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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    anzr
    夏メイ(BDお祝い)
    メイちゃんからのプレゼントと、お菓子言葉に動揺する夏井さん
    ※若干の過去捏造有

    #anzr男女CP
    anzrMaleAndFemaleCp
    #夏メイ

    火曜日に捧げるマロングラッセ(夏メイ) 差し出された横長の箱へ釘付けになる。落ち着いた緑色の包装が施され、影絵の女性の横顔があしらわれたロゴには見覚えしかない。
    (これは……)
     箱には「MARRONS GLACÉS」の印字。パッケージだけを見ても明らかに上等なスイーツだ。
     珍しく事務作業に追われていた日の昼下がり。昼食調達のために外へ出ようとしたところ、出会い頭に七篠から声をかけられた。わざわざ仕事の合間に立ち寄ってくれたらしい。手提げの紙袋からそれを取り出すと柔らかな笑みを浮かべて言う。
    「お誕生日、おめでとうございます」
    「え、と……」
     相変わらず真っすぐな視線だ。堂々と受け止めたいのに、実際の俺はといえば言い淀んで目を逸らすことしかできない。

     一月三十一日、火曜日。仕事のあるいつも通りの平日だったからこそ、期待なんかしていなかったのに。しかもよりによって、あんな話を聞いた矢先に。
    (こんなことなら、調べなきゃ良かった)
     ちょうど昨日、雑談の延長で春野さんが話していたのだ。花言葉と同じように、スイーツの中には「お菓子言葉」が存在する品があるのだと。それから、人気どころの菓子やスイーツに込められた意味をいくつか教えてくれた。チョコレートは好き。クッキーは友だち。マシュマロだと嫌い……といった具合に。

     お菓子言葉? 話を聞いた時は正直、訝しさしか感じなかった。形に残るプレゼントならともかく、口にすれば消えてしまうものにいちいち意味を持たせたところで何になるのだろう、と。率直な感想を述べたら秋元から「夏井さんは悪気なくマシュマロあげそうなタイプですよね」と返されたのが図星で、なぜか過去の行動を読まれてしまった腹いせに三割増しの睨みを利かせた。かつて気を遣ってバレンタインのチョコレートをくれた母が、お返しとして選んだマシュマロを微妙な表情で受け取ったことまで思い出してしまったからだ。悩みに悩んで選んだつもりだっただけに、時を経た不意打ちの答え合わせには肩を落とす他ない。
     それから気になって、春野さんが隠れてこっそり食べていたスイーツの意味をかたっぱしから調べた。ばかばかしいことこの上ないとわかってはいる。けれど聞いてしまった以上、今後二度と、贈り物で失礼がないように気をつけなければならない。ついでに言えば少々、知的好奇心が疼いた点も否定はできないけれど。

     閑話休題。問題は、浮いた話題に人一倍疎いであろう七篠から手渡されたこのスイーツにある。
    「ええと、お気に召しませんでしたか?」
    「そんなことはない!」
     前のめりになった勢いで、奪い取るように箱をもぎ取る。あっさりと手中に収めた緑色の箱。あしらわれた影絵の女性にまで笑われているような気がして、俺は居たたまれない心地のまま再び視線を逸らした。

     ふわりと芳醇な香りが漂う。間違いない。ブランデーリキュールが染み込んだ、上品な味わいで評判のマロングラッセだ。
     マロングラッセのお菓子言葉は確か――

    (永遠の愛なんか、誓い合う仲でもないだろ……)

     決して他意などない。
     ましてや送り主は七篠だ。浮ついた輩とはわけが違う。

    「……あまりのセンスの良さに、びっくりしたよ」
     おおよそ伝わらなさそうな嫌味をぶつけてみたら案の定、額面通りに受け取った七篠は顔を綻ばせた。
    「良かったです。ご相談をした甲斐がありました」
     そして、少し引っかかる物言いをする。
    「ご相、談?」
    「はい。何か喜びそうなものはないかと」
     なるほど。入れ知恵があったわけか。しかし待てよ、と俺は動きを止めた。
    「ちなみに誰の意見?」
    「主に秋元さんです」
    「“主に”……」
    「春野さんからのご助言もあったそうなので」
    「…………」
     覚えておけよ、と歯噛みしてももう遅いのだろう。この展開は、十中八九仕組まれたものだ。
     遠くから感じた視線に目をやれば、窓ガラス越しに秋元と目が合う。いつもの人好きする快活な笑みと、がんばれとこぶしを握るジェスチャーを残して退散した。
    「あの野郎……」
    「夏井さん?」
    「あ、いや違う。君が悪いわけじゃなくて」
     舌打ちは自重した。代わりとして誤魔化すように、俺は七篠に手を伸ばす。
    「とりあえず、来て」
     七篠が握ったままの紙袋の取っ手を掴んで、俺は歩き出した。引き摺られるように後に続いた七篠は戸惑いながらも、手を離さずにいてくれたようだ。
     咄嗟の行動とはいえ、こんな場面で堂々と女性の手すらも取れない度胸のなさが恨めしかった。少なからず心を開いている人間への行動としては褒められたものではないけれど、今の俺にはこれが精いっぱいだ。だから不本意ながら、今回は甘んじてあいつらのお節介を受けることにしようと決める。

    (……勘違いしても、知らないからな)

     人目を忍んで軽食も食べられる新宿御苑に目星をつけて、横目で七篠の様子も気にかけつつ、俺は尚も歩みを進める。どうせ春野さんのセレクトなら味に間違いはないだろう。俺一人で楽しむには勿体ない。七篠を連れだす口実などそれだけで充分すぎるほどだ。
     下手な張り込みよりも余程精神を削られてしまったのだから。誕生日にこんな目に遭ってばかりでは、本当に、割に合わないと思う。

     再び、マロングラッセのお菓子言葉が過ぎった。どう考えても恥ずかしすぎる。けれども、彼女といられる貴重なチャンスを不意にはしたくなかった。

     いつか永遠を誓い合うのなら、他の誰でもなく、君とが良い。
     口にする勇気はまだ、ないけれど。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都(+🌹&🧹)
    お付き合い済の戦衣都、主に⚔の破壊力が凄まじそうだ……と妄想した結果

    * * *

    新開さんはどこぞの王子様よろしく、ダンスにでも誘うのかと問いたくなるほど恭しく丁寧に手を取り、かれこれ数分が経っている。
    (私は一体、ドウスレバ……)
    お前のこと、全部に決まってんだろ(そよいと) この状況は彼の、あるいはその周囲の策略だったのかもしれない。

    「綺麗なもんだな」

     至近距離には今、新開さんがいる。私の手を取って、指先を矯めつ眇めつ、眺めている。

     新開さんが釘付けになっている青色のポリッシュは、水の泡を彷彿とさせる爽やかな水色から呑み込まれそうな深海色のグラデーション。小さなパールが光をはじき、親指と薬指には、真っ白な線画で漂うクラゲのイラスト。それらは指先に閉じ込められた水族館を彷彿とさせる素敵な仕上がりではあるけれど――

    (ミカさんへのお土産だったはずなのに、ここまでは聞いてない……)
     水族館のお土産コーナーにさりげなく陳列されていたのが、海の生物たちを模したネイルシール。これは、と思いミカさんや真央さん用に確保して手渡したのが一昨日。複数のポリッシュと渡したはずのシールを携え「その御御御手を拝借するわよ」と休憩室へ連れ込まれ、見事な手際で装飾を施してくださったのが昨夜の仕事終わり。
    1181

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    michiru_wr110

    PASTanzr
    初出2022.8.28.
    イベストバレ有(遊園地の怪人+ハイサマーロマンス)
    どうかしている。君も俺も(夏メイ) 夏井流星はけたたましい音を立てながらスマホを伏せた。
     液晶ディスプレイに表示された画像の正体に気づいたからである。

    (…………何なの)

     いつもより比較的静けさ漂う特対内。スマホを叩きつけた勢いで右手が僅かに痺れたまま、夏井は自席のデスクに勢いよく突っ伏す。一連の動作に、休日出勤中の他数名の課員たちは遠巻きに夏井の様子を伺うばかりだ。

     瞼の裏に過ぎるのは、後輩である秋元からFINEに送信された1枚の画像。青い空と透き通るほど眩しい海を背景に寛ぐ七篠メイの写真である。
     海の家らしいチープなつくりのテーブルの上には鮮やかな色味のスムージーが入ったグラスがいくつも乗っており、七篠はそのうちのひとつを口にしながら僅かに目を見開いていた。秋元は「個人的な用件」で春野と行動を共にしていたはずだったが、何がどうしてこうなったのか現時点では予想もつかない。それに、不意打ちの如く無防備な姿を撮られている七篠も七篠だ。身にまとう眩しい色味のチューブトップは七篠の肌の白さを殊更に強調している。しかもわき腹の辺りにはうっすらと不自然な翳りがあり、見方によっては影のようにも古傷や火傷の跡のようにも受け取れる。羽織るものを何も身につけていない点も相まって、夏井の平常心はすっかり隅に追いやられてしまっている最中だった。
    2564

    michiru_wr110

    PASTanzr 初出2023.7.
    夏メイ
    イメソンは東京j...の初期曲。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》
    青く冷える七夕の暮れに(夏メイ) 新宿は豪雨。あなた何処へやら――イントロなしで歌いはじめる声が脳裏に蘇ってくる。いつの日かカラオケで夏井さんが歌った、昔のヒット曲のひとつだ。元々は女性ボーカルで、かなり癖のある声色が特徴らしい原曲。操作パネルであらかじめキーを変えて、あたかも自分のために書き下ろしされたかのように歌い上げてしまう夏井さんの声は、魔法のように渇きはじめた心に沁み渡っていく。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》

     情緒あふれる解説が無機質なラジオの音に乗せて、飾り気のない部屋に響く。私は自室の窓から外を見やった。俄かに薄暗く、厚みのある雲が折り重なっていく空模様。日中には抜けるような青空の下、新宿御苑の片隅で夏の日差しを感じたばかりだというのに。この時期の天候はどうにも移り気で変わり身がはやい。
    897

    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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