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    ex41666093

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    ex41666093

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    書けないけど、途中は好きだったので供養

    静かな夢を見た(供養)ネロアキ
    ネロが眠り姫
    あきらが王子 
    夢のなかにおちてしまったネロをあきらがキスでおこす。
    男前なあきらと気にしすぎなネロ
    無自覚な恋心に振り回されるねろ
    ブラッドリーへのでかすぎるおもいにぷらす晶への恋心で完全に閉じちゃう




     しずかな、しずかなうみのゆめをみた。

     昏く、どこまでも続きそうな海を前にネロは辺りを歩いてみることにした。
     潮の香り、砂浜の足を奪われる感覚、波がどこかでぶつかり合い、それが音として耳に入る。
     上を見上げても月はない。
     色がない、この世界に煌々と輝く月はいらないということか。
     ネロはしめった笑みをひっそり浮かべた。
     元相棒はこの景色を見たらどう思うのだろうか。
     つまらねェな、と切り捨てそうだ。
     ネロはこの景色が、静かな海が嫌いではなかった。
     


     起きた時には、もう海はどこにもなかった。



     窓から射し込む太陽の光にあの景色が夢であったことを悟る。
     くあ、と欠伸を噛み殺し、ゆっくりと起き上がる。
     朝の献立ーー、昨晩に仕込んでおいた卵とシュガーを絡めたフレンチトーストを焼いて、林檎を焼こう。そこに生クリームをのせてやれば、きっとお子様達は喜ぶ。
     甘いものが苦手な奴等には昨晩の残りのスープにエッグベネディクト。
     身だしなみを整えて、部屋をでる。
     キッチンに着いたときには、先客が一人いた。
     淹れたてのコーヒーの香り。カップを二つ用意して彼女はキッチンの椅子に腰かけていた。

    「おはようございます、ネロ」
    「おはよう、賢者さん」
    「コーヒー、どうぞ」
    「ありがとう」

     晶をちらりと見れば、エプロンをしっかり身に付けている。
     今日も朝食の手伝いをしてくれるらしい。
     太陽が顔を現した時間ーー、まだ魔法舎に住む多くの魔法使いは眠りについている。
     それなのに、こうして手伝ってくれる晶にネロは有り難さよりも申し訳なさを強く感じてしまう。
     
     受け取ったコーヒーは可もなく不可もない。
     舌先の苦味を受け止めながら、晶を観る。
    彼女は猫舌で、熱いものを飲むのに時間がかかる。そのコーヒーには牛乳と砂糖が含まれていて、ブラックは飲めない。
     ネロは、自分の手を見つめた。
     言わないと、無理して手伝わなくていいんだ、と伝えようと思うのにーー。

    「ネロ、今日のメニューは何にしますか?」
    「・・・今日は昨日の夜に用意していた・・・・・・」

     結局言えないのだ。
     明日からは俺がするから、その一言が今日も言えずに晶とキッチンに並んで朝食を作る。



    1 変化

    「ネロ何か食わせろ」
    「・・・・・・何もねぇよ」

     昼過ぎにキッチンへやってきたブラッドリーは、今起きたのだと言わんばかりに腹をかきながらイスにどかりと座り込む。
     生憎、昼食の片付けをしているのだ。
     用意していたドリアも野菜スープも残念ながらミスラが全部たいらげた。
     
    「おい、俺の分本当にねェのかよ」
    「ミスラが全部食った」
    「よけとけよな」
    「テメェがいつまで経っても起きてこねェのが悪ィんだよ」
    「・・・・・・なんか作ってくれよ」
    「食材きらしてる」
    「マジかよ」

     天を仰ぐブラッドリーに背後からくすくすと笑う声がした。
     ぎょっとなって振り返れば食器を運んできた晶と視線がばちりとあった。
     
    「ブラッドリー、おはようございます」
    「おう」
    「随分遅かったですね」
    「帰ってきたのが朝だったんだ」
    「それは、大変でしたね」

     ネロ、これもお願いしていいですか。晶は食器を流しにそっと置く。
     食器を洗うときは一人のほうが効率がいい。
     乾かすときは魔法を使うから拭く必要はない、と晶に告げてからは、彼女は専ら食器を運ぶ役割をつとめてくれる。
     朝、昼はネロがするが、夕食時には他の魔法使い達がしてくれる。
     魔法者の中で暮らす内にできてきたルールだ。

     それでも結局、彼女がすることが多い。

     晶に、ありがとうと告げればにっこりと笑ったあと、ブラッドリーの近くへと向かう。
     なんだよ、と頬杖ついて気怠そうなブラッドリー。

    「私の作ったものでよければありますよ」
    「お前が作ったのか・・・物によるな」
    「失礼ですね、ちょっと待っててください。
     ネロ、オーブン使っても大丈夫ですか?」
    「別にいいけど、賢者さん、何作ったんだ?」

     食器を洗う手はそのまま、いそいそと動き回る晶に声をかける。
     彼女は、できてからのお楽しみで、と告げると悪戯を企む子どものような顔をしながらオーブンの準備をする。

    「・・・それってスカイサーモン?」

     気になって、結局一度手を止めた。
     火力調節を真剣にしている晶はネロの声に反応せずに黙々と作業する。
     集中した彼女は結構な確率で人の声を聞き逃してしまう。
     過去の賢者の書いた記録に目を通す時、報告書を記入する時、猫と戯れる時、あと怪我をしないようにと魔法使い達の無事を祈るときーー。
     きゅっと唇をつぐんで、じっとオーブンと睨見合いをしたあと、気が済んだのか彼女は顔を上げた。

    「スカイサーモンとエバーチーズのちゃんちゃ焼きです」

     ちゃんちゃ焼き、ネロとブラッドリーの声が綺麗に重なると、晶は口を開けて笑った。



     出された料理をぺろりと平らげたブラッドリーは満足そうに言った。

    「美味かった」

     それに満足気に笑顔を浮かべる晶は少しばかり胸を張る。

    「よかったです」
    「ネロと料理するようになってから腕を上げたな」
    「随分上達したよ、賢者さんは」
    「ネロの指導のおかげです」
    「そんなことねぇよ。俺は何も教えてないし」
    「いえ、ネロの」
    「お前らそれ疲れねぇのか」
    「あ?」
    「テメェも賢者も似た者同士だな」
     
     くあっと大きな欠伸をするとブラッドリーは食べたあとの食器を流しに下げる。

    「賢者、なんか欲しいもの考えとけ」
    「え、なんか買ってくれるんですか」
    「ああ、いいぜ。飯の恩は忘れねぇ主義だ」
    「今度からブラッドリーが遅く起きた時には常に何か用意しとかないといけませんかね。考えときます」

     ぐしゃぐしゃと晶の髪を撫でると晶ははにかんだ。
     ブラッドリーはそのまま出ていく。
     まだ少し嬉しそうに頬を緩めた晶がブラッドリーの置いていった食器を洗っている。
     その横顔を座ったまま眺める。

    「賢者さんは・・・あいつと随分仲がいいよな」
    「ブラッドリーのことですか」
    「そうだけど」

     こんな話をするつもりはなかったのに。
     ネロの口からは勝手に言葉がついて出ていた。
     何言ってんだ、俺。
     放った言葉は取り返しがつくはずもなく、晶はネロの言葉に少し考える素振りをする。
     洗い終わった食器をきちんと置いたあと、彼女はお湯を沸かしはじめる。

    「そうですね・・・」
     
     ぽこぽこと、あっという間に沸騰しはじめたお湯の音がキッチンに響く。

    「ブラッドリーは面倒見がいいですよね。
    だからかな、つい甘えてしまうところがあるかもしれませんね」

     お湯を止めて紅茶の準備を始める。
     ネロの前にもカップを置く。
     最初の頃に比べたら随分と用意が良い。
     彼女と過ごしてきた時間の長さを感じた。

    「ネロ」
    「・・・・・・」
    「私はネロとも仲良くなれたと思っていますよ」

     顔を上げると思っているよりも近くに晶は居た。

    「近くない?」
    「近づいてみました」

     そう言ってころころと笑うと晶はネロの向かい側に座る。

    「私はネロの手伝いをして、こうして終わったあとに一緒に紅茶を飲む時間が好きです」
    「・・・お」

     俺もこの時間結構好きだよ、晶の毒気のない言葉にするりと言葉が零れそうになった。
     
     けれど、ネロの口からは最初の「お」から先は出てこなかった。
     ネロをじっと見つめる。言葉を待っているのだ。
     でも結局その続きは出てこないまま、晶がゆっくりと視線をそらした。
     汗がふきだした。
     胸がきしむ。
     期待に応えられなかった。
     あいつなら、彼女の俯いた頬に手を伸ばして何かを言えるのだろう。
     でもネロはあいつではない。
     何も浮かばなかった。
     頭の中が真っ白で次の言葉がまるで出てこない。
     サイアク。
     今すぐこの場を立ち去りたい。
     彼女の、晶の前から姿を消したい。

    「ネロ、私はネロのことが好きですよ」

     頬に触れた指先は、冷たかった。
     細い指がつぅ、とネロの頬を、それから唇に伸ばされる。眼の前の晶はきらきらとした目をしていた。


     
     

     

     
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