虫の香り。虫の香り
すりりと嬉しそうに寄せた身。
暖かくて、柔らかくて。良い匂いがするが口が裂けてもそれは口にしない。
かという自分は。
冷たくて硬い上に、足と左手は虫のそれだ。先は鋭く、容易く誰かを切り裂けるだろう。
だというのに。
「きみも本当趣味が悪いと思うよ。こんな虫にくっついていたい、だなんて」
「…だって落ち着くんだもん…オベロンの隣は気を張らなくていいし…この匂い…好きだから」
「虫の匂いが好きねぇ…」
ハッ、と鼻で笑ってさっきからベッドの上で自分にくっついたままのリツカの趣向をばかにするよう男は告げる。
ほんっと、好みがおかしいと思う。
花や果実の香りならまだわかるが、虫だぞ。虫。
「んー…自分の匂いって、意外と自分じゃわかんないものだよ…
1147