長袖の理由ナベリウス家の公式服を作るついでにカルエゴの私服を作らせようと呼んだ針子に持って来させたデザイン画を、ナルニアは食い入るようにじっと見つめていた。
子供らしく動きやすい服は手足がむき出しになるデザインで、見つめるナルニアの表情を読めはしない。
全身を計り終えたカルエゴがナルニアの隣へと駆け寄ると、ソファーへ上ろうと腕を座面にかける。そのままでは上れないだろうとナルニアの手がカルエゴの体を抱き上げ隣へと座らせた。
にっこりと笑みを浮かべたカルエゴの顔を隠すようにデザイン画で針子との間に壁を作るナルニアに、針子は二人へ背を向けた。
「カルエゴ。お前の服を何着か作らせる予定だが、着てみたい服はあるか?」
「あ……あにうえみたいなふくがきたいです」
「そうか。それが良い」
キラキラとしたカルエゴの視線に、ナルニアはそっと頭を撫でた。ふわりとした髪の感覚が気に入っているのか、ナルニアはしばらくカルエゴの頭を撫で続ける。
「あにうえ?」
「手足は出来るだけ隠しておきなさい。簡単にお前の肌を見せてはいけないよ」
「はだ?」
首を傾げたカルエゴの肩を掴むと、ナルニアは真剣な表情でカルエゴの顔を見つめる。
「そう。私が見ていないところで体を他悪魔の前で見せてはいけない。いいね?」
「はいっ」
「良い子だね。カルエゴは」
再びカルエゴの頭を撫でるナルニアの表情が僅かに緩んでいた事を知るのは、向けられていたカルエゴだけだった。