パレイドリア 斜陽で紅く染まった一室に、戦艦の駆動音が重々しく鳴り響いていた。
話し合いの結果、次の目的地をミルマーナに定めると、集まった仲間たちは散開していく。次々と部屋を後にする背中を、椅子に逆向きに腰掛けたままのエルクは、背凭れに頬杖を突いて見送った。その視界の端を、鮮やかな赤色が掠める。翻るアークの鉢巻きだ。
インディゴ染めに似た濃紺の、極東の島国の伝統的な衣服に包まれた背中を見るともなしに見遣る。一族の血で大地を濡らし、穢れた炎で故郷を焼いた仇として、追い続けた背中が、手を伸ばせば容易く届く距離にあった。
「視線がうるさい」
抑揚を欠いた、平坦な声が鼓膜を震わせる。
残照を透かす赤銅とも真鍮ともつかない金属めいた煌めきに輪郭を滲ませたブルネットが閃くと、振り返ったアークと視線がかち合った。いつもは春を待つ枯れた冬の森に似た色の双眸が、今は夕焼けを宿して炎の名を冠する蛋白石のように揺れている。かつて、ピュルカの集落に灯され続けた篝火のような燦めきだ。今は失われた故郷の光だ。
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