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    なつさ

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    なつさ

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    stsの波動とairsの竜の巫女の力に夢見てるやつ2。あまり長くないです。

    Nightfall2真っ白な部屋に、淡々とした電子音が響いている。
    透明なガラスの向こう側、酸素マスクをつけられて眠っている男は、酷い重症で発見されてから一週間たった今も目を覚まさない。いつもはうるさいほど元気な男なだけに、青い顔でこんこんと眠り続けている姿は見るものの不安をあおった。

    「シンジ、お前もそろそろ休め。一昨日こっちに来てからずっとここに居るだろう」

    そう声をかけてきたタケシこそ、疲れた顔が隠せていなかった。
    サトシとの付き合いが長いだけに、タケシの心労も人一倍だろう。彼にとっては弟のような存在だと聞いている。

    「俺よりもあっちを気にしてやれ、よほど重症だろう」
    「デントにはポッドとコーンが付いてる。一度ホテルに戻って眠らせたところだ」
    「今にも死にそうな顔、いや、殺しに行きそうな顔をしていたからな」

    隣の部屋にはもう一つベットがあり、そちらにはアイリスが眠っている。
    同じく酸素マスクを当てられた状態で眠っている彼女も、発見時から昏睡状態が続いていた。サトシとは違い外傷はなかったものの、体内から多量の猛毒が検出されており、それが原因だ。ポケモンの技による毒とは型が違っており、従来の薬では解毒できなかったと聞いた。現在は腕に繋がれた点滴で自己の治癒力を増加させ、ゆるやかに解毒を行っている最中だ。
    二人とも、起きてるときは騒がしいほどなのに、今はただ命の音を意味する電子音のみ聞こえており、病院の廊下には暗い雰囲気が満ちていた。

    「シンジもジムを休んでこちらに来るのに相当無茶したんだろ。疲れてるのにベットで休まないと、先にお前が倒れるぞ」
    「そんなヤワな体はしてない」

    強情ともいえるシンジの去勢に、タケシは苦笑した。
    一週間前、サトシとアイリスの両名がソウリュウジムの訓練場前で倒れているところを、ジムリーダーのシャガに発見された。特にサトシは瀕死の重症であり、アイリスも毒による呼吸困難で危なかったと聞いている。シャガはそんな緊急事態にも冷静で的確な対応をし、二人を早急に地元の病院で応急処置、後にヒウンシティの大病院へ移送し治療した。
    正直な話、第一発見者が経験豊富な大人であるシャガで良かったとどれだけ思ったことか。その冷静さと的確な判断力がなければ、サトシの命がまだここにあったか怪しいところだ。それほどに、発見時のサトシの傷は深かったと聞く。
    発見の次の日に知らせを聞いたシンジは、トキワジムでの仕事を三日で片付け、イッシュへ飛んだ。

    「アイツのポケモンたちはどうなっている?」
    「良くも悪くも変わりない。モンスターボールごと検査装置に繋いであるから、何かあればすぐ伝わるようにはなっているが、正直な話、まだ分からないことだらけでな」

    話ながらも頭をかくタケシの表情は優れない。
    サトシのポケモンたちは、ボールごと石化した状態で発見された。
    驚くことに、検査の結果、ボールの開閉は出来ないものの中のポケモンたちは無事だという。しかし、何故石化しているのか、その状態で何故無事なのかということはまだ分かっていない。タケシの見解では、何かしらのエネルギーが膜のようにポケモンたちを守っているとのことだ。

    「ピカチュウも行方不明のままか。当事者たちの話が聞けないとはいえ、情報が少なすぎるな」
    「今、シゲルが各方面と協力して情報を集めている。サトシの任務内容とか、アイリスの当日の動きとかも含めてな」
    「アイツこそ死にそうな顔をしてたぞ」
    「ああ。でも、そっち方面はシゲルの方が顔がきくんだ。それに、今のシゲルは何かしら動いてないと気が済まないだろうからな」

    シャガからオーキド博士に連絡が行ったとき、真っ先に飛んできたのがシゲルだったらしい。ちょうどオーキド研究所へ帰省しているときだったらしく、連絡を受けた次の日にはイッシュに到着していたらしいので、それこそ色んな仕事をすっ飛ばしてきたのだろう。
    治療直後の一番酷い状態の幼馴染を見てしまったシゲルの心境ははかりしれない。
    シンジが到着時、出ていく彼とすれ違うように顔を見合わせたときは、いつもの理知的な顔はどこぞへ消え去り、無表情で底知れない暗い瞳をしていた。

