鳥の盗み聞きする人vs鳥から庇われる人「あぁ、雨が降るってよ」
窓際の壁にもたれかかりながら小休憩をとっていた5世の呟きを、ゼアは訝しんだ。
空には多少の雲があったが、それでもさほど「雨が降るぞ」という気配はなかった。晴天である。
が、空気が若干の湿り気を帯びているから、もしかしたらその可能性はあるかもしれないが「雨が降る」と断定するのは、いささか微妙なところだ。
「……とても、いい日和ですが」
護衛という従者の身で主に口答えするのはいかがなものかとも思ったが、主である5世がボケだしたのなら早期発見が望ましいと考えて提言する。
「僕もそう思うんだけどね、外の鳥がそう騒いでるんだよ」
いよいよもって5世がどうかしてしまったのかと、ゼアは息を飲んだ。窓の外を見やる5世の端正な顔つき……その視線に狂気性は感じられないが、それが尚更恐ろしいと思った。
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