チチは時折、不思議な夢を見る。
いつからかと思い返しておそらくだが二度目の夫との死別の後で、その夢は夢らしく目覚めと共に忘れていたが、ふとあの夢の中に出てくる男が、最近夫が新たに得た力である「スーパーサイヤ人ゴッド」の姿に告示していることに気が付いた。
「赤い髪と眼をした悟空さが夜の彼岸花畑にいてな、おらに彼岸花渡して笑ってくれるんだべ。それで「お嫁においで」っていうもんだから、もうお嫁だべ? っていったらちょっと困った笑い方して……、なんか、不思議な悟空さだったべなぁ……」
夫婦として睦んだあと、夫の腕の中で夜の空を見ていると思い出したというチチの言葉に、悟空は表面上には出さないものの、内心鮫の皮で神経を撫でられるような感覚を覚えた。
眠気にいざなわれ始めたチチが言の葉で紡いだ、赤い髪に赤い眼。
最近存在を目にしたという破壊神のような衣服を着ていたという。
悟空は奥歯を噛みしめ、眠るチチを抱く腕を強める。
他に情報などないが、どこか確信めいた思いがある。この世、に世界に、宇宙にまだまだ強い存在は数多といるが、最凶の敵は己に限りなく「近い」、のだと。
どこかに存在している、赤色を纏う己が一厘の彼岸花を手に月を眺めている光景が瞼の裏に浮かんだ。