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    Jack

    @Junk_Xy_

    夢。R系統のものや描きたいものを描き投げる所。
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    Jack

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    ヨクサル夢
    書きかけの進捗置き場
    夢主名前×××表記
    気が強めの女の子です

    ##すりーぷうぇる

    a波音が遠くから寄せては返し、白い砂浜が真昼の太陽に照らされ、きらきらと眩い光を放っていた。空気はじっとりと重く、じりじりと肌を焼くような暑さが、そこに立つ四人の身体を包み込む。
    サクッ、と軽やかな音を立て、彼らは甲板から砂浜へと飛び降りた。その背後には、旅を共にしてきた海のオーケストラ号が、波間に揺れながら停泊している。

    フレドリクソン、ロッドユール、ヨクサル、そして遥か未来、ムーミンパパとなるムーミン――四人は新たな島の地を踏みしめ、潮の香りに混じる未知の気配に、無言の期待を寄せた。

    「数日間、この地で準備を整え、次の航海に備えようか。」

    フレドリクソンがそう告げると、それぞれは違う足取りで砂浜を離れ、島の奥へと散っていった。出航までの僅かな時間、自由に己の時間を過ごす様に。
    フレドリクソンは街へ機械の部品を買いに。
    ロッドユールは新たなボタンに出会う為、フレドリクソンと街へ。
    ムーミンは心躍る冒険の始まりを掴む為に洞窟へと探検に。
    さて、ヨクサルはと言うと、特にする事も無く海岸沿いを歩いていた。

    ポケットに手を突っ込み、ヨクサルはどこか気怠げな足取りで砂浜を歩いていた。陽は高く、燦々と降り注ぐ陽光が肌を焼くように突き刺さる。潮風が熱を孕んで吹き抜けるたび、長い旅の疲れを少しだけ癒すような気もした。

    目を細めながらぼんやりと海を眺めていたその時、不意に微かだが確かに耳に届く、掠れた声があった。

    「うぁ……ぐ、…」

    呻くような、かすかな息遣いだった。それが人のものだと気づくのに、時間はかからなかった。

    足を止めて辺りを見渡す。波の音と風のざわめきの中、目に飛び込んできたのは、岩陰に倒れるようにして身を横たえる少女の姿だった。ぐったりとしていて、まるで意識を失っているように見える。
    ヨクサルは眉をひそめた。こういうのは、あまり好まない。面倒だし、手間がかかるし、場合によっては厄介事に巻き込まれることもある。でも、それでも見て見ぬふりはできない性質だった。
    躊躇いがちに足を踏み出し、少女に近づいてそっと声をかける。

    「やぁ、大丈夫かい?」

    かすかに目を開いた少女が、こちらを見た。

    「……大丈夫だと思う?」

    返ってきたのは、冗談めいた返事だった。だが、その声は弱々しく、まるで体の芯から力が抜けてしまったような響きを持っていた。

    「いいや、全く。こんなところで寝るのはやめておいた方がいいと思うぜ。干からびるよ、君」

    少女は小さくため息をつき、ゆっくりと瞼を閉じた。その肌は日差しに焼かれ、うっすらと赤みを帯びている。呼吸も浅く早く、まるで熱に浮かされたようだった。

    このまま放っておけば、本当に命の危険すらあるかもしれない。一瞬だけ迷ったあと、ヨクサルは少女の肩に手を伸ばし、軽く揺さぶった。

    「立てるかい?」

    「……無理」

    まるで蚊の鳴くような声で返された返事に、彼は肩をすくめて笑った。

    「なら、少しだけ頑張ってくれ。おぶってやるから」

    そう言って彼女の手を取る。熱い。まるで炎に包まれているかのように高い体温が、手のひら越しに伝わってきた。
    ゆっくりと身体を起こさせ、ヨクサルはしゃがみこんで背中を向けた。少女は一瞬だけためらったようだったが、やがて観念したように、そっと彼の背に身体を預ける。

    「……ごめん」

    掠れた声に、ヨクサルは笑って、軽く肩を揺らした。

    「ふっへっ、貸一で良いさ。いずれ返してもらうから、覚えておくといい」

    彼女の体温がじんわりと背中に染み込んでくる。それはまるでカイロを貼り付けられたような暑さだった。

    少女を背負ったまま、ヨクサルはゆっくりと歩き出す。自分の船へと続く、先程歩いてきた道。

    このまま街まで出れば医者を探すこともできるだろう。しかし、それには時間がかかる。今は一刻を争うかもしれない。ならば、自分の船に戻った方が早い。

    ちょうど、フレドリクソンが戻っている頃かもしれない。あいつなら看病も慣れている。特に、あのムーミンときたら、困っている人を放っておける性格ではない。そんな光景を思い浮かべて、ヨクサルは再び小さく笑った。

    「……まったく、旅は予想外ばかりだな」

    誰に言うともなく、呟いた言葉が風に攫われていった。

    - - - - - - - - - - - - - - - - -

    船の姿が視界に入る頃には、背負っていた少女の意識はすっかり遠のいていた。
    背中に感じる体温はなお高く、首筋にかかる熱く荒い息遣いが、かろうじて彼女の生きている証を伝えていた。その吐息一つひとつが、まるで命綱のように思えた。