    「目を離さないほうがいいんじゃないか、アイツ相当きてたぞ」
    「一応、ゴウに一緒についててもらってるよ」
    「そいつもかなり憔悴してたがな」
    「ゴウはサトシとバディを組んでたこともあるから……でも、ひとりでも飛び出そうとするシゲルにあのとき付き添って行けるのはゴウしかいなかったんだ。ゴウはプロジェクト・ミュウでシゲルとの付き合いも長いしな。俺はサトシのポケモンたちの検査もあったし」

    最初に到着したのがシゲル、その次がちょうどイッシュ地方にきていたというゴウ、そして知らせを聞いたタケシが仕事を片付けてきた。シンジは四番目だ。デントはちょうどイッシュから離れており、知らせを聞いて帰って来るのが遅くなった。今朝到着した彼は、共に旅した仲間二人のこんこんと眠る姿に、酷いショックを受けて放心状態となっていた。

    他のサトシの仲間たちからは、今もひっきりなしにタケシに連絡が来ている。
    今すぐイッシュへ来られない者もいるため、少しでも彼の容体を知ることができないかと皆心配なのだ。

    「それで、お前は俺の監視というわけか」
    「分かってるなら無茶な行動はしないでくれよ」

    今は平静を装っているが、シゲルやゴウに負けず劣らず、サトシの姿を見たときのシンジの顔も相当なものだった。平常時ですら人相が悪いと言われているが、それ以上に纏う雰囲気が鋭く、凶悪になっていた。ぎりっと音が聞こえそうなほど奥歯を噛み締めてサトシを睨みつけている姿はいっそ痛々しいほどだった。

    「何も分からない状態で飛び出すほど無謀じゃない」
    「何か分かってもやめてくれ。もう少しでサトシたちの移送もあるんだ」
    「正気か?」

    一命をとりとめているとはいえ、未だ意識が戻らず面会制限のされている患者を移動させることに、シンジは眉をひそめた。

    「容体がもう少し落ち着いたら、アローラへ移送することになったんだ」
    「アローラ? 地方を跨いでの移送なんて、アイツらの体に負担でしかないだろう」
    「あちらの方が色々融通が利くし、ここよりも設備の良い施設が整っているらしい。エーテル財団から直々の依頼だ。小型の医療専用プライベートジェット機が迎えに来るらしい」
    「プライベートジェット機……」

    スケールの大きさにシンジは閉口した。
    流石というかなんというか、サトシに大恩があるというあの一家は、金に物言わせて意地でもサトシを連れて行くつもりらしい。

    「悪い申し出じゃない。あの地方は家族意識が強いからな。サトシにとっても第二のホームだし、今回の件に関して全力でサトシたちを守るだろう」

    サトシとアイリスの現状について、今はまだマスコミに伏せられている。
    何があったのか正確な情報がないことはもちろんのこと、アローラとイッシュ、それぞれの頂点であるチャンピオン二人が命に係わる負傷をしたという知らせは、世間に大きな衝撃と不安を与えるだろうと懸念されたためだ。

    「イッシュ側がよく許したな。あの女も連れて行くんだろう?」
    「そこらへんは上の方々で話し合いがあったみたいだが、俺は知らん!」

    どんなパワーゲームがあったかは知らないが、マスコミ対策も加味してアローラが今後の治療と静養拠点となることが既に決定しているようだ。
    タケシの話を聞いて、シンジはまたサトシへと視線を向ける。

    「あいつを守る環境が整っているのであれば、俺の言うことはない」
    「そうか」

    会話が途切れると、再び病院の廊下は静寂に包まれた。
    白い壁に囲まれて、ほとんど全身を白い包帯で覆われたサトシを見て、シンジは奥歯を噛み締めた。
    いつもいつも、無茶をするやつだと知っていた。ポケモンのためなら無茶無謀を厭わないサトシに、いつか痛い目をみるぞと苦言したのは一度や二度ではない。
    ほらみたことかと言ってやりたいのに、相手が眠り続けていれば皮肉の一つも言えやしない。
    じっとサトシを見続けるシンジを横目に、タケシはため息をついた。
    本当は休ませてから伝えるつもりだったが無理そうだ。

    「シンジ、落ち着かないのであれば、シンオウへ飛んでくれないか」
    「なに?」
    「シンオウ地方のこうてつじまにいる、ゲンという人を尋ねてきてほしい」
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