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    Nora_Ma13

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    sgdzの日の出られない部屋後日談進捗

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    #小説
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    #小説進捗
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    出られたあとの話「……で、俺たちに何か言うことは?」
     自室にて、ソファに腰かけて腕を組み、正面に座る相手を見据える。
    「いや〜、えろうすんまへん」
    「ごめんね! 志賀、太宰くん!」
     もはや清々しいほどに謝罪が軽い。飄々としているようで、内に鋭いものを持っている織田と、こうと決めたら譲らない、我の強い武者。この二人が組むとここまで面倒なことになるのかと、重い溜息が出た。
     あの悪趣味な部屋から出た俺たちを迎えたのは、この二人に司書を加えた三人だった。危機に気付いて助けに来てくれたのかと思っていれば、「両想いおめでとう」とにこやかに言い放つ親友と、つかめない笑顔をうかべる織田と、申し訳なさそうな司書。三者三様の反応でわかったのは、見つけたら切り刻むと誓っていた犯人はこの三人だったという事だ。
     今は、半ば巻き込まれた形で白い本を提供することになったという司書を除いた実行犯二人と相対している。太宰もこの場にいるにはいるが、身内にあの空間でのことを見られていたと知るや否や鬱モードになり、織田の持ってきた羽織に包まって部屋の隅で沈んでいる。後でどうにか、浮上してもらわねばならない。
    「何を考えてあんなことしたんだよ、お前らは……」
     しばらく忘れていた頭痛がぶり返してきたような気さえしながら、頭を押さえて聞くと、武者と織田は顔を見合わせた。
    「何って、ねえ? 織田くん」
    「ねえ? 武者センセ。そんなん、意気地無し二人にどうにかなってもらおうと考えたからに決まっとる」
    「はたから見たら分かりやすかったもんね」
    「せやなあ。なのに、いつまでたっても、うじうじうじうじ……」
     おかしい。こちらが責めるつもりが、いつの間にか責められているような心地になってくる。織田の方は知らないが、武者の方にはいくらか愚痴を吐き出していたのは事実であり、後ろめたさがあった。
    「こうなったらいっその事、荒療治だって意見が一致して、司書さんから白い本を借りて二人きりにしようって」
    「その方が、人目気にせんでええやろうし」
    「だからってなぁ……」
     あんな気味の悪い殺風景な空間にする必要はあったのか。しかも、時間制限までつけて、危険はなかったというのに変にあせってしまった。
    「居心地良い空間にしちゃって、出てこなかったら困るからね」
    「時間制限がなかったら、お互いこじらせとるんやから、出てこられへんのとちゃいます?」
     お題と時間制限が提示されるまでは比較的のんきに構えていた事を否定できず、その上ギリギリになるまで好意を伝える言葉も出てこなかったのだから、何も言い返すことができない。さすがは各々、理解者というべきか。よく分かっているがその分、言葉の刃が突き刺さっていたたまれない。部屋の隅から「うぐ……」と声が聞こえるので、おそらく太宰もダメージを負っている。
    「まあ、そんな感じで僕たちで作戦を立てて、それぞれ飲み会を開いてね。二人が酔ったあたりで、部屋に送るていで飲み会から連れ出して白い本の中にぽいって」
    「いやあ、檀クンに気付かれんで本当によかったわ……最悪ノータイムで丸太がとび出てくるからなあ」
    「あー、経緯はわかった……」
     あの空間に入る前の記憶が曖昧な理由も、よくわかった。今回のことが計画的に仕組まれていたということも。
    「途中、どうなっちゃうかと思ったけど、お互い告白できてよかったよね」
    「ほんまですわ。……あ、そろそろ太宰クンが羞恥で死んでしまうかもしれへんから、ワシらはお暇させてもらいます」
     そうして、「ごゆっくり」なんて言葉を残して武者と織田は部屋を出ていった。自分で部屋に呼んだはずが、やっと嵐が去ったという感覚になるのは仕方がないのではなかろうか。
     小さく息を吐き、部屋の隅へ視線を向ける。未だ羽織に包まって三角座りをしたままの、想い人の機嫌とりをしなければならない。
    「太宰、大丈夫か」
     近寄って、正面にしゃがみこみ声をかけるも、身動ぎ一つすらしなかった。
    「……持ち上げるぞ」
     言って、答えを待たずに膝の裏と背を腕で支えて抱え上げる。
    「やっ、降ろせ……!」
     あの空間から出てから初めて言葉らしい言葉が返ってくる。が、もう遅い。本格的に暴れられる前に、部屋を大股で歩いてベッドに辿り着くと、その上に落とした。
    「ぎゃっ!?」
    「色気のねえ声……」
    「おまっ、お、落とすなよ!」
     がばりと起き上がり、睨み上げてくる瞳には光が戻っている。
    「元気になったじゃねえか」
     こういう負けん気が強くて、面倒なところもかわいい。そう思ってしまう時点で、重症だ。一体俺の何を見て、無関心だと思ったのだろう。
     そんな太宰は、今はこちらを睨むのに夢中で、隙だらけだ。肩をとんと押すだけで、簡単に倒せてしまった。
    「ぅわっ、なにす……」
    「あの部屋では誤解があったみたいだから、話の続きをしようじゃねえか」
     起き上がろうとする相手が、逃げられないように馬乗りになる。顔の横に手をついて見下ろすと、太宰の目が泳いだ。
    「はっ、話すような体勢じゃないだろこれ!」
    「逃げられたら困るからな」
     さすがに、この状態から無理やり起き上がろうという気にはならないらしい。居心地悪そうに、視線をウロウロさせている。
    「で、俺がアンタに興味が無いっていう誤解は解けそうか?」
    「そっ、れは……本当に、わけわかんないんだけど……」
     そのまま、太宰は俺をおいて「なんで」「出るための演技じゃなかったのかよ……?」「でも」とぐるぐる自分の世界に入っていってしまう。この体勢に対する危機感が全くないのはどうかと思う。しかも、好意を伝えている男に押し倒されているというのに、意識した様子が全くない。どうにも面白くなく、ぶつぶつつぶやき続けている口をぱくりと食む。
    「っ……!?」
     驚きからか硬直していたが、お構いなしに繰り返し口付けてやると、背中をばしばし叩かれた。
    「いってえな……」
    「き、キスなんかするからだろ!」
    「アンタがまだ疑うからだろうが。出るための演技だったなら、わざわざこういうこともしなくていいし、あの部屋を出てからも関わろうとしてるんだから、そろそろ信じてくれよ」
     かすかに潤む金の瞳を見据えて言うも、赤いまつ毛と、まぶたがそれを覆い隠した。
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