診断メーカー:『制限時間はあと一分』†
予感がして、気がついたときにはもう身を翻していた。
営業先の帰り道、まだラッシュは遠く駅は人もまばら。
気づかれた。この反応、向こうも覚えてる!
100年越しの高揚に景色が鮮烈に煌めく。今度こそ絶対に逃さない。これを逃したらもう次はいつ来るかわからないのだから。
発車時間まで、あと1分。
†
出先での歩きスマホの衝突などはよくある不運。
だが今日ばかりはむしろ幸運だったのかもしれない。
傾いた身、目の端に映る異様な空気に普段は沈めた古の記憶が引きずり起こされる。
ヤバい。あいつはヤバい。捕まったら何かが終わる気がする。身に鞭打つ思いで先を急いだ。
発車時間まで、あと1分。
293