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    なつさ

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    なつさ

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    stsの波動とairsの竜の巫女の力に夢見てるやつ3。シゲルとゴウとのターン。

    Nightfall3「ゴウ、そろそろ着くよ」

    シゲルの声に、ゴウはハッと顔を上げた。
    ぼんやりと窓の外を見ていたはずが、知らぬまに寝てしまっていたようだ。ここ数日まともに寝ていなかったせいだろうと、目頭を押さえて顔をあげると、書類片手にノートパソコンを見ているシゲルがいた。

    「ごめん、寝ちゃってたな」
    「休める時に休むのは良いことさ。最近眠れてなかっただろう」
    「シゲルだってそうじゃん」

    言った瞬間、ゴウは真っ白なベットの上で横たわるサトシを思い出して口を閉じた。
    眠れていない原因は分かっている。脳裏に焼きついた、点滴に輸血に酸素マスクと色んな管が繋がれたサトシの姿。サトシの呼吸は息をしているか心配になるほど静かで、あまりの痛ましさに見ていて涙が出てきてしまったほどだ。
    ゴウはそれを振り払うように頭をふると、シゲルの見てる資料に目を向けた。

    「なに見てるんだ?」
    「ツルギさんから送られてきた資料。今回サトシが協力していたのはポケモンレンジャーの任務だったようだから、ツルギさんに繋ぎをお願いしたんだ」

    ツルギは過酷な環境下で暮らすポケモンの生態を主な調査対象としており、人跡未踏の地でフィールドワークすることが多い。その関係上、ポケモンレンジャーの任務にも協力することが多く、伝手をもっていたらしい。

    「これを読むに、任務はポケモンの保護活動だ。そう危険な任務じゃなかったみたいだね
    「じゃあどうしてあんな……」
    「さあね。ただ、あの何にでも首を突っ込むトラブル吸引体質が途中で予期せぬ何かに巻き込まれてても不思議じゃないさ」
    「そんな言い方……」

    シゲルの言い方にゴウは眉をひそめたが、目線を資料から上げずに文字を追い続けているシゲルを見て口を閉じた。
    病院ではゴウも余裕がなかったが、シゲルも能面のように表情を失いかなりのショックを受けていたはずだ。しかし、病院を出て以降は冷静さを取り戻し、すっかりいつもの調子を取り戻していた。

    「サトシと一緒に任務にあたっていたレンジャーがこの先の街で待っているらしいから、その人から詳しい話を聞こう」
    「わかった」

    それまでに君も目を通しておいてくれ、というシゲルがパソコンを操作すると、ゴウのスマホに資料データが送られていた。ファイルを開いて目を通しながら、そっと正面に座るシゲルを観察する。
    少し疲れているようだけど、口調はいつも通りだし、資料を見ながら考え込む姿は理性的でいつものシゲルだった。

    (いつも通りなんだけど…………いつも通りなことが逆に心配っていうか)

    ゴウが病院についたとき、シゲルはサトシの病室で、項垂れるように椅子に座っていた。扉を開けて入ってきたゴウには全く反応をみせなかったのに、サトシの姿に衝撃を受けたゴウが駆け寄って彼の手に触れようとした瞬間、驚くほど強い力で手首を掴まれたのを覚えている。
    まるで触れるなというように、手の痕が残る程強く掴まれ、ゴウは思わず呻き声をあげたのだが、その声に我に返ったシゲルは、謝りはしてもサトシの側から離れることはなかった。
    そんな姿を知っているだけに、ゴウは今のシゲルが心配でならなかった。

    「タケシから連絡だ」

    そんなゴウの心境を他所に、シゲルのスマホがメールの受信を告げる。

    「タケシはなんて?」
    「シンジをシンオウ地方の鋼鉄島へ派遣したって。あそこにはサトシの波動の師であるゲンさんがいるから、彼の知見を得るためだろうね。彼ならサトシの意識を回復する方法が分かるかもしれない」
    「サトシ、目を覚まさないもんな……」

    サトシが発見されてから一週間。出血多量の影響か、未だにサトシの意識は回復していない。
    医師の見立てでは身体的には回復に向かうはずが、上手くいっていないという。それはつまり、何かが回復を阻害しているのではないかとゴウたちは思い始めていた。

    「分からないことだらけだからね。分からないなりに、あちこちから情報を集めるしかないさ。シンジはシンオウ地方の出身だし、旅には慣れてるから適任だろう」
    「あのさ、波動って、医学方面のことも分かるもんなのか?」

