黒猫は砂糖菓子の夢を見る。うろうろ。
うろうろ。
「一体いつになったら帰ってくるんだ!」
物音がする度に玄関が開かれることを期待すること数回。水心子は飼い主に対する不満を口にしてしまった。いつもだったらとっくのとうに帰ってきて遊んでくれるのにその気配すらない。水心子はペットショップの売れ残りだった。血統書付きで可愛い盛りの子猫といえば誰でも飛びつくだろうと思いきや水心子にはいつまでたっても買い手がつくことがなかった。なのに買い手がつかなかったのは飼い主の都合である。水心子は知らないが飼い主と水心子の出会いは今から3ヶ月前。そしてそれから3ヶ月経って水心子は今の飼い主に迎えられた。
水心子の飼い主はモデルという職業をやっているらしく仕事の時間はサラリーマンと違ってとても不規則だ。なのに水心子を大切にしてくれている。夜遅くなる時はご飯を用意してくれるし、仕事の合間にビデオ通話もしてくれる。とても優しい飼い主だ。なのに今日に限ってそれすらない。思わず悪い方向に想像してしまったがそれは無い。清麿に限って自分を捨てるなど。
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