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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    anzr
    匠メイ
    誕生日に行使した「甘やかす権利」について。

    「眠っちまっても良いからな。責任持って運んでやるからよ」
    「いえ……そんな、わけには」

    #匠メイ
    #anzr男女CP
    anzrMaleAndFemaleCp

    連休前木曜日、「ハロー」リラクゼーションサロンにて(匠メイ) 極楽浄土とはまさにこのことかもしれない。無意識に凝り固まっていた連日の疲れがどんどんと解れていくのに比例して、何だかふわふわとしたまどろみの中に足を踏み入れたかのような錯覚に陥っている。
     いつもなら東海林さんの特等席ともいえるソファに靴を脱ぎ、仰向けで寝転がって、肘掛けのカーブに首から後頭部をあてがい、その道のプロとも遜色ない手つきで頭皮全体をゆっくりと指圧されている。眠ってしまいそうな意識を奮い立たせるべく、密かに拳を握りしめて手のひらに爪を立てた。
    「眠っちまっても良いからな。責任持って運んでやるからよ」
    「いえ……そんな、わけには」

     思えば火村さんは宣言どおり、早朝から随分と私を「構って」くださっているように思う。三食は当たり前のように火村さん特製の手作りで、気取らないカフェメニューから豪勢な日本食まで、どれもが目を丸くするほど美味だった。
     朝食後にドライブがてら繰り出した港町はぐずついた天気だったのに、車から降り立った瞬間に雲間から太陽の光が射し込んで。街の賑わいと海沿いの煌めきの眩しさに目を細めながら、まるで火村さんが晴れ間を連れてきてくれたみたいに思えた。
     その後は歌舞輝町へ戻ってバッティングセンターで火村さんとヒット数で勝負してみたり、デパート内で隙あらば私にプレゼントを買い与えようと画策するのをどうにか阻止したりで大変だった。
     身体も心も何かと忙しなかったのに充足感に溢れていたのはやはり、こちらの意向を優先しながら「甘やかして」くださる火村さんの采配に他ならない。

    おまけに締めとして夕食後、すっかり辺りの暗くなったソファで火村さん自らがマッサージをしてくださっている。
     本人は見様見真似のドライヘッドスパもどきだと笑っていた。けれどこの気持ち良さであれば、仮にお店を開けば予約必須・数ヶ月待ちなど当たり前の人気店になってしまうに違いない。
     そういえば八乙女さんには懇意にしているエステサロンがあると聞いたことがあるけれど、そのお店もこんな風に心地の良い空間なのだろうか。定期的に通いたくなる、という言葉にも今なら頷けそうだ。

    「しかしながら、良いのでしょうか」
    「何がだ?」
     手を休める気配のない火村さんは、囁くように問いかける。
    「貴重な火村さんの誕生日なのに、ほんとうに一日、甘やかされてばかりで終わりました」
    「何だ、そんなことか」
     軽い調子で答えたかと思えば、不意に声のトーンを落とした。
    「俺がしたくてそうしたんだ。むしろ付き合ってくれて、ありがとうな」
    「……いえ」

     指圧していたはずの手はいつの間にか私の髪を撫で続けていて、時折指の隙間に髪を通して弄んでいるようでもある。
     単なる上司と部下の距離にしてはあまりにも近く、それでいて心地が良い。
     離れがたい、と思い抱く今の気持ちは果たして、彼と並び立つにふさわしいものなのだろうか。

     握りしめた拳を今度は意識して緩める。
     持て余す本音から逃れるように、微睡に身を任せることにした私は卑怯なのだろう。それでも火村さんは、笑って受け入れてしまいそうな気がしてならなかった。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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