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    マサよし

    @Masayoshi_sP

    書きまくって練習する場所

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    マサよし

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    一日一作【6】 4/17
    ・超常事変より
    ・火野瀬と山模の中等部時代捏造

    超常1(火野瀬+山模)機嫌が悪い時は校庭の木の上に登って一人になる。誰に何か言われることはない。学園の生徒も、先生たちですらビビって近寄ってこないから、ゆっくりと考える事ができた。それでも答えが出ることは稀だ。元より考えるのは苦手だし、小難しいことをウダウダ説明されるのはもっと苦手だった。
    「紅炎」
    そんな俺に、声をかけてくる奴が一人だけいる。見下ろすと、キッチリと制服のボタンを閉め、能力座学共に優秀な所謂、模範生である山模範数が立っていた。コイツほど名は体を表す、をそのまんま実行してるやつを俺は見た事がない。
    「……んだよ、範数」
    「相当不貞腐れてるな。今回はどうしたんだ」
    怒るわけでもなく、馬鹿にするわけでも変に下手に出るわけでもなく、普通の日常会話を始めるような話し方で問いかけてくる。このままだと首を痛めるだろう、とヒョイと木から降りて根元に腰かけると、範数も木にもたれ掛かりながら俺の隣に立った。
    「……能力の使用制限をやぶった」
    「それはよくないな」
    「でも先に仕掛けてきたのはあっちだ!」
    毎年多くの能力者が入学する学園ということもあり、ここには能力者だけへの校則が存在する。その中の一つとして、能力の使用が認められている場所以外での大規模なものは禁止。俺が組み分けられている能力の種類でいうと、手のひらサイズ以下かつ体から離してはいけないという規則があった。
    まあ、俺は今回サイズも距離もどっちもアウトだったわけだが。しかしなにも、ただ意味もなく炎をぶっ放したわけではない。先に喧嘩を売ってきたのは相手のほうだったし、先に危険な状態をつくったのも相手のほうだ。
    「あのままだと周りも危ないと思ったから、全部燃やしただけだ。俺は悪くねぇ」
    「なるほど、言い分はわかった。だが結局問題になったのはお前の能力のほうだっただろ?」
    「そ、そりゃあちょっと火力が出過ぎたとは思うけど!どうせすぐに自分で消せるし……ていうか消したし!」
    「……。校舎や木々に燃え移りそうになってたらしいじゃないか」
    「だから、消したからいいだろ!?なんだよ、お前まで俺が悪者だって言いたいのかよ」
    むーっと口を尖らせながら睨むと、範数はあくまで冷静に首を横に振った。そもそも校則を馬鹿正直に全部守ってるのなんてお前くらいだ。ほとんどのやつが先生に隠れて能力使いまくってるっての。
    「先生はなんて言ってた?」
    「……」
    「お前、また話をちゃんと聞いていなかったな?」
    「だって!」
    「言わなくてもわかる。先生の話は長くてクドくてどこが要点かわからないから耳が受け付けない、な。毎回同じこと言ってるぞ」
    「ううう……」
    この記憶力モンスターめ。言おうとしていたことを一言一句先に言われて押し黙る。仕方なく説教を受ける姿勢になったところで、範数は少し考えてから話し始めた。
    「お前は自分の能力を過信しすぎている」
    「……えぇ?」
    「例えば……そうだな。この木に、お前の炎が燃え移ってしまったとしよう。幹が燃えて、倒れるとする。その下には俺とお前がいる」
    「……おう」
    「このままじゃ大事故だ。どうする?」
    「火を消す」
    俺はまあ炎を被っても平気だろうが、範数は違う。コイツの言う通り、大事故になってしまうだろう。だから、その前に消す。
    「このくらいの大きさの木で燃えてるくらいなら頑張ればすぐ消せる。間に合うと思う」
    「まあ、それは間に合ったとしよう。だが炎は消せても、この大木が倒れてくるのをどうやって止める?」
    「……」
    「断定はできないが……恐らく下敷きになってしまえば重傷は免れない。当たりどころが悪ければ最悪、の可能性もある」
    見上げた木は大きい。俺一人が登ってもピクリともしないしっかりとした太い幹の木だ。きっと倒れたら重いだろう。そんなものが、人の上に落ちる。下敷きになって、ペシャンコに……
    「っ……!」
    「それが俺たちならまだマシだ。もし、幼い初等部の無能力者だとしたら」
    「わ、わかった……!……危ねぇ」
    想像してゾワリと背筋が冷えた。俺が放った炎が木や校舎に燃え移り、急いで消しても建物の崩壊が始まってしまったとしたら。中にいるやつらも、外にいるやつらも危ない目に遭う。瓦礫が降る光景を想像することも容易く、無意識に拳を強く握った。
    「……脅すつもりじゃなかった、悪い」
    「いや……意味がちゃんとわかったぜ」
    「お前の能力は強い。制約もほとんど無く、いくらでも炎を作ったり消したりできる。自分が火に対しての耐性を持っているからわかりにくいかもしれないが、相当お前の炎は強力だ」
    「ああ……」
    「だからこそ、自分の能力ともっと向き合って知ることが大事だ。炎自体だけじゃない、その燃焼力や飛び火する距離、燃え広がるスピード、風との関係性や鎮火の条件。少しでも知っておくことでお前を守るためにもなる」
    範数は肩に手を置き、しゃがんで目線を合わせた。その目をジッと見つめ返しながら、話を頭に刻み込む。これから知らなきゃいけないこと。直さなきゃいけないところ。それをするためにどうすればいいか。
    範数はいつも、話を頭に入れる取っ掛かりや糸口を見つけてくれてから、大事な話をしてくれた。そのおかげで他からじゃうまく考えられなかったことが、考えられるようになる。わからないことは、わかるまで話してくれる。
    「そして何よりも、能力を過信しないことだ。消せるから、という考えじゃ危ない時だってあるからな」
    「……わかった」
    「先生が怒ってたのはきっとそういうことだ」
    話し疲れたのか、範数は一息吐いて木に背中を預けていた。沈黙の時間が訪れ、ぐるぐると胸の中に生まれた反省と罪悪感がごちゃ混ぜになって渦巻く。だがその中でも未だに駄々をこねている自分がいるのだ。
    ガキか俺は。納得だってしたんだから、いい加減折れろ。腕を組んで顔をしかめていると、隣からは、ふっ、と軽く笑う声がした。
    「まあ、咄嗟に周りを守ろうと思って炎が出たんだろう?自分より弱い者を守ろうと瞬発的に行動するお前のその姿勢、俺は好きだよ」
    「の……範数ぅ……!!」
    「反省文もその調子で頑張れ。手伝ってやるから」
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