クロディだよ 紅い空を背にした球形の亡びが、不気味な鳴動を響かせながら明滅を繰り返す。男の形をした兵器は、宇宙を崩壊させる紋章を庇うように立ち塞がっていた。
三十六億年前の亡霊に、クロードの声は届かない。当たり前だ。愛する娘の声すら聞き入れることが出来ないほどに、妄執を宿した兵器は壊れていた。面識などないに等しい、何の思い入れもない第三者の声が届く筈もない。
それでも、声を上げられずにはいられなかった。
長く赤い前髪の間から覗く、まるで温度を感じさせない無機質な翠の双眸が、煩わしげに細められる。兵器の放った紋章術で激しく震える床が、距離を縮めようとしたクロードの行く手を阻んだ。すぐに剣を構えて跳躍したものの、動きを読まれていたのか切っ先が届く前に逃げられる。その上、兵器が指揮者のように腕を振り上げただけで、着地したクロードを衝撃波が襲った。
4371