    シゲルの言葉に、ゴウはそろりと手をあげて問いかけた。
    波動についてはバディを組んでた頃にサトシから多少説明を受けているが、あまりピンとこなかったというのが正直な感想だ。なにせサトシの説明は感覚的な部分が多く、擬音による独特な説明はゴウのような理論派には分かりづらい。
    ルカリオと共鳴しての巨大波動弾やゲッコウガとのシンクロによる探査など、実際に見たことがあるものはなんとなく分かるものの、それ以外の波動の使い方というものが良く分からなかった。

    「僕も波動使いではないから詳しいわけではないけど……波動というのは、気ともオーラとも呼ばれるもののことだ。生き物にはそれぞれ固有の波動があり、先ほど君があげた用法の他に、ルカリオやリオルといった波動を使えるポケモンとの遠距離での意思疎通も可能だね。場合によっては、相手の記憶や感情も分かるとか。あとは、熟練の波動使いであれば、波動で直接バリアを張ることも出来るらしい」
    「結構色んなことができるんだな」
    「それこそ、熟練の波動使いであるゲンさんなら、他にも出来ることがあるかもしれないね。だから先ほどの問いの答えでいえば、可能性はある、という感じかな。波動が体内を巡っているのであれば、応用次第ではサトシの体調について分かるかもしれない。断言はできないけれど」
    「それも結局はそのゲンさんに聞いてみないとってわけか」
    「そういうことだ。ここで僕らがあれこれ議論しても分かるものじゃないさ。そっちはシンジに任せよう。そろそろ街に着くね」

    気づけば、窓の外は既に街中の光景になっていた。
    徐々に減速を始める列車に、二人は手早く荷物を纏めて立ち上がった。
    駅に降り立った二人を迎えたのは、自分たちとそう年が変わらないであろう少年だった。

    「やあ、君たちがシゲルくんとゴウくんであっているかな」

    目立つためだろう、少年はポケモンレンジャーの制服の上から大き目のコートを羽織っていた。

    「貴方がハジメさんですか。初めまして、オーキド・シゲルです」
    「初めまして、ゴウです」
    「ポケモンレンジャーのハジメです。今日はツルギさんからの連絡で君たちを待っていたよ。サトシくんの件で話が聞きたいそうだね」
    「ええ、こちらはまだ、分からないことだらけですので」

    ハジメの言葉に、シゲルは嘘くさい笑みを深めた。その皮肉めいた声音にハジメの頬が引きつるのをゴウは見た。

    (あ、これ結構シゲル切れてる)

    サトシが発見されてから既に一週間。
    ポケモンレンジャーの活動中に何かに巻き込まれたのであれば、彼らから何かしらの連絡があって然るべきだ。しかし、実際はアイリスとともに発見され病院で処置を受けたあとも、こちらからコンタクトを取るまで連絡はなかった。つまり、サトシの負傷にレンジャー側は気づいていなかったということになる。
    安全管理面におけるその粗雑さに、シゲルが怒りを覚えるのも頷ける。ゴウだって物申したい。そして、相手にもそれは伝わったようだった。

    「君たちの怒りは最もだ。嘱託職員とはいえ、まだ未成年の彼を危険に晒して重傷を負わせたうえに、その事態を察知することが遅れてしまったのだから。これはレンジャーユニオンとしても重く受け止め、大変申し訳なく思っている。すまなかった」

    ハジメは申し訳なさそうに眉を下げると、真っすぐに正した姿勢の腰を折った。

    「…………ん? 職員?」
    「え?」

    しかし、ゴウはそれよりも今聞いた単語にひっかかった。思わず言葉を繰り返したゴウの反応に、ハジメは首を傾げた。

    「サトシはポケモンレンジャーになったんですか?」
    「えっ? いや、そうではないよ。一応、所属としては嘱託扱いではあるんだが……ひとまず場所を変えようか」

    いつまでも駅で立ち話というわけにはいかない。
    ゆっくり話すためにも、どこか落ち着ける場所へ行こうと三人は連れだって歩き出した。
    駅近くにあったカフェに入り、人目のつかない隅の席に腰を下ろす。

    「それで、一体どういうことなんですか? サトシがレンジャーユニオンの嘱託職員扱いっていうのは」
    「僕も詳しいことは知らないんだけどね。レンジャーユニオン内では、彼は今、所属が嘱託職員になっているんだ。その関係で、いくつかの任務に協力してもらっているんだけど」
    「そっちは僕が説明するよ」

