覚え書きピアノを弾いているカルエゴ。旋律に惹かれて来るナルニア。曲が終わったのを確認したナルニアの拍手にカルエゴは顔を綻ばせる。
「相変わらず上手いな」と撫でる手が優しく、カルエゴは幸せそうに笑う。
「楽器を弾くのは楽しいので好き……なんだと思います」と呟く。その幸せそうな表情にナルニアはカルエゴの頭を撫で目を細める。整えられた爪。骨張った指は長く、アムドゥスキアスに気に入られる要因のひとつである技量。幼い頃から決められている番犬と言う立場。それさえ無ければ、この可愛らしい弟の進む道はきっと明るいものだっであろうと胸の奥が僅かに痛む。
「もし……お前が番犬にならなくて良いと言われていたら、どうした?」
「急ですね」
きょとんとした表情になった後、カルエゴは真っ直ぐな瞳でナルニアを見返す。
「それでもこの道を選びましたよ、きっと」
「なぜ?」
「それが俺なので」
あぁこんなにもまぶしいものだったのか。ナルニアはそうかと手を離し、もう一曲聞かせてくれないかと椅子に腰かける。流れてきた旋律は優しくたおやかな音の波。