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    フィンチ

    @canaria_finch

    🔗🎭を生産したい妄想垢

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    フィンチ

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    🔗←🎭前提、とある夜の🐏と🎭(notCP)
    配信者設定、某コラボ配信のDaddyネタのお話

    #Sonnyban
    sonnyban

    fraidy catの秘事 月明かりの下をステップでも踏むかのように楽しげに歩いていく影がひとつ。そしてその少し後ろをゆったりとついていく影がもうひとつ。
    「ジュースで酔ったかアルバニャン、足下には気を付けろよ」
     呆れた風な物言いではあるが、どこか気遣うような響きにアルバーンは振り返らずに応える。
    「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
     にゃははと笑い混じりの言葉に返ってきたのはやれやれといったふうな溜め息の気配。だがそんなことも気にならないとばかりに、アルバーンはまるでターンでもするかのようにくるりと振り返ってみせた。
    「ちょっと楽しくなっちゃっただけだって!ファルガーだって楽しんでたじゃん」
     今夜は友人達と集まってコラボ配信なんてものをしていたわけだが、面子が面子なだけに少しばかり過激なおふざけで盛り上がってしまった自覚はある。昔からあるカードゲームでよくもまあそこまでと言われればそうなのだが、そこにちょっとした罰ゲームを加えればエンタメとしてはバッチリだ。際どい台詞もなんのその。ノリの良さでどんどんと内容はエスカレートしていき、ファルガーに絡みに絡んだ結果、その仲に妬いてお怒りの浮奇・ヴィオレタなんて存在も盛り上がりの一因になった。
     実際嫉妬はあったのだろうが、わざわざリアルタイムにSNSでそれを発信するあたりパフォーマンスとしてのってくれたことは明白。だから、それならばと煽った自覚はある。悪ふざけの延長、ちょっとした見世物として修羅場の真似事をしてみただけ。
    そのはずなのに、自分の口から出た言葉に誰より驚いたのはアルバーン自身だ。
    『君が僕のものに手を出すなら、僕は君のものに手を出すよ!』
     自分のもの?誰が?名前を出さなくても誰のことを指しているかは分かりきっている。流れとしてもおかしくはない。このおふざけは、【嫉妬したアルバーンが浮奇に仕返しをする】というものなのだから。なら何をそんなに驚いたかといえば、意図せず彼のことを【自分のもの】と発言してしまったことに対して。これは仕返しなのだという宣言までは考えてのものだけれどその後は違う。勢いで出た言葉だからこそ動揺した。そんな台詞をアルバーンは用意していない。
     被せるようなファルガーの言葉を大袈裟に笑い飛ばすことで一瞬の揺らぎは隠し通せたはず。おかしなコメントも見かけはしなかったし、友人達ともイイ雰囲気のまま別れることができた。そう、今いるひとりを除いて。
     何か言ってくれれば誤魔化せるものを、先ほどかけられた言葉以外はただ黙ってついてくるものだから困る。いっそ口に出してしまおうか。どうせ気付いているのだろうし。なによりこの沈黙にもう耐えられそうにないと、アルバーンは歩みは止めずに取り繕った明るさで口を開いた。
    「浮奇怒ってるだろうな~、ファルガーもちゃんと謝ってよ?」
     愉し気な口調に深刻さはない。割り切ってノってくれたのだという信頼があるから。顔をあわせて謝るつもりはあるが、それも日常会話の一部としてのこと。
    「やれやれ、俺を巻き込むなよ」
     とはいえ、まるで他人事のような返事をされればあからさまに呆れた声も出てしまう。
    「はぁ?当事者ですぅ」
     軽口を叩いている方が落ち着いていられるというのもあってわざと不服そうに咎めるも、目の前の男は何処吹く風といった様子。
    「言っただろう、浮奇も楽しんでるって」
    「それはそうだけど…」
     確かに、ファルガーは配信中にもそう口にしていた。アルバーンとしてもそうだろうとは思っていたが、ああも確信を持って実際に言葉として配信にのせることはできない。それを出来るだけの繋がりが少しだけ羨ましく感じる。
     そんな風に思えたらどんなに良かったろう。そう思えていたなら、ここまで気にすることはなかったのだろうか。思い浮かぶのはただひとり。彼、サニー・ブリスコーのこと。
     揺らぎ始めた心につられ、アルバーンの足取りも徐々に重くなっていく。
    「じゃあ…さ、サニーは……どう思ったかな?」
     この名はそんなにも呼びにくかっただろうか。たった一度、しかも本人がいないところで口に出しただけだというのに酷く喉が渇く。触れてしまえば、話題にのぼらせてしまえば意識せざる負えない。
    「巻き込んじゃって怒ってるかな?あ、でも、配信を見てたかも分からないもんね。それなら謝りに行ったらなんのことって聞かれちゃうか。えぇ、どうしよ」
     返事がないのもお構いなしに、まるで独り言のようにつらつらと言葉が出てくる。そして、口に出せば出すだけ得体の知れない感覚が体中に広がっていくこともアルバーンは感じていた。なんだろうこれは、落ち着かない。
    「まあでも、知らないままなんてないか~、見てなくてもそのうち耳に入るだろうし!」
     そうだ、遅かれ早かれ知られることにはなるのだから結局は時間の問題。その時、彼はいったいどう思うだろう。呆れる?妬いてくれる?それとも…
     ひとつの可能性にたどりつき、ゾクリと背筋を駆け抜けた感覚にアルバーンの足はぴたりと歩みを止めた。
    「ていうかさ、別にサニーには謝るようなことなんてしてなくない?もうこの際しらばっくれちゃおうかな、なーんて。だって、僕悪いことなんかしてないし?ちょっとふざけてただけだもんね!」
     不自然に明るい声が震える。なんと言ったところで不安は拭いきれず、言い訳じみた言葉だけが虚しく夜の空気に溶けていく。嫌われたくない、今まで通りでいたい。でもそれ以上に、なんとも思われないかもしれないことが怖くて怖くて仕方がない。
    「……サニーなんて」
     少しの沈黙を置いてそう呟くと、アルバーンはその場でゆっくりと振り返る。

