく咲く。
    「何ひとりで笑ってるんだ?」
     濃いめに淹れたコーヒーを飲んでいたヴァンがくすりと笑い尋ねてくる。
     素直に口にしたら照れ隠しのようにそっぽを向いてしまうだろうか。できれば少し前のように笑って、あとでも構わないから髪を撫でてくれたら嬉しいけれど。
     昔の自分が聞いたら贅沢すぎると言うかもしれない望みを胸に、アニエスは唇を開く。
    「噛み締めていたんです。お父さんとお母さんのような恋をして、たくさんの同じ時間を過ごした先で家族にもなれたらっていう、いつか話した夢。それをヴァンさんと叶えられて嬉しいなあって」
     少し鼻にかかった甘い声で紡いだ言の葉の終わり、微笑みを深くしたアニエスの頬はほんのりと赤く染まった。
      まるで薬指にぐるりと円を描く夫婦の証のように揃いの熱が二人の胸に宿り、繋がったまなざしは離れない。
     アニエスが見つめる先で目に見えて口元が緩む。明らかに照れ隠しだとわかる口調の「そりゃあ、よかった」という言葉と共にヴァンが幸せそうに目を細めた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒💒💙💛💒💒💒☺👏💕💯💖💴💘💒😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works