    船の足場に辿り着くと、ヨクサルは背中の少女をそっと横抱きに抱え直し、そのまま慣れた手付きで船へと足を踏み入れる。少女の身体は思ったよりも軽かった。だが、その軽さがむしろ、彼女の状態を物語っているようで、何とも言えない不安が胸の奥にじんわりと滲む。

    操舵室に入ると、使い慣れたソファに少女を横たえた。火照った頬にかかる髪をかき分け、少しでも風が通るようにと窓を開け放つ。扉も半分ほど開けて、船内に海風を呼び込んだ。熱のこもった空気を少しでも追い払おうとするかのように。

    「……おい」

    彼女の肩を軽く、トントンと叩いてみる。返事はない。微かに眉をひそめたまま、まるで深い眠りに落ちてしまったかのように身じろぎもしない。

    「(これは、ちょっとまずいかもしれないな…)」

    そう思った矢先、下のデッキから大声が響いてきた。

    「ヨクサル! 買ってきた荷物を船に載せるのを手伝ってはくれないか!」

    フレドリクソンの声だった。その隣にはロッドユールもいる。彼らが手にしているのは、部品やボタン、乾物や野菜など、船旅に必要な細々とした生活物資の数々だ。
    ヨクサルは手すりに肘をかけて覗き込み、大声で返事をした。

    「悪いがちょっと後回しだ、フレドリクソン。女の子を拾ってきた。今、操舵室で寝かせてる。様子見てくれないか? 意識が無くてな」

    「なんだと?」

    フレドリクソンは目を大きく見開き、荷物を放り出して慌てて船に駆け上がってきた。ヨクサルが操舵室の方向を指さすと、彼は「ああもう」とぶつぶつ言いながら向かっていく。

    「本当に拾ってきただけじゃないか……まったくもう。これは日射病か、あるいは熱射病か……飲み水はどこだったっけ? 服も緩めてやらなきゃダメだろう、これは……可哀想に」

    その言葉を背中に聞き流しながら、ヨクサルはロッドユールと共に船の荷揚げを始めた。買い込んだ荷物は思っていた以上に多く、地味に骨が折れる作業だった。

    「ロッドユール!」

    「あっ、うん、僕も手伝うよ!勿論ね!でも、その……女の子、大丈夫なの? ああいや、まさか……死んでなんか……いないよね?」

    「さぁね。でも、死んではいないと思うよ」

    「ひええ……」

    震えながらも、ロッドユールは文句を言わずに作業を続ける。どうにかして全ての荷物を船内に運び終えた時、背後から陽気な声が響いた。

    「みんなー! 聞いておくれよ! すごいことがあったんだ!」

    ムーミンだった。目を輝かせながら走ってくるその姿に、ヨクサルが半分笑いながら返す。

    「へぇ、それってどんなの? 何か良いことがあったかい?」

    「そりゃああったさ! 危険な怪物と戦って、それで、すごいお宝を見つけたんだ!」

    「それはそれは。……こっちも、なかなかの“拾い物”があったんだよ」

    「拾い物?」

    興味を引かれたムーミンとロッドユールが、揃って船に乗り込んでくる。ヨクサルが操舵室を親指でくい、と指すと、ムーミンはゆっくりと歩を進めていった。

    中には、ソファに寝かされた少女が静かに息をしている。彼女の顔を覗き込んだムーミンは目を丸くした。

    「わぁ……女の子? 本物の?」

    その後ろから、ロッドユールもそっと顔を覗かせる。彼はムーミンの背に隠れるようにして、おそるおそる尋ねた。

    「具合悪そうだね……起きたらどうする? もし、悪者だったりしたら……」

    「そうしたら、僕が容赦しない!」

    「まぁ、多分ね。そいつ、性格は悪いけど、悪者ってほどじゃないと思うよ」

    ヨクサルがそう言って肩を竦めると、ムーミンとロッドユールは同時に小さく「ふぅ」と息を吐いた。騒がしい船の中、ただ一人、少女だけが眠ったままだった。

    - - - - - - - - - - - - - - - - -

    かきかけ
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    Replies from the creator

    Jack

    PASTレムえむ
    甘くないです
    なんならマイナス寄り
    lie like「あはは、どうでしたかね」

    それが彼女の口癖だった。へらへらと笑顔を浮かべて、少し気まずそうに軽く頭を掻く。本人は気付いているのか分からないが、エムは嘘をつく時に目を瞑ったり、斜め下に視線を逃がしたりする癖がある。あぁ、また目線が下に向いた。そんな事を思いながら、皆に囲まれて談笑する彼女を少し離れて見ていた。

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    重い身体を動かして、箒に乗る。朝から付きまとわれた堅苦しいインタビューや報道から逃げる様に、空に向かって地を蹴った。ふわりと身体が浮かんで、あっという間に木々の上。もうすっかり太陽は傾いており、夕方を知らせる。空は橙色と薄ら青のミルクたっぷりのカフェオレの様に混ざっていて、雲とのコントラストが綺麗だった。『彗星の魔導師』としての仕事が終わる。こんな日は早く帰って大好きな甘いものでも食べてしまおう。そう思って飛ぶ速度を上げた時だった。ふと下を見れば異世界から飛んできた彼女が1人歩いていた。特に何も用事は無かったものの、少し彼女に声を掛けたくなって、高度を下ろす。彼女の後ろに回り、音を立てないように箒を降りたつもりだったが、彼女は此方を振り返った。
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