    ゴウの問いに答えたは、何故かシゲルだった。

    「シゲルは知ってたのかよ!」
    「まあ、その辺の相談はサトシから受けたからね」
    「へえ~……」

    ひとりだけ相談を受けていたという点に、ゴウの目は据わり声音は平坦になった。
    こういうとき、幼馴染って狡いと思う。
    自由にあちこち飛び回る根無し草で連絡不精のサトシが自分から連絡するのは、家族を除けばお世話になっているオーキド博士とタケシ。この二人はもう特別だし、張り合おうとは思ってない。
    しかし、本人たちはわざわざ連絡を取り合ってはいないと言いつつ、出会えば近況を話し合うのか、サトシはシゲルには何でも話しているようだった。
    ゴウには聞かれないと、言ってなかった?なんて首を傾げるくせに、シゲルには何でも話すというのだから、サトシの元バディでシゲルのライバルとしては悔しい以外の何物でもない。

    「正規の隊員であるハジメさんには悪いですが、サトシの場合はポケモン協会からの要請なんですよ。明け透けにいえば実積作りですね」
    「実積作り?」

    首を傾げたゴウに、シゲルは苦笑して頷いた。

    「これはまだサトシ自身にも知らされていないことなので、完全オフレコでお願いします」

    そう前置いて、シゲルは口をひらいた。

    「今、ポケモン協会ではサトシをポケモンマスターとして認定しようという動きがあるんです」
    「マジでっ⁉」

    シゲルの言葉に、ゴウは飛び上がらんばかりに驚き目を見開いた。
    ぐうっと近づいてきたゴウの顔を押し返し、鬱陶し気に顔をしかめたシゲルを他所にゴウの目はらんらんとシゲルに固定されている。

    「ああ、サトシの今までの功績はポケモン協会としても無視できないものになってるんだ。更に各地方のチャンピオンや有識者との繋がりも多く、彼らからの強い推薦もあったようだね。加えて、既に地方チャンピオンでありPWCSでの優勝経験もある。ポケモン協会としても、ポケモンと人との関係の理想形として、サトシを推したいということかな」
    「な、なるほど……」
    「でも、それならレンジャーユニオンに所属する必要はないんじゃないかな? 彼の実積は協会の認めるところなんだろう?」

    驚きで半ば放心状態のゴウを他所に、ハジメはシゲルの言葉を聞いて首を傾げた。

    「協会は認めています。必要なのは、民衆に向けての実積ですね。リーグ戦績は問題ないにしても、その他のサトシの功績はともすれば世間に公表できない、機密性の高いものが多すぎるんです」
    「そんなにかい?」
    「ええ、ですから現段階でサトシをポケモンマスターと認定すれば、世間から批判を受けるか、ポケモンマスターの定義をバトルの強さによるものと誤認させかねないと、協会は危惧しているんですよ」
    「なるほどね。だからこそ、今は世間に公表可能な実績をサトシくんに積ませているわけだ」
    「サトシには、このことは秘密にしています。純粋にポケモンレンジャーの手伝いするうえで、面倒な手続きを省くために嘱託扱いで所属していると思ってます。アイツはこういう打算事は苦手ですからね」
    「サトシくんらしいね。君が知っているのはオーキド博士経由かな?」
    「ええ、まあ。サトシの後見人としてオーキド博士に話しがいって、それをサトシから相談を受けていた僕が聞いたって感じです」

    シゲルの説明に、ハジメとゴウは納得いったように頷いた。
    ゴウは恨めし気にシゲルを見てしまったが、それは甘んじて受けて欲しい。

    「さて、サトシのレンジャー活動の説明についてはこの辺でいいでしょう。本題に移りましょうか」
    「そうだね」

    シゲルの言葉に、ハジメは表情を引き締めると手元のスマホを操作した。ほどなくして、シゲルとゴウのスマホにデータが送信される。

    「今送ったのは、サトシくんが怪我を負う直前に請け負っていた任務の最終報告書だ。先にツルギさんから送られているものより詳細に記載されている」

    ファイルを開くと、ポケモンレンジャーの報告書が表示され、目を通すゴウとシゲルに向けてハジメが説明を加える。

    「任務は色違いのゾロアの保護だった。卵の状態でポケモンハンターから保護されたんだが、その途中で孵化してね。生まれたのが色違いのゾロアだったものだから、親元に返すにも、ただ戻すだけではまたハンターに狙われかねない。親子ともども自然保護区へ移す道中の護衛が任務だったんだ」
    「じゃあ、サトシの怪我はその途中でハンターに襲われて」
    「いや、任務は問題なく完了した。道中で確かにポケモンハンターとは出くわしたけど、僕とサトシくんで問題なく対処できたし、彼もとくに怪我をしてはいなかったんだ」

