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    kusare_meganeki

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    kusare_meganeki

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    ンポのなんてことない、ちょっと暗めのSS
    (直接的ではありませんが、一部表現が残酷な場面があります)

    ンポSS誰もいない小さな舞台。観客席にも人はおらず、全てが終わった静けさに満ちている。
    上層部。行政区内から少し外れ、廃棄された地下の観劇場。
    スポットライトに照らされた舞台上に残された椅子に腰かけ、サンポは手元のシールド貨幣を数えていた。今日の売上は上々だ。
    「お疲れ様、サンポくん」
    「あはは、お疲れ様です。オーナー」
    サンポがオーナーと呼んだ男は、黒いローブに仮面をつけている。その声はしゃがれており、男性が女性か判別が付かない。背筋は伸びており、老齢とは感じさせない佇まいだ。
    「今日は君の商品で盛り上がったよ。ありがとう」
    「いえいえ。こちらも良い稼ぎになりました。この度はお誘い頂きまして、ありがとうございます。散々フッたのに、こうして熱心にお誘い頂くものだから流石の僕も折れてしまいました。いえ、楽しかったですけどね?」
    早口に捲し立てた。ガタンと音を立て、サンポは椅子から立ち上がる。
    大きく身体を伸ばし、欠伸をひとつ。紙幣を懐に仕舞い、サンポは悪戯っ子の様な笑顔でオーナーを見た。
    「しかしまぁ闇オークションなんて、……。ふふ、摘発されないようにご注意くださいね。何せ、最近はシルバーメインも活発になって来てますから」
    「心配ありがとう。何、ここは見つからないさ。売り手も買い手も、ここにしかない需要を求めてきている。自分らの居場所を奪うことはしないよ」
    オーナーはカラカラと笑って言う。まぁねぇと、サンポは曖昧に頷いて椅子を持ち上げた。
    「それならいいんですけどね。それじゃ、僕もお暇させて頂きます」
    「ああ、待ってくれ。まだ君に話がある」
    オーナーに呼び止められて、一瞬サンポの顔から笑みが消える。椅子を再び置いて、座ったサンポは微笑んで小首を傾げた。
    「君が出品した商品の前に、1人、綺麗な等身大ドールを売っていた子がいたろう?」
    「ああ……いましたね。偉い綺麗な女性のドールを売ってた人。……でもオーナー、あれって人間の死体ですよね?」
    言いながら、サンポはそのドールのことを思い出していた。出品者の目を盗み、倉庫の中で彼女と一度対面している。
    白い髪、白い肌、青い瞳。若い少女を模したドールは、趣向品としては一級のものであると分かる。それが、どのような用途で使われるのかはさておいても、あの時触れた肌の質感は人間のそれだった。首に巻いていてた大きなリボンは、血を抜くチューブ痕を隠すためのアクセサリーだろう。
    「なんだい、気がついていたのか」
    サンポに事実を指摘されても、オーナーは笑っていた。
    「ははは。そりゃあもう!商人は商品の本質を見抜く目も大事……なんですよぉ?」
    自身の目を指差し、サンポはそれで?とオーナーに言葉の先を促す。
    「まぁ、なんだい。あの子は若いが技術は確かだ。死体を精巧なドールに作り替えるのは、簡単な事じゃないのは君にも分かるだろう」
    「まぁ……血抜きして、腐る内蔵を抜いて。後はなんでしょう、僕はそういったナマモノの取り扱いはしていないので詳しくは無くて……ああ、防腐剤の使い方もお上手な方なんでしょうね?」
    「その通り。こちらとしてもサンポくんのような売り手が常々居てくれれば、このオークションも安泰だがね」
    「ははぁ。僕は今回限りの助っ人ですよ。確かに!オークションは楽しかったですが、少し僕の肌には合いませんでした。……はぁ、なるほど?ドールの売り手の子をここに置きたいんですね」
    サンポの言葉に、オーナーは頷いた。その手を軽く叩いて、その通りだと言う。
    「彼の商品は素晴らしいが、材料の入手が困難な事が難点でね」
    「……あー、はいはい。そういうことなら、僕はお断りですよ。さっきも言いましたけど、ナマモノの取り扱いはしてないんです」
    オーナーの口振りに、思惑を察したサンポは大袈裟に肩をすくめた。首を横に振り、悲しそうな表情を作る。
    「いや、君に商品を仕入れて欲しいわけじゃない。それに、その子が君を指名しているんだ」
    「なんでまた」
    「ほら、君は下層部にも出入りしているだろう?」
    「はぁ」
    これは話が長くなりそうだと、サンポは再度椅子に腰掛ける。足を組み、少し気だるげにオーナーの言葉に耳を傾けた。
    しかし、下層部と来たか。内心でサンポは訝しむ。しかしそれを表情には出さず、努めて笑顔で聞いていた。
    「商品の補充はその子が行うそうだ。君には、なるべく消えても問題のない人間をピックアップ、時に手筈を整えてほしいそうだよ」
    「……女性ばかり消えては、流石にバレますよ?」
    「そこは男女問わない。商品を飾り立て、価値を作るのはその子の役目だからね。それでいいと、その子も言っている」
    「ふぅん……」
    オーナーの言葉に、サンポは考え込む。リスクにこそ旨味がある、だがこの商談はハイリスクだ。
    ニヤリとサンポは笑って、親指と人差し指で丸を作る。
    「まぁ、そういう交渉をするなら先にこれを提示して頂かないとね?」
    「ははは。そう言うと思ったとも。その子曰く、君の言い値で良いそうだ。とはいえ、法外な額はやめておくれよ。その子は才能こそあるが、金銭面に疎い子でね。言われた額をポンと出してしまう」
    「あらぁ、それはどうしましょう。下層部に住む人たちは皆、サンポの心の友!それを裏切れと言うのですから、それなりの額は頂かないと僕としても大損ですしねぇ……」
    「一度仕事をしてみて、君の労力に見合う金額を提示するのはどうだろうか。上層部と下層部が繋がったとは言え、まだまだ関係性は希薄だ。そこまで苦労のある仕事ではないと思うが、君は下層部を懇意にしているしねぇ」
    「まぁ、そこはそれなんですが。考えてはみますよ。時に、今日の商品はその子が一人で補充したものなんですか?」
    「ああ、そうらしい。なんでも、たまたま下層部に訪れた際に見つけたらしくてね。曰く、一目惚れだったそうだ。姿は見窄らしいが、しかしうちに潜む美しさに目を奪われたそうだよ。一人でいるところに声をかけて、そのまま……らしいがやはり下層部の子供だ、騒ぎにもならない」
    「……なるほど。はは。ま、話は受けました。回答は……出来ないかもしれませんが」
    椅子から立ち上がったサンポの言葉に、オーナーが頷こうとして‪──‬言葉の違和感に、待てと声を漏らした。
    「回答は出来ない?考えてみると言ったじゃないか」
    「気が変わりました♡」
    声を高めに可愛こぶるように言うサンポに、オーナーが詰め寄る。自身より頭一つしたのオーナーを見下げて、サンポは微笑んだまま口を開いた。
    「カリス・ルヴィエ」
    「……?誰だ、それは」
    「今日、出品されたドールの……少女の名前ですよ」
    仮面の下、オーナーの表情は窺い知れない。だが、息を飲む音にその名前に心当たりがあるのだとサンポは察した。
    「母と子の二人暮らし、下層部で慎ましく暮らしていたんですがね。ある日、子供が行方不明になった」
    「……貴様、蜥蜴か!」
    「貴方、たかだか下層部と言いましたね。ですが、僕は言いましたよ。下層部の人は、皆サンポの心の友だと。気がつきますとも、誰が消えても。特に、子供は皆の宝ですから。ふふふ」
    笑うサンポの腹に、固く冷たいものが突きつけられる。黒い銃口が、服を上から皮膚を押し込んでいた。かちゃりと安全装置が外れる音がする。
    トリガーに指をかけたオーナーが、怒りに触れる声色でサンポに言った。
    「誰の差し金だ。君は人脈が広くとも、一匹狼だと思っていたのだがね」
    「おや、物騒だ。やめましょう、武力に頼った会話をするのは。僕は、人との信頼関係に会話は必要不可欠だと思っていますが、こういう形は苦手なんですよ」
    「答えろ、誰の差し金だ!」
    オーナーのしゃがれた怒鳴り声にも怯まず、ただ笑ったままでサンポは立っていた。まるで、銃などそこに存在しないというような態度。
    薄寒い笑顔にすら思える彼の表情に、オーナーは仮面の下で唇を噛み締めた。
    「……オーナー?この拳銃、本当に撃てるものですか?」
    「当たり前だ」
    「どうして断言出来るんです?今この場でトリガーが動かない可能性がありますよね。弾詰まりを起こすかも。まさかまさか、弾を込め忘れたなんて?」
    「余計なことは言わなくていい。誰の差し金か言えば、せめても命までは奪わない」
    「はは。命を奪われなくても、ここの商品にされるのがオチでしょ。うーん、僕は顔が綺麗だからドールにされちゃうか……物好きに売られるか……どちらにしても嫌ですねぇ」
    あははと笑って。サンポの顔から笑みが消えた。無表情の彼は、いつまでも弾を吐き出さないその拳銃とオーナーを、無機質に見つめて言葉を吐く。
    「いつまで、そうやっているつもりですか?」
    「何を」
    「人間、腹を一発撃たれても死にゃしませんよ。それとも何か?商品になる予定のものに、傷がつくのがお嫌い?」
    「……正気か、お前……」
    「正気ですよ。僕は、いつだってね。後一つ訂正させてください。僕は一匹狼なんてかっこいいものではありません。そうですね……ただの、首輪をつけてもらえない野良犬ですよ」
    ふと、手の内が軽くなっていることにオーナーは気がついた。握り締めていたはずの拳銃は、何処にも無い。焦り、視線を彷徨わせるその目の前に、銃口が現れた。
    サンポの手に、それは握られている。いつ奪われたのか、全く分からない。
    かちゃりと、安全装置の外れる音がした。
    「ほら、チャンスを逃す。ダメですよ、こんなもの一つで生殺与奪を握ってるなんて思っては」
    「ま、待て。お前にあの少女は関係なかったはずだ」
    「僕に直接関係はありません。ただ」
    すぅと、サンポが息を吸う。冷たい視線で、ただオーナーを見下して。
    「その少女と遊ぶ約束をしていた子が、ずっと悲しい顔をしている」
    ゆっくりと、その引き金を引いた。


    舞台裏、その死角に置いていた箱を開けてサンポは息を吐く。
    「いやはや、お待たせしました。一応言質は取っておかなくてはと思ったら、話が長引いてしまって」
    そこに横たわっているのは一人の少女の死体だ。綺麗に着飾られ、首には大きなリボンが巻かれている。白く長い髪は、ところどころが絡まっていた。薄く開き見える青色の瞳は、濁っている。
    処理が甘いと、サンポは思った。綺麗に見えていたのは、舞台上の効果だったのだろう。
    「さて、購入者が中身がラブドールじゃないかと怒鳴り込んでくる前に行きましょうか」
    箱の蓋を閉め、台車に乗せてサンポは布を被せた。服を着替え、業者を装った姿になる。ふと、後ろを振り向いた。
    スポットライトの消えた舞台上で、オーナーは倒れている。外傷は何処にも無く、ただ気絶していた。証拠に、腹も胸も呼吸のために動いている。
    「拳銃の空撃ちで気絶してしまうなんて、ざまぁねぇですね。あっはっは!」
    笑いながら、赤い薔薇を一輪舞台上に投げ残す。
    「後始末もしないと……うふふ、忙しいですねぇ。悪く無いです」
    そう呟き、上機嫌に鼻歌混じりでサンポはその場を去って行った。





    煙が上がっている。下層部の天井まで届くのではと思うそれは、空中で霧散し消えていった。
    火葬場の前で泣き崩れる一人の女性を、ナターシャが慰めている。その場に集まる地炎の面々は重苦しい表情だった。
