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    ex41666093

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    ex41666093

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    悪い女で使おうと思ったけど、使えそうにないな、と思い供養のため投稿します。
    1度シブで投稿しましたが、お蔵入りさせていただきました、なむなむ
    でもね、このボスに夢見てる感じ読み取ってほしい(笑)

    悪い女 1.5「おう、晶」

     どかりと隣に座ったブラッドリーは空を見上げる晶に倣って同じように首を上げる。
     満点の星空に、ほとんど満月に近い形の月がどんと空を照らしている。



    「なんか寂しいですね」
    「あ? なんがだよ」
    「月がほら、今まで満月だったじゃないですか」
    「呑気なもんだな」

     くぁっと大きな口を開けて欠伸するブラッドリーにくすくすと晶は笑う。
     笑う晶を横目で見て、ブラッドリーがごろりと腿の上に頭を預けてきた。
     
    「貸せ」
    「高いですよ」
    「言うじゃねぇか、お前」
    「あはは、髪触っていいですか」
    「好きにしろ」

     素っ気ない。でも、いつかは拒まれたのに受け入れくれたことに、胸がじわりと喜びに満たされる。
     ブラッドリーの硬くてしっかりした髪に手を埋める。

    「あんま乱すなよ」

     今更だ、晶は触れる。
     目を閉じて、それを受け入れるブラッドリー。
     とても、穏やかな時間だった。晶が欲しいと思っていた彼との時間だ。

    「ブラッドリー」
    「・・・んだよ」
    「ちゃんと起きてくれますか?」
    「さあな」

     明日は最後の賢者のお仕事だ。実際はドレスを着て、夜会に出て魔法使い達とダンスをする。仲のよさを各国へとアピールして、魔法使いと人間の関係が少しでもよくするための活動。
    それが晶の、最後の仕事の内容だった。

     だから、本当にブラッドリーとネロにあの晩告げたように、思い出作りの一つでもある。

     最後の夜までに、ブラッドリーに抱かれなかった場合、晶はこの世界を去ることを受け入れるつもりだ。
     心が欲しい、そう思ったときに、自分も何か大切なものを賭けなければいけないと思った。
     だから、晶は今自分の心にある一番大切なものが、この世界の友人であり、この世界で生きた賢者であった真木晶だったので、それらを差し出そうと決意した。

     賭けるなら、ちゃんと対価に見合ったものを用意しないと。
     晶の言葉に、フィガロは嘲笑う。若いね、と。ここにいればいつかは手に入れることができるかもしれないのに、賢者様はそれでいいの? と。

    「ブラッドリーは全部終わったら何がしたいですか?」

     フィガロとの会話を押しやる。
     ブラッドリーは晶の言葉に閉じていた目を開けた。真っ赤な目が晶をじっと見る。

    「どうすると思う?」

     愉しませてみろ、と細められた目で語ってくる。晶はうーん、と首を捻ってから考えた。
     彼の過去とこれまでの会話を思い出してみる。ブラッドリーは、一度牢に入れられたからといって懲りるような質じゃない。
     盗賊団のボスとして北の大地で大暴れ、というのが一番彼らしいというか。
     でも、そうじゃない彼を夢見て晶は自分にとって一番嬉しい光景を語ってみた。

    「私の願望ですけど、ネロと一緒に料理屋さんしてくれてたら嬉しいですね」
    「俺様に飯屋か・・・ハハッ、お前は本当に北の魔法使いのことをどこまでも舐めてんなァ」
    「ふふ、だってネロの美味しいご飯をいつだって食べれて、ブラッドリーともお話できるんですよ、最高の環境です」
    「お前のためにやれってか?」

     にやにやと笑うブラッドリーに晶はにっこり笑って返した。

    「私のために料理屋してくれるんですか」

     馬鹿言ってんじゃねぇよ、とブラッドリーは晶の腿から頭を退かした。
     くぁ、と大きな欠伸をもう一度してから「おい、行くぞ」と腕を引かれる。

    「どこに?」
    「お前の部屋だよ」
    「どうして?」
    「寝るためだろうが、明日は朝が早いんだろ? さっと寝るぞ」

     背中を向けて先に歩き出すブラッドリーにならい連れ添って歩く。まん丸な厄災の月が恋しく感じるが、今は出ていなくてよかったと思っている。
     晶は頬がさっきから緩んだままだし、何なら顔はきっと真っ赤だろう。さっきからとても熱い。
     
     晶の薄暗い部屋のなか、ベットへと迷いなく進む。部屋の主のように腰かける。

    「ブラッドリー」

     名前を呼んでみたが、何を言えばいいのか解らずに晶は視線を彼の目から外した。
     
    「なんだよ、俺様がここにいるんだぜ? 晶、ネロにやってるようにしてみろよ。・・・できるだろ?」
      
     晶は一瞬考えた。今日のブラッドリーはとても気分がいいみたいだ。今も晶を可愛がってやってもいい、と自分から歩み寄ろうとしてくれている。
     このまま足を進めて、彼に身を任せておけば、望んでいたように抱いてくれるかもしれない。
     ずっと待てと命令されていたのに、ご褒美のように差し出された彼はとてもとても美味しそうだ。
     このままキスしても、きっと怒られることはないのだろう。
     どういう形で彼の心が手に入るのか正直今はまだ想像もできない。最後までわからないまま、晶は元の世界に帰ってしまうかもしれない。  
     寸前の所で晶は踏み止まる。

    「ブラッドリー、私の心も体も今はまだ、あげませんよ」

     支配されたい、一番簡単な方法だ。
     彼は誰かの上に立つことに慣れているし長けている。

    「私のこと、渇望してください」

     余裕なく、私が欲しいと、この目の前の強い男に言わせたい。
     子ども扱いして、晶の純情な心を一度手折ってしまったのだ。それくらいは許してほしい。
     
    「はッ、いい気になんなよ、お前が俺の心を欲しいというなら、分けてやってもいい。
     でも、俺の心を丸ごと盗んでしまおうと考えるのは、やめとけ」

     お前じゃ、無理だ。
     受け止めきれない。
     背負えねぇよ。
     言葉で役不足だ、と突きつけられる。
     だから、その言葉をひっくり返してやりたい。
     向けられた台詞を覆してもらうとき、彼はどんな表情をするだろうか。
     それにーー、まだ晶には、残された時間がある。

    「愛してます、貴方のことを」

     だから、心を丸ごと貰えるまでは何度でも紡ごうと思った。
    例え、私がこの世界をあとしに時にこの言葉が少しでもブラッドリーの心に刻まれてしまえば、それは彼にかけた呪いとなる。
    ー愛してます、愛してますと、彼に告げる。
     遺された言葉が溶けても、きっと少しは棲むことができるはず。
     ネロには抱かない、どろりとした醜い心をブラッドリーには余すことなく注いでいく。
     
    「お前の愛じゃ賄えねぇんだよ、わかれよ」
    「ブラッドリーらしくない」

     ひっそりとした寂しい声に晶は微笑う。 
     距離をつめて、つるりとした頬に手を伸ばす。硬い皮膚、座った彼を見下ろしながら、唇の横に自分のそれを重ねてしまう。

    「愛してます」

     今はまだそれだけでいい。
     細められた瞳が一体何を考えているのか、晶には、解らない。
     六百年という長い時を生き、何もかもが異なる相手なのだから。
     
    「強かで、狡猾、そんでもって強欲とは・・・なァ。こっちがお前の本来の姿ってやつか? 
    いや、恐れ知らずなのは変わってねぇか。
     晶、お前が、対峙してるのはブラッドリー様だぜ?
     その俺相手にここまで言う女は、間違いなくいねぇだろうよ」
    「少しは貴方の好みに近づきました?」
    「これで力を持つ魔女なら最高ってところだなァ」

    《 アドノポテンスム 》

     彼が呪文を呟くと、拳銃が現れた。
     握った拳銃を晶へと向ける。
     向かい合わせで、頭部に突きつけられた拳銃。
     ブラッドリーの瞳は凪いでいた。感情の抜け落ちたそこから、彼の想いを汲みとるのは、ゆはり晶にはまだできない。
     彼の思考があるのは、過去だろうか。
     それは嫌だな、と思った。
     拳銃の先、向けられた箇所を掴み、自分の口元に招き入れる。
     鉄の嫌な味が口腔を占めた。
     ブラッドリーが晶の行動に目を大きく瞠る。
     そのまま彼の指がかかる引き金に自らの手を重ねて、

    ーー躊躇いなく引き金をひいた。

     カチリ、という音だけが響く。
     
     もしここに弾が込められていたら、そう思うと今更ながらに冷や汗が止まらなくなる。
     ブラッドリーが晶の手から拳銃を引き抜く。
     晶の唾液でぬらぬらと濡れていたそれを、ぺろりと舐めた。
     赤い舌がとても艶めかしい。
     だけど、それだけじゃない。気づいてしまった。
     意識的に反らす。晶は顔にでやすいと指摘されたから。
     
    「最高にイカれてる、でも悪くねぇなァ」

     甘い甘い言葉に脳が痺れていく。

    「晶、顔上げろ」

     これまでになく甘くて優しくて、熱のこもった囁きだった。
     さっきまでの決意が全部崩れてしまいそうなほどの破壊力。
     今、初めてブラッドリーとの賭けに勝ったのかもしれない。
     言われた通りにしない晶に痺れを切らしたブラッドリーがおとがいを掴む。

    「俺を愉しませてくれた礼だ、褒美をやるよ」

     初めてブラッドリーからもらったキスは唇をかすめるだけの優しいキスだった。
     きっとさっきの仕返しだ。
     晶は期待した分を恨みのこもった眼差しで発散させることにした。
     ブラッドリーはにやにやと笑いながら、ひっそりと囁いた。

    「もう少しお預けだ」

     潔く背中をむけて、部屋を去る。
     残された晶は悶々とした気持ちを抱えたまま毛布を頭まで被った。
     

     ブラッドリーはやっぱり手強い。
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