    「僕のこともっと好きになっちゃえばいいのに」

     笑って続けられたその言葉への返事は大きな溜め息。そして、少しばかり空いていた距離をファルガーが詰めたかと思うと、いささか乱暴な手つきでアルバーンの頭はぐしゃぐしゃと撫でられた。
    「なんつー顔してんだお前は」
     かけられた言葉に視界が滲む。ダメだ、泣くな。一度崩れたらそこでおしまい。戻れなくなる。込み上げる感情をぐっと抑え込むように唇を引き結び、アルバーンは俯いたままで呼吸を整えると、先ほどまでの様子が嘘のようにニィッと笑って顔を上げた。
    「優しいんだ。慰めてくれるの、Daddy?」
     それは配信中にも使った呼び名。茶化したような物言いに潜ませた意図に気付いてか、ファルガーもそれに応じた言葉を返す。
    「ハッ、良い子はねんねの時間だろ、Baby」
    「だーかーらっ、赤ちゃんじゃないってば!」
     ムッと拗ねたような態度もよくある光景。これでいい、『アルバーン・ノックス』はそれでいい。
     再び軽快な足取りで歩き出したアルバーンからは、遅れてついてくるファルガーの表情は見えないがそれで構わなかった。どんな表情で見られていたとしても、どう対応するのが正解なのか今のアルバーンには判断ができないから。それならば知らないまま、気付かないままでいさせてほしい。

     どうか、この夜のことは秘密にさせて。
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    フィンチ

    DONEふわっとしたMHパロ、ガノレク🔗×アイノレー🎭の馴れ初め
    仲良くなれるかな? とある村のアイルーキッチンで働き始めたアルバーンには悩みがあった。仕事自体は新入りということもあって覚えることも多く大変ではあるが違り甲斐がある。コック長は厳しくも懐の大きいアイルーであるし、手が足りてないようだと働き口として紹介してれたギルドの職員も何かにつけて気にかけてくれている。それならばいったい何が彼を悩ませているのかというと、その理由は常連客であるハンターの連れているオトモにあった。
    「いらっしゃいニャせ!ご注文おうかがいしますニャ」
    「おっ、今日も元気に注文取りしてるなアルバにゃん」
    「いいからとっとと注文するニャ」
     軽口を叩きながらにっこりと愛想の良い笑みを浮かべてハンターを見上げるアルバーンは、傍らに控えているガルクからの視線にとにかく気付かない振りをする。そう、このガルクはやってくるとずっとアルバーンを見てくるのだ。しかも、目が合っても全く逸らさない。ガルクの言葉など分からないから当然会話も成立しない。初めて気付いた時には驚きつつもにこりと笑いかけてみたのだが何か反応がある訳でもなく、それはそれは気まずい思いをした。だからそれ以来、気付かない振りをして相手の出方を窺っているのだが、今日も変わらずその視線はアルバーンを追っているようだった。
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