Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ONIKUOKOMEYASAI

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 12

    ONIKUOKOMEYASAI

    ☆quiet follow

    呪専五夏♀
    片想い五とお姉さんぶる夏

    #五夏
    GoGe

    告白日和 触れてみたいと言ったのはこちらの方だった。
    「そう、ゆっくり優しく……」
     腕の中に収めた体はやわらかく、肉厚であるのにどこか心許ない。風呂上がりだろうか。あたたかくて、優しいにおいがする。
    「手はそこ、ゆっくり……抱きしめて」
     肩口に寄せられたくちびるからこぼれる声に湿度が混じっている。耳を掠める息は熱く、煽っているようにさえ聞こえた。ゆっくりなんて、拷問だ。
     向かい合ったまま抱きしめた腕に力を籠める。女といえど男と遜色なくしっかりと鍛えられた体が、みしりと軋んだ感覚を覚えた。
     力を入れすぎたと謝る前に、吐息は色を帯びる。
    「んっ……だめじゃないか、そんなにしたら壊れてしまう」
     普通の女の子ならね、と付け加えることを忘れないこの女をどうしてやろうかと腹の奥が煮える思いがした。
     昨日、五条に彼女ができたらしい。
     らしいと言うのは全く身に覚えがなく、今目の前にいる同級生の夏油から、そう聞いたけど本当なのかと聞かれたからだ。
     どうせ世継ぎをとか血筋がとか、家が勝手に決めた相手を傑に吹き込んだに違いない。入学からこっち、五条が彼女に入れ上げていることをよく思っていない連中がいることは知っている。次期ご当主さまの恋路を諦めさせるには根回しする必要があると、こうして夏油にぶつけてきたのだろう。悪い連中ではないが、つくづく嫌気が差す。
     その時は、そんなわけねぇだろと弁解しようとした。しようとしたがその前に、「おめでとう」と言われてしまった。彼女大切にね、とも。
     そんな言葉は望んでいなかった。五条は夏油が好きで、夏油しか好きじゃなくて、彼女もそう思ってくれていると過信していた。
     だけど違っていた。好きなのはこちらばかりで、彼女の気持ちが親友の域を出ることはない。男として、女として体に触れることを許してはくれない。
     だから、思い知らせてやろうと思ったのだ。
    「傑」
     わざと顔を埋めるようにして名を呼ぶ。じわ、と抱きしめた肉体の体温が上がり、思わず口角が上がった。
    「名前は呼ぶな」
    「なんでだよ、雰囲気出ねぇだろ」
     この反応は、どうもこちらを意識をしてくれているように思う。余裕ぶっていた声色が僅かに上擦って、心なしか喉が引きつっているようだった。
    「これは練習だって悟が、んっ」
     腰に回していた腕を引いてさらに体を密着させる。肩口へ顔がぶつかったらしく、言葉は途中で飲み込まれてしまった。
     黒い髪に鼻を押し付けるようにして抱き込み、もっと近くへお互いに隙間ができないほど身を寄せれば、よく知ったにおいがさらに濃く脳を満たす。夏油は普段香水を身に纏っているため、この生々しい香りは彼女の素の姿を差し出されているように感じていた。それが今、腕の中にある。もっと欲しい、とそう思った。
    「ちょっと、悟」
     止める声は弱々しい。彼女がこれくらいの力を跳ねよけられないほど弱い女ではないことを、五条はよく知っている。そもそも純粋な殴り合いだけなら夏油が勝つことだってあるほどだ。それを生意気なやつだと思ったこともあったが、今となっては好ましく思っている。惚れた弱みだった。
     ふたりの間に挟まっているやわらかな、そして大きなものは、胸板によって押さえつけられひしゃげてしまっているようだった。以前から無防備に揺れるそれを何度も盗み見てきたが、こうして直接体と体をくっつけて触れてしまったことでつい本音が口をついて漏れる。
    「傑の胸でけー」
    「……おい」
    「褒めてんだよ、もちもちしてる」
     ぎゅう、と胸を押し付け揺らしてやる。それだけで抱き込まれた体はふるりと震えて抵抗を始めた。
     なんとか引き剥がそうとする、その力は弱々しい。普段の腕っぷしはどこへ行ったのかというほどに力が抑えられていた。
    「……こんなこと、他の子に言うなよ」
     観念したのか動きを止めた夏油は、せめて声だけはと唸るように低い声で牽制する。その言いぐさに、僅かにでも他の女に色目を使うなという意味が含まれていればいいのにと心の中でつぶやいた。
    「するわけねーだろ、オマエだけだよ」
    「私にも言うな」
    「やだね、傑のおっぱいふわふわできもちー」
     胸を押し上げるやわらかな肉は、五条の動きによってその形を変える。むにむにと弾力があり、押せば沈むのに跳ね返す力も伴っているため、彼女との距離は一向に近くならない。
