湯煙慕情と愛しい月 吐いて、少し楽になった気がする。それは内臓的にも感情的にも。
口の中に残る酸い胃液は洗い流した。もう一度シャワーを浴びたかったが一気に押し寄せた疲労感が布団を求めていた。
どさりと音を立てて布団に倒れ込む。汗と体液で湿った布団と未だ口腔内に残る吐瀉物の臭い。何もかもが不快である。糊のきいた浴衣でさえ汗で張りを失い肌に張り付いている。
もう少し若ければ、気持ちを確かめ合った黒死牟と……と思えたかもしれないが、今は僅かに残る酒の力に頼って眠ってしまいたかった。背中に黒死牟の視線を感じながら狸寝入りをしているうちに、いつしか深い眠りに落ちた。
『私の月に無様な姿を晒して……情けない男よ』
夢の中で自分を責める声がする。それは他ならない自分の声だった。
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