【アロスヴェ】その感情は執着「今日は強い嵐が来るから、決して家から出てはいけないよ」
薄暗い部屋の中、重たい布団をかけられながら、スヴェンはこくりと頷いた。
村で一番の占い師が、今夜の嵐は死人が出ると言ったらしい。村中の大人たちが、今も外で嵐に備えている。
「私に何かできることはありますか?」
「お前は家にいなさい。窓も扉も、開けてはいけない。夜が明ける頃には嵐も去るらしいから、それまでの辛抱だよ」
そう言うと、父は大きなぬいぐるみをスヴェンに手渡した。スヴェンが幼い頃に抱いて寝ていたものだ。
「父上、私はもう子供ではありません」
「私にとっては大切な子供だ。……良い子にしているんだよ」
そう言うと、父はスヴェンの部屋から立ち去り、間もなくがちゃりと重い音が響いた。どうやら鍵をかけられたらしい。
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