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    ゆうや

    @asbiusagi

    ぶるろ垢
    馬狼、國神右派の総受けそう愛され大好き人間

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    ゆうや

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    第17回ngbr1DW

    お題
    (年末、大掃除)
    未来捏造、同棲済み





    年末といえば大掃除。らしい。
    今まで育ってきた環境で特別大掃除なんて力を入れた記憶も無い俺としてはあんまりピンと来ないし、面倒くさい。としか思わないけどペイズリー柄の頭巾を締めてクイックルワイパーや箒、雑巾を持ち替えながら家の中を朝から歩き回る恋人は違うようだった。
    例え雨が降っていようと、雪が降っていようと毎日のルーティンをこなしてみせる男は今朝も朝早くから走りに行っていて、帰ってきたかと思えばいきなり布団を引っ剥がされ、暖房も入っていない部屋で温もりから叩き出された身体はぶるっと震えて、駄々をこねた俺にまるでお仕置きだと冷えた手が首に襲いかかってきた。
    揃って休みの今日は恋人を布団へと引き込んでのんびり休みの午前中を過ごしたかったのに、空気を読まない男は大掃除するぞ。と一言だけ言って俺の手を引っ張りリビングへと連行した。

    「おい、クサオ!ちゃんと手ぇ動かしてんだろうな?!」
    「うへぇーい」

    キッチンから声が飛んできて、雑巾を片手に適当に返事をすれば変な返事してんじゃねぇ!なんて言葉が返ってきて、しまいには気合い入れろなんて言われてしまう。
    掃除を放り出して馬狼とイチャイチャしたいのに、当の本人がやる気満々なせいで近付けば素っ気無くあしらわれる。
    朝から何回か挑戦したけど肘だったり手だったり脚だったりが飛んできて全く相手にされなくて、仕方なく言われた通りに雑巾を手に取った訳だけど…。
    バケツにはられた水からは湯気が出ていて、あいつなりの優しさを感じてちょっとキュンとした。
    いや、わざわざ窓拭きなんて寒い場所を指定してきたし優しくは無いか…。
    上から下まで丁寧に拭いて、網戸も綺麗にしていく。
    目の前の窓からは絶え間なく雪が降っているのが見えて、ベランダに結構な量が積もってる。
    窓の裏側を拭く時、外に出ないといけないと思うとそれだけで身体がぶるぶると震える。


    大掃除なんて言葉も、普段から綺麗にしていれば短時間で終わる。
    要は普段時間がかかって出来ない部分を掃除する訳で、まずもって汚れがたまらないよう工夫しておけばそれもなんら問題もない。
    最後の仕上げにシンクをピカピカにしながら、開かれたスペースから背中を丸めたクサオを見る。
    用意してやったバケツに手を突っ込んで一息ついている様子にふっと口元が緩むのを自覚しながら、掃除が終わったらいれてやるつもりのレモンティーと茶請けのプリンを準備する。
    冷蔵庫を開けて中にざっと目を通せば、クリスマスに食べたケーキが一切れ残っていて、少し迷って崩れないように引き出す。


    揃いのカップを出して、揃いの皿を並べる。

    棚の中にある同棲して増えてきたモノに辟易としながらも、壊れていないか丁寧に確認して取り出しやすいように配置しなおしていく。
    棚の中に鎮座していたモノは、決してセンスがいいとはいえないクサオからの贈り物が大半だった。
    面白半分に遠征先で買ってくるモノは統一性もなく使う用途もバラバラなモノばかり。
    ただ言えるのは、俺が好きそうなもの、柄、色を選んできているということだった。
    偶に本当にくだらない使えないものを買ってくるけれど、それを2人で笑って使わないまでもテレビ台の横に少しずつ並んでいく。

    土産を買って帰ってきた日には、帰宅して手を洗いもせず直ぐに俺のところにくるクサオが、はい。とだけ言って土産を渡してくる。
    毎回綺麗にラッピングしてあるそれを丁寧に開いて、俺が中身を見るまでクサオはソワソワとしながらも俺の側から離れない。
    ラッピングを解いてすかさず、"どう?好き?""嫌いじゃねぇな"なんて決まった文句を言ってありがとうと伝える。
    後日、俺がそれを使っているのを見ると嬉しそうに頬を緩ませるクサオの表情を本人はこれから先も知らないんだろうなと思うと少し優越感を感じる。
    捨てるに捨てられないそれらを綺麗に整頓して顔を上げ、クサオの様子を見ようと顔を上げれば窓を開けっぱなしにし背中を丸めて何かしている後ろ姿が見えて眉を寄せる。

    窓越しに積もっていく雪もクサオの色白な肌も白い髪の毛も一緒くたに混ざってしまいそうな危うさと、吹き込んでくる風に寒さを感じながらテキパキと手を動かしていき、キッチンから窓へと足を向ける。


    寒い。
    なんと無しに拭き上げて綺麗になった窓を見て少しスカッとした気持ちになるけど、脳内に浮かぶ馬狼のドヤ顔にむかついて頭を振る。
    さっさと片付けてご褒美でも貰おう。
    そう思ってキッチンにいる馬狼を振り向いてみても、なにやら熱心に手元を動かしていて終わる気配はない。
    もしかしたら他の仕事を任されるかもしれないし、それは面倒くさすぎるなと思って、窓を掃除するふりをしようと床へ座り込む。
    することも無くぼんやりと外を眺めていればふと、目の前にゆっくりと積もるふかふかな雪は触ったら冷たいんだろうな…なんて思って拭いた窓を開ければ直ぐに冷たい空気が入り込んでくる。
    靴下履いとけば良かった。
    冷えるつま先の指をわきわきと動かしながら、綺麗に積もった雪を手のひらに閉じ込める。
    きんっとした冷たさと同時に痛みも感じて、やっぱり冷たいなんて当たり前のことを思いながら、手の平大の雪玉を作って置いていく。
    ちょこんと並んだ雪だるまはなんだか寂しくて、馬狼の髪の毛を作ってみたり、プリンの形を作ってみたりして遊んでいれば思ったより集中していたのか、頭上から落とされた声にビクッと肩が跳ねる。

    「おい、クサオ」
    「わぁっ?!…もー、脅かさないでよ」
    「何してんだお前、さみぃだろ」

    背後から俺を覗き見るように、覆い被さるような体制で手元を見てくる馬狼を見上げれば片眉をこれでもかと引き上げて怪しむように首を傾げる。
    その反応に手元を見やすくしてやれば、少ししてから、呆れたように下手くそと呟かