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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    anzr
    夏メイ(VD)
    もしも、夏井さん宛に贈られた本命チョコが○○モチーフだったとしたら……

    #anzr男女CP
    anzrMaleAndFemaleCp
    #夏メイ

    発掘家見習いによる幸福な受難(夏メイ) 高級感漂う包装紙を剥がして刹那、絶句した。
     やけに重量感のあるパッケージにはでかでかと、リアリティ溢れる恐竜のイラストがプリントされていたのだから。

    『一目見た瞬間、これは夏井さんの為のチョコだ! と思ったんです』

     表情の変化に乏しい七篠が心なしか、水を得た魚のようにいきいきとした表情を向けるものだから何事かと思えば。
     チョコレートはどうやら、化石がモチーフらしい。探検家気分で壁と砂をかき分けて、恐竜の化石を発掘するのだという(当然の如く、化石も壁も砂も食べられるらしい)。箱の中には発掘調査の道具と称したプラスチック製のハンマーや刷毛などまで同封されていた。
     ジョークグッズにしては手が込んでいると思ったけれど、メーカー名は春野さんから何度か聞き覚えのある有名ショコラのブランドだったことで眩暈を覚える。通りで匂いからして「お高そうな雰囲気」を醸し出していたわけだ。

    (……何が『夏井さんの為のチョコ!』だよ)

     何の因果か非番になった、手先もかじかむ平日の午後。独り静かな独身寮には賑やかな隣人の声など聴こえない。ここにあるのは物の少ない見慣れた自室のインテリアと飾り気のないテーブル。そして場違いに浮いている、恐竜の箱。俺の為、なんていうから本命かとばかり思っていたのだけれど。

     確かに俺にだって非はある。幼少期から追いかけていた某恐竜映画シリーズに待望の最新作が発表された時は真っ先に七篠を誘ったし、感化されたらしい彼女が恐竜の生態を知りたがっていたので、上野にある博物館へと連れて行ったこともある。その時は七篠にティラノサウルスブームが訪れたのかとばかり思っていた。

    (君に察しろ、なんてどうせ、無理だろうけれどさ)

     七篠は知らない。
     女性に近づくことが億劫だった俺が、どんな想いで君に声をかけているのか。気持ちの機微を察しようにも空回るばかりで、どれほど苦労しているのか。七篠を慕う同僚兼ボディーガードたちの目を回避しようとどれほど気を回しているのか。そんな中で本命を匂わせる言動があった矢先に、これだ。

     言語化できないむしゃくしゃとした感情のまま、やや雑にパッケージを開く。付属のちゃちなハンマーで右端を叩いてみると、チョコレートは簡単にひびが入って、砂粒状のチョコレートが飛び出してきた。食べられる砂の中には何が潜り込まれているのだろう。

     君の本音だって、叩いて割って、容易く取り出せる代物だったら楽なのにな。
     ふと過ぎった考えがあまりにも馬鹿げた言い分で、再び現実に引き戻される。無意識に前髪を絡めていた指先を外して、俺は再びプラスチック製のハンマーを持ち直した。
     せめて埋もれている宝が何だったかだけでも確認しよう。あの映画にも出ていたティラノサウルスなら良い。ブラキオサウルス辺りも悪くないだろう。ひとまず「発掘」を終えないことには、彼女への報告もままならない。

     もっともらしい言い訳を並べる過程で、気がついたことがある。
     どれほど振り回されたとしても、それが七篠にまつわる事ならば決して、突き放すことなど出来ない。彼女に心乱されることも承知の上で、接触する口実を探しているのかもしれない、と。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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    michiru_wr110

    PASTanzr 初出2023.7.
    夏メイ
    イメソンは東京j...の初期曲。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》
    青く冷える七夕の暮れに(夏メイ) 新宿は豪雨。あなた何処へやら――イントロなしで歌いはじめる声が脳裏に蘇ってくる。いつの日かカラオケで夏井さんが歌った、昔のヒット曲のひとつだ。元々は女性ボーカルで、かなり癖のある声色が特徴らしい原曲。操作パネルであらかじめキーを変えて、あたかも自分のために書き下ろしされたかのように歌い上げてしまう夏井さんの声は、魔法のように渇きはじめた心に沁み渡っていく。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》

     情緒あふれる解説が無機質なラジオの音に乗せて、飾り気のない部屋に響く。私は自室の窓から外を見やった。俄かに薄暗く、厚みのある雲が折り重なっていく空模様。日中には抜けるような青空の下、新宿御苑の片隅で夏の日差しを感じたばかりだというのに。この時期の天候はどうにも移り気で変わり身がはやい。
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    michiru_wr110

    PASTanzr
    初出2022.8.28.
    イベストバレ有(遊園地の怪人+ハイサマーロマンス)
    どうかしている。君も俺も(夏メイ) 夏井流星はけたたましい音を立てながらスマホを伏せた。
     液晶ディスプレイに表示された画像の正体に気づいたからである。

    (…………何なの)

     いつもより比較的静けさ漂う特対内。スマホを叩きつけた勢いで右手が僅かに痺れたまま、夏井は自席のデスクに勢いよく突っ伏す。一連の動作に、休日出勤中の他数名の課員たちは遠巻きに夏井の様子を伺うばかりだ。

     瞼の裏に過ぎるのは、後輩である秋元からFINEに送信された1枚の画像。青い空と透き通るほど眩しい海を背景に寛ぐ七篠メイの写真である。
     海の家らしいチープなつくりのテーブルの上には鮮やかな色味のスムージーが入ったグラスがいくつも乗っており、七篠はそのうちのひとつを口にしながら僅かに目を見開いていた。秋元は「個人的な用件」で春野と行動を共にしていたはずだったが、何がどうしてこうなったのか現時点では予想もつかない。それに、不意打ちの如く無防備な姿を撮られている七篠も七篠だ。身にまとう眩しい色味のチューブトップは七篠の肌の白さを殊更に強調している。しかもわき腹の辺りにはうっすらと不自然な翳りがあり、見方によっては影のようにも古傷や火傷の跡のようにも受け取れる。羽織るものを何も身につけていない点も相まって、夏井の平常心はすっかり隅に追いやられてしまっている最中だった。
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