綿の恋 ごろさめはお腹に綿の詰まった村雨礼二です。同じ村雨礼二だというのに、ごろさめは人間の村雨礼二のことがあまり好きではありませんでした。
クーラーの風が冷たく、ごろさめは手近にあったぬくもりへ潜り込みました。あたたかで若干の窮屈のあるそこは、圧迫による熱伝導が丁度よく、ごろさめの内側の綿までほかほかと温かくなるのです。
「おい、そんなとこ入んなって」
「ごろ!」
ごろさめは初めて見たときからこの男が大好きになりました。優しくて少し弱くて大きくてあたたかい男の名前は獅子神敬一と言います。
ごろさめは獅子神のこの場所が大のお気に入りでした。獅子神の胸元は幸いにもよく開いておりましたので、入り込むのも容易です。毛糸で編まれた衣服と、しっとりと湿る獅子神のふたつの強靭な胸筋は安定感があり、早めの心音を聞いていればそれだけで眠くなってしまいます。
4620