クロディ5話目② 傾きかけた陽射しが、鳥の囀りも虫の鳴き声も聞こえない深い森に降り注いでいる。木立の奥にはまた別の木が幾重にも連なり、森の終わりが見えない。何処からともなく漂ってくる花の香りは、レナの家の窓から見た白い花に似ていた。
道すがら屈んでは名前も知らない花を手折る。村長に渡された教会の花と束ねると、少しずつ素朴な花束が出来上がっていった。死者を慰めるという名目で花の命を摘み取っては、死を重ねて束ねるという行為はクロードを少しだけ不思議な気持ちにさせた。
斜陽の森を更に深く進んでいく。西日に輪郭を滲ませた木々は、神々しく光り輝いて見えた。足元の緑の絨毯には白い花びらが疎らに積もっている。近くの高木を仰ぐと、レナの家の近くで見た白い房状の花が咲いているのが見えた。風が吹くと花がぱらぱらとこぼれ落ちてくる。まるで雪のようだ、とクロードは思った。
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