     そのことに焦れた五条は、体に纏わり付かせた腕を強く引き、夏油をきつく抱きしめた。さとる、と慌てたように名を呼ぶ彼女の困惑を察しても、離す気はもうなかった。触れてしまったから、もう離せない。
    「……悟、そろそろ」
     しばらくの間沈黙を貫き、頭のてっぺんに頬を擦り寄せてみたり、腰についた肉を揉んでみたりとその感触を堪能していたが、やがてその空気に耐えきれなくなったのか夏油が口を開いた。
    「やだ、足りない」
    「足りないじゃなくて。練習するだけだっただろ」
     彼女を大切に、と言われた時、だったら練習させろと返したのは単なる思いつきだった。今思えば道理の通らない理屈であったが、その時は必死だった。告白するよりも、なんとか彼女を繋ぎ止めたい気持ちの方が優先されてしまったのだ。
    「オマエさ、本気でそれだけだと思ってんの?」
    「君に、彼女ができたから……」
    「いねーよそんなの、バーカ!」
     しっかりと抱きしめていた体を、肩を掴んで引き剥がすと、目に見えて狼狽えている夏油と視線を合わせる。普段は聡いくせに、変なところで鈍い彼女に若干の苛立ちを覚えつつため息をついた。
    「言わなくてもわかれよ」
    「いや、だって悟が」
    「だから、俺はオマエが好きなんだっつの!」
     言うつもりはなかった。決してこの気持ちを今このタイミングで告げる気などなかったのだ。だけど、目の前にいる彼女が、この状況であってもこちらの気持ちに気づいてくれないこの空気に耐えきれなかった。
     呆気に取られた表情をしていた夏油の顔が、みるみるうちに青く、そして赤く変化していく。首まで真っ赤になった彼女の目を見つめ、一呼吸置いた後咳払いをする。
    「……傑が俺の彼女になって」
     本当は、ここが好きとかあそこに惹かれたとか、そういった言葉を口にするべきだったのだろうが、五条にその余裕はない。
     飾り気のないまっすぐな言葉で夏油への気持ちを吐き出す。他の誰でもなく、夏油がよかった。親友もライバルも恋人も、自分を取り巻くすべて彼女がよかった。
     肝心の夏油が何を考えているか、五条にはわからない。黙り込んでしまった彼女の視線がうろうろと彷徨い、くちびるを引き結んだかと思えば、息を吐いて視線を上げる。
    「考えさせて」
    「俺もオマエのこと好き……はぁ?」
     思いもよらない返答に素っ頓狂な声を上げた五条は、夏油の肩を強く掴んでその顔を覗き込む。
    「さっきのは私も好き♡の流れだろ」
    「いきなり付き合ってって言われてOKできるほど器用な女じゃないよ、私は」
     先ほどまでのしおらしい彼女はなりをひそめており、眉を顰めて細い目を更に細めて五条を見つめている。「肩痛いんだけど」とこちらを非難することも忘れない。
    「そもそも私は悟のこと友達としか思ってないから」
    「ハァ? ただの友達に胸揉ませてんのかよ」
    「それはそっちが勝手にやってることだろ」
     ああ言えばこう言う、夏油との口論はしょっちゅうだったが、今日ほど彼女の態度に苛立ったことは初めてかもしれない。
     あーあと大袈裟に声を上げ、ツンとそっぽを向いた夏油の横顔へじとっとした視線を向ける。そうすると、やわらかく細められた目が伏せられ、まつげが頬に影を作った。その影が濃くなる部分、健康的な色のそれがほんのりと赤く染まっているのが目に入る。
    「傑……」
     おまえ、と口にしようとした時、あたたかなてのひらが五条の口を覆った。ごつごつとした、戦う女の肌だった。
    「頼むから、今は黙って」
     いつもは余裕ぶった彼女のその声が掠れてしまっていたから、男に抱きしめることを許可するほど無防備なその手が震えていたから、それより先の言葉を飲み込むしかなかった。彼女が自分を意識してくれているのだと痛いほどに伝わってきた。それで十分だったのだ。
     触れているてのひらにちゅっと音を立ててキスをすれば、強張っている体が跳ねて、悟、と険しい声が飛んでくる。五条は黙ったまま構わずその手に何度もくちびるを押し付け、じんわりと湿り始めた肌に己の体温を移した。
    「おい、さとる……っ!」
     たまらず離された手を掴んでぐっと顔を近づける。見開かれた目と視線を合わせ、その眸に驚きと困惑、そして少しの期待があることをこの目は見逃さない。それを理解して持ち上がる口角を抑えることはできなかった。
     隙だらけになった額にキスを落とす。抵抗も拒絶もできない彼女のやわらかさを手放し難く思い、今度は躊躇うことなくその体を腕の中に収めた。そうして身も心も自分でいっぱいにした親友に向かって、ゆっくりと口を開く。
    「覚悟しろよ」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍💕💖👏💖💖💖💘🙏🌋🌋🌋💴🙏🙏🙏🙏💖💖💖🍼💖💖💖💖😭😍😍☺💖💘💖🍆🙏💒🍆🍆🍆🍆🍆🌠☺👏💖💘💘💖💘💖💖💖💖💖🍑❤🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works