騎士8×ラミア2 鬱蒼とした森に迷い込んだガクはため息をついた。まさか警備中に馬が暴走するとは。何をキッカケに、いつもは大人しい愛馬が正気を失ったのかも思い出せない。いきなり森に駆けだす彼女が人を傷つけないようにするのに精一杯で、進行方向を変更するなんて高等技術は使えなかった。まあ、そんな彼女に振り落とされて今こんなとこにいるわけだが。途方に暮れてガクは空を見上げた。灰色の重たい雲が充満している空が一層、鬱々とした雰囲気を冗長させる。眉間にしわを寄せながらガシャガシャと鎧の音をさせ森を歩く。長い草が脚にまとわりつく。あまり人が入らないのだろう。子どもに「化け物が出る」と脅している城下の大人の言葉を思い出す。化け物が本当か嘘かなんて分からないが、こんなところに子どもが入ってしまえば確かに迷って帰って来れないだろう。
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