「ほしいものをくれた人」 いち、に、さん。いち、に、さん。
そう呟きながら王城の一室でひとりステップを繰り返す。
両親はモリオン王とその妃に呼ばれて少し前に行ってしまった。幼いシトリニカはついていきたかったが、ここで待っているようにと言われてしまい留まる事しかできなかったのだ。
新しいドレスに身を包み、ほんの少しだけ踵のついた靴をはけるのが嬉しかった。本当は早く誰かに見て欲しかったが、従兄弟のスタルークは部屋から出てきてくれなかったし、もう一人の彼の兄は部屋にもいなかった。
舞踏会は今日が初めてではない。だが、前回フロアに出た時はあまり優雅に踊る事ができなかった。
内心少し悔しく、だから、人知れずダンスの練習をした。先生から稽古をつけてもらう時以外は決して努力する姿を見せず、今日の為に練習を重ねてきたのである。
1955