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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    anzr 初出2023.7.
    匠メイ
    七夕に合わせて創作和菓子を拵えた火村さんと、通常営業のメイ。

    「俺たちは織姫と彦星じゃない。だから、いつだってあんたに会える」

    #夏メイ #匠メイ #anzr男女CP

    #匠メイ
    #anzr男女CP
    anzrMaleAndFemaleCp

    催涙雨は似合わない(匠メイ) 絶景だ。
     彩度の高い青から紫へのグラデーションと、散らばるきらめきは天の川を彷彿とさせる。屈んで至近距離から見つめてみても、どこまでも澄み渡る星空でしかない。
     幻想的に彩られた直方体のそれが食べられる代物だなんて、俄かには信じがたい。
    「これを、火村さんが手作りされたのですか……」
    「おう」
     絶景の夜空……もとい、星空を模した創作羊羹を前に、火村さんは目を細める。
    「少しばかり不格好だけどよ。メイちゃんがそんなに目ぇ輝かせてくれたなら作った甲斐がある」
    「素敵です。本当に」

     冷蔵庫から不透明な型を取り出した火村さんが私を手招いたのが数刻前。先にいいもの見せてやるよ、と長皿に型を伏せた時は何が始まるのか全く予想がつかなかった。形を崩さないように、そっと型を外して現れた鮮やかな景色。このうつくしさを何と表現すれば良いかわからず、私はただただ息を呑んで、箱の中の夜景を凝視していた。

    「……食べてしまうのが勿体ないくらいです」
    「そう言ってくれるのは嬉しいけどよ」
     零れ落ちた独り言を拾い上げた火村さんは、事務所の窓に視線を向けた。
    「今日のために拵えてきたんだ。食ってくれなきゃ困っちまう」
     窓越しには、曇り空の隙間から曖昧に見え隠れした空の色が覗く。くすんだ歌舞輝町の空の色はお世辞にも、箱の中の星空ほどに綺麗なものとは言い難い。
    「俺たちは織姫と彦星じゃない。だから、いつだってあんたに会える」
     美しい景色で年一度の再会を喜び合うという二人。都会特有の綺麗になり切れない空の下で、日常的に言葉を交わす私たち。

     果たしてどちらが幸せなのだろうか。

    「あんたが望むなら、いつでも作ってやれる」
     だから、と続けようとする火村さんの声に重なり、ドアの向こうから賑やかな声が複数聞こえてきた。一仕事終えた仲間たちが、お腹を空かせて戻ってくる頃合いだ。
    「皆もこちらに呼んできますね」
    「……おう」
     出迎えのために一声かけると、火村さんは何故か曖昧に……何かを惜しむような表情で微笑を浮かべた。

     せめて今宵は曇る空の上で、彼女たちが再会の涙を流していたら良い。飾り気のない現在を生きる身ではどこか他人事だけれど。

     情緒を置き去りにした私は今、うつくしい夜空の味わい方ばかりを考えている。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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    michiru_wr110

    PASTanzr 初出2023.7.
    夏メイ
    イメソンは東京j...の初期曲。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》
    青く冷える七夕の暮れに(夏メイ) 新宿は豪雨。あなた何処へやら――イントロなしで歌いはじめる声が脳裏に蘇ってくる。いつの日かカラオケで夏井さんが歌った、昔のヒット曲のひとつだ。元々は女性ボーカルで、かなり癖のある声色が特徴らしい原曲。操作パネルであらかじめキーを変えて、あたかも自分のために書き下ろしされたかのように歌い上げてしまう夏井さんの声は、魔法のように渇きはじめた心に沁み渡っていく。

    《七夕を迎える本日、都内は局所的に激しい豪雨に見舞われますがすぐに通り過ぎ、夜は織姫と彦星との再会に相応しい星空を観測できるでしょう》

     情緒あふれる解説が無機質なラジオの音に乗せて、飾り気のない部屋に響く。私は自室の窓から外を見やった。俄かに薄暗く、厚みのある雲が折り重なっていく空模様。日中には抜けるような青空の下、新宿御苑の片隅で夏の日差しを感じたばかりだというのに。この時期の天候はどうにも移り気で変わり身がはやい。
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