ホワイトデー 一月後、その日もカレンダーを見ながらの調節は終えていたので、浦原商店に向かうつもりだった。別に催促するためではないが、もしかしたら、という期待の元だ。バレンタインデーは駄菓子屋の商売柄覚えていた。となれば、必然的にホワイトデーも知っていると見ていいだろう。
校門を出て、浦原商店の方角へ足を向けた時だった。
「あ、黒崎サーン」
目立つ格好そのままに、浦原が杖を突くのと反対の左手でひらひらとこちらに手を振っていてギョッとする。想い人の待ち伏せに気分が高揚したが、オレンジ髪の男子高校生が甚平に帽子、下駄の男に手を振られているという絵面に注目が集まっていることに気付く。
「ちょ、こっちに来い!」
「ハイハイ」
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