    ハジメの説明に、え?っとゴウは資料から顔を上げる。

    「僕らは無事ゾロアと母親のゾロアークを自然保護区へ移送し、保護区の管理者に引き継いだ後、本部へ任務完了の連絡を入れて別れた」
    「それって……」
    「現地で僕と別れた後に、何かあったということだ。自然保護区の管理者によると、サトシくんは僕と別れたあと、もう一度保護区の中に入った記録がある。彼に何かあったとしたら、そこだ」
    「なるほど、だから貴方がたレンジャーユニオンの方でもサトシの異変に気付くのが遅れたわけですね」
    「面目ないが、その通りだよ」

    自然保護区の中は出来る限り手つかずのままの自然を残しているが、サトシほど旅慣れした者であれば何の問題もない。管理者は保護区に入るサトシを見送ったあと、自分の仕事に戻っている。

    「サトシくんが帰る際に管理所へ連絡をもらう約束だったらしく、その後、きちんと管理所にサトシくんのスマホから帰ると連絡があったらしい。ただ、連絡はもらったが直接姿を見たわけではない」
    「サトシのことだ、正規ルートで帰っていない可能性もありますね」

    サトシは今回リザードンを連れていたようなので、空から帰ったということもあり得る。その他にもいくつかサトシは移動手段を持っており、その内のどれで帰ったかで想定されるルートも変わるだろう。

    「でも発見されたとき、サトシのポケモンたちは全員ボールに収まった状態で石化してた。もし空から帰ったにしても、一度は地上に降りてるはずだ」

    サトシは足を撃たれていた。逃げ足を封じるためだろうが、それはつまり地上を走って逃げるだけの場所だったということだ。

    「サトシくんはソウリュウジムの近くで発見されたんだよね? あそこは同じイッシュ地方とはいえ保護区から少し離れているだ。地形上、途中で山を越えないといけないはずだから、イッシュチャンピオンがサトシくんを連れて移動したとしても、かなりソウリュウシティ寄りで負傷してたはずだ。その辺なら目撃者もいそうだけど、見つからなかったのかな」
    「ええ。ソウリュウジムジムリーダーのシャガさんの話によると、少し前に見たときは誰もいなかった場所に二人が倒れていたそうです。まるで突然その場に現れたかのようだったと」
    「それはまた……」
    「可能性としてはテレポートか?」

    シゲルの言葉に、ハジメは興味深そうに顎に手をやった。
    確かに、一番可能性がありそうなものは、エスパータイプの技であるテレポートだ。
    だが、ゴウたちの知るかぎりサトシのポケモンにもアイリスのポケモンにもテレポートが使える仲間はいなかったはずで、となると野生のポケモンとなる。

    「サトシはキャプチャースタイラーを支給されていたんですか?」
    「いや、サトシくんは正規の訓練を受けたわけではないからキャプチャースタイラーは渡されていない。彼の仲間は十分に強いし、彼らだけでもレンジャーの任務に支障はないからね」
    「じゃあ野生のポケモンの力を借りてってのも無理……いや、でもサトシだからな……」

    シゲルの呟きに、ゴウもそっと遠い目になった。
    野生のポケモンたちは基本的に人の指示には従わない。気性の荒いポケモンは縄張りに近づくと襲ってくる可能性が高く、穏やかなポケモンであれば人には近づかず隠れてしまう。野生の生き物なのだからそれは至極当然のことであるが。稀に友好関係を築ける人間もいる。ゴウの知るその最たる者がサトシだった。
    バディを組んでいたころから思っていたが、彼は本当に自然にポケモンと打ち解ける。どんなポケモンとも友達になれると信じて疑わない姿勢からか、こっちがヒヤヒヤすることも度々あるが、大抵その地を別れる頃には仲良くなっていることが多い。
    考え込むシゲルとゴウだったが、それを止めたのは困惑顔のハジメだった。

    「水を差すようで悪いんだけど、この保護区にテレポートを使えるポケモンはいないんだ。絶対とは言い切れないが、可能性は極めて低いと思う」
    「そうですか。となると……」

    サトシたちが現れたのはもっと違う手段ということになる。

    「他に気になる点はありませんでしたか? 移動中にトラブルに見舞われたりは?」
    「件のハンター以外はなかったね。ゾロアたちは、最初は人を酷く警戒していたんだけど、最終的にはサトシくんと友好関係を築いていたよ。別れ際にゾロアは随分と別れを惜しんでいたし」
    「そういえば、ゾロア達はどうやって移動したんですか? 野生ってことはボールに入れてないんですよね。色違いのゾロアを連れて歩くなんて随分目立ったんじゃ?」
    「そこはゾロアとゾロアークの能力を利用させてもらったよ。マメパトに変身してもらっていたから問題はなかった」
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