我が家であった実話を官.ナギ風に 辻田は激怒した。必ず、あの馬耳東風のカンタロウを躾ねばならぬと決意した。辻田には一般的な生活と言うものが分からなかった。辻田は、幼い頃吸血鬼に吸血鬼化され薄暗い裏路地で生きていた。
けれどもそんな自分を救い一緒に暮らそうと言ったのはカンタロウだった。
きょう薄暮辻田は布団から起き出し、身支度を整え、カンタロウに食事を作るべく台所にやって来た。
「アイツは、またっ!!」
地雷のように硬い米粒を噛み締めた時の衝撃と言ったらなかった。
うぇっと、掌に吐き出した
「どっ、どっ、どうしたでありますか!! 辻田さん?!」
「歯に硬い物が…」
今まで料理をしていて、異物を混入した事など無かった。
席を立ち、掌の物を流しに捨て手を洗い口をゆすぐ。その間、カンタロウはずっと背後でオロオロしていた。残留物が無いか舌で口内を確認すると、奥歯で硬い物に触れた。舌先を使ってもそれはなかなか取れず、仕方がないので口を開け爪先で引っ掻いて取り出した。
「何だ?」
小指の爪程の乳白色の塊があった。
「硬くなったご飯粒でありますね」
「どうしてこんな物が…」
「それはですね! 本官家の炊飯器は中古で買った安い物で、
長年使い続けていたせいで保温機能が壊れてしまいました。ですので、ご飯を入れっぱなしにしていると水分が無くなって硬くなってしまうのであります」
「」「」「」
「硬いお米を噛んでしまったのでありますね。そう言うとき、本官もオエッてなってしまいます」
「」「」
「」「」「」
「良くあります! 本官は気になりませんが!!」
「」「」「」「」
「」「」「」「」
「おい! いいな?! 今度から白飯が余ったら、タッパーに入れておけ!! 絶対、炊飯器に残しておくんじゃないぞ!!」
「分かったであります! 肝に命じます!!」
警官だった時の名残で敬礼と共に宣言した。
白米がカピカピになってしまうのだ。せっかく作ったものなのだから、美味しく食べて欲しい。
豆腐、厚揚げ、竹輪、はんぺん。
豆腐と厚揚げはひき肉を使えば麻婆豆腐やひき肉の餡掛けと言ったメイン料理に。手を加えるのが面倒なら湯豆腐に冷奴、厚揚げをグリルで焼き醤油とおかかで副菜として食べるのも良い。
頭に来たのでウィンナーなど使ってやらない。竹輪で十分だ。
若く健康な体には、魚より肉の方がヒエラルキーが上だ。
フライパンに胡麻油を引いて竹輪を炒める。
憎きカピカピになったご飯に卵を二個割り入れ、顆粒だしも入れてしゃもじで混ぜる。竹輪に焦げ目が付いたら混ぜたご飯を入れて炒める。卵に火が通りパラパラになったら全体に醤油をかける。熱された醤油が、食欲を掻き立てる香りを放つ。火を止めてかつお節をふりかけ軽く混ぜ合わせれば、適当炒飯が出来上がった。
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