刀に宿る付喪神な黒死牟…つまり刀剣男子な彼。 大きな溜息を吐きながら、田んぼのあぜ道を歩く。
この夏、両親が海外に赴任となり、田舎の祖父母宅で暮らすようになった。どうせなら自分も海外生活を送りたかったが、再来年には大学受験があり、両親の赴任先は治安が良くないということで、仕方なく日本に残ることになった。
都会で生まれ育った月彦にとって、バスに乗り、更に山道を歩いて通う高校生活は苦行以外のなにものでもなく、治安が悪くても両親に同行したいと強く押すべきだったと後悔していた。
家は大きいものの古い日本家屋で何かと不便であり、近所に娯楽はなく、テレビのチャンネル数も都会より明らかに少ない。読書や勉強にはちょうど良いが、何も楽しみがないのは都会育ちの男子高校生には不満しかない。
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