    それを影から見ていたサンポは、上を見る。黙々と、上を目指して昇り続ける煙の全てが少女のものだ。
    「……サンポおじちゃん」
    「どうしましたか、ドスフロのフック様」
    「あの子、もう遊べないんだな」
    「……そうですね」
    しゃがみ、フックの目線に合わせてサンポは彼女の表情を見た。泣くのを堪えて、頬を少し膨らませているフックは、自身の服の裾を強く掴んでいる。
    「泣いても良いんですよ、フック」
    「な、泣かない!泣かないぞ、あたしは……」
    目から大粒の涙を流して、フックは強がった。それでも、徐々にメッキは剥がれていく。しゃくりを上げ始めた彼女をそっと抱き寄せて、サンポは優しくその背中を摩った。今回ばかりは、少しメンタルケアをしてあげないととサンポは思う。
    「……そうだ、フック。もし、あの子がいなくなった原因に、やり返せるとしたら……貴女は何がしたいとかありますか?」
    「う、ぐす……な、なんでそれ聞くの?」
    「気晴らしですよ」
    「ん……いい。何もしない」
    「何もしない?良いんですか?」
    「いい。だって、何もないから」
    フックの言葉に、サンポは驚くのではなく笑みをこぼした。子供の感性というのは、全く面白い。
    復習を望まないのは、この子の優しさだろう。

    「というわけで!よかったですね、命拾いですよ」
    手を叩いて、サンポは楽しそうに言った。リベットタウン、廃屋。元はリビングだったろう場所で、男が一人。拘束され椅子に座らされている。口には布を噛まされ、一切の発言を封じられていた。
    「いやはや、あの子は底抜けに優しい子ですね。ご両親が死んでも、努めて明るく。友達を殺されても、犯人に復讐を望まない。前向き、それとナターシャの存在もあるのでしょうか。あの環境で、よく真っ直ぐに育っているものです」
    まるで役を演じているかのようにイキイキと、声を張って喋るサンポはその場でくるりと回って男を見た。恐怖に満ちたその瞳は揺れている。廃屋の外では、裂界生物の徘徊音。
    「怖いですか?」
    サンポの問いかけに、男は何もリアクションを起こさない。ただ、何をされるか分からない恐怖からか、じっとサンポを見ている。
    「もしあの子が復讐を望むのなら、色々と手を考えていたのです。貴方があの少女にやったことを、貴方にも……なぁんて。ですが、それも全部不必要になりました。なので、貴方を解放しますね」
    「……!?」
    男の口枷を外して、サンポは言葉を待つ。
    「……本当に、逃してくれるのか?」
    掠れた声で、男が問いかけた。ええ、とサンポは頷く。
    「逃しますとも。僕も鬼ではありませんし、必要ないのなら人を嬲る趣味もないので」
    「あ、ありが」
    「でも」
    男の言葉を遮り、サンポは言った。
    「貴方一人で、頑張ってここから出てくださいね?」
    「え……」
    「大丈夫ですよ。ここの化け物たちは皆、目が節穴ですから。物音立てずにゆっくり、慎重に逃げればなんとでもなりますから」
    絶望に歪む男にサンポはにこりと笑い、拘束している縄に一つの装置を取り付ける。カチカチとそれを弄りながら、サンポは雑談と言わんばかりに一人で話し始めた。
    「そうそう。貴方、死体の処理が甘いですよ。あれじゃあ最初は良くても、すぐに劣化します。内蔵を抜くのは良いですが、その後の処理をしっかりしないと。まだラブドールの方が長持ちしますよ、あんなんじゃ」
    「な……」
    「ま、この助言を活かせるかどうかは貴方次第ですがね」
    言いながら、サンポは手のひらを広げて男に見せた。
    「五分です。五分後に、その装置が貴方の拘束を解いてくれます。後は貴方の自由です」
    「待て、待ってくれ。頼む、まだ死にたくない」
    「その気持ちが貴方だけのものだとでも?」
    サンポの言葉に、男は口を閉ざした。涙の溢れる瞳は、大きく見開かれている。
    無表情のサンポは、その場で深々と一礼をした。
    「それでは、僕はこれで」
    「ま……っ!」
    人差し指を男の唇に当て、黙らせてからサンポは目を細めた。
    「お元気で」
    にこりと笑ったサンポは、男にそう言葉を残すと廃屋を後にした。特に振り返ることもなく、裂界生物の目を掻い潜りながらリベットタウンからボルダータウンへ移動する。
    安全地帯に辿り着き、一仕事したと息を吐いたサンポに一人の女性が声をかけた。
    「サンポ、お疲れ様」
    「ナターシャじゃないですか。診療所はどうしたのです?」
    「今は休憩。少ししたら戻るつもりよ」
    「それはそれは。毎日ご苦労様です」
    サンポの言葉を受け、微笑んだナターシャはこっちにとサンポの手を引き、一目のないところに誘導した。一本横に逸れた道、その先には地炎が密談で使う際の広場がある。そこにサンポを連れ込み、誰もいないことを確認して、ナターシャは彼の手を離す。
    「どうしました、こんなところに僕を連れ出して」
    「さっき、ジェパード戌衛官が診療所に来たの。君を探してね」
    「僕を?最近は何もしてないはずなんですけどねぇ……」
    小首を傾げるサンポに、ナターシャは本当にと問い詰める。
    「昨日、闇オークションの摘発を行ったそうなのだけど、そこに一輪の薔薇が置いてあったそうよ。現場の状況も不可解。オーナーは気絶していて、何やら商品を取り違えたとクレームを入れにきた客もいた……あとは、君から商品を買ったっていう客もいたと言うわ」
    「あははは、なんのことでしょう。いやはや、価値を認めてお買い上げたいただいたのはお客様なので、クレームを言われる筋合いはないんですがねぇ」
    カラカラと笑い、サンポは首を横に振った。闇オークションにて出品したことは認めたものの、その他については言及をしない。
    その様子に、ナターシャは怒ることも訝しむこともしない。サンポのこの反応を、彼女は予想していた。
    「多くの関係者は捕まえたそうなのだけど、出品者が一人だけ見当たらないと彼は言っていた。購入者曰く、とても精巧で人間に近いドールを作っていた、というのだけど」
    「それで?」
    「昨日、君が見つけて連れ帰った遺体。あれは、防腐処理が施されていたわ。処理は、甘いけど」
    「ああ、やっぱりそう思いますよね?」
    「あのね……」
    「分かりました分かりました。言いますよ、その出品者の所在が知りたいんでしょう。でも、僕も知りません」
    「また、嘘言って」
    「本当ですよ」
    両手を上げ、降参のポーズを取るサンポは何度も首を横に振っていた。おちゃらけている様子に、ナターシャは目を細める。
    彼が何かを隠しているのは、付き合い上分かる。だが、それを問い詰めたところで本当のことを彼は言わないだろう。口を破らず、のらりくらりと躱すサンポとの押し問答にかけている時間も惜しい。
    結果、折れたのはナターシャの方だった。
    「分かったわ。まぁ、どちらにせよ君は闇オークションには関わっていた。暫くは、また目をつけられるわよ」
    ナターシャの言葉に、サンポは仕方ないですねと落ち込むように言った。
    それが演技だと分かっているナターシャは、特に慰めることもせずに言葉を続ける。
    「フックが君のことを探していたわ、後で行ってあげてね」
    「ああ、そうですね。ドライブの約束をしていたんでした」
    探して来ますと、サンポがその場から去るのをナターシャは止めなかった。
    聞きたいことは聞けた。あの少女の遺体の真実も、サンポが何のためにオークションに出たのかも。
    ため息を一つ、ナターシャは静かに首を横に振った。
    「あの子に首輪なんて、やっぱりかけられないし、かけない方がいいわね」
    そう呟いて、ナターシャも広場を後にした。
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