陽射しに夏の気配が混ざり始めた。
孫家としては今現在育てている農作物の手入れから次の作物の準備にと更に忙しくなるころでもある。
明日出荷する予定の春キャベツの様子を見ていたチチは野菜を卸に行って戻ってきた夫を畑で迎えた。いつもなら仕事を区切って自宅へ戻っているチチだが、夫である悟空は『気』を読めるため自宅ではなくこちらに合流してきたのだろう。
夫婦の会話は農業のことから子供達のことと、非常に穏やかだ。
「そういえば悟天と悟飯が父の日に向けて張り切ってるだよ」
「へぇ、そりゃいいな、それならオラも一緒に頑張ってみっかな」
「? ま、まぁいいんでねぇかな…?」
ほんのり違和感。
父の日に、父である悟空が頑張るのか? いやでもねぎらおうとする子供達に応えようとする気持ちであれば尊重するべきであろう。
「何すんだろうな。ちいっと前んときみてぇんときに食べたいもんとか作んのかな」
「んー、どうだろうべなぁ」
「チチは何喰いてぇ? この間カレーだったじゃねぇか」
「おら? 悟空さの食べたいものでいいんじゃねぇべか?」
「なんで?」
「なんでって、なして?」
「だってチチの日だろ?」
違和感、判明。
説明してやると悟空は照れ笑いをして、子供達が張り切ってかつ自分の中で『チチ』という響きはどうしても己が伴侶の名前の響きが第一に来てしまうらしい。だから勘違いをしたと苦笑する夫で、つまりそれはものすごく大切にされているということでは? とチチの感情も大きく揺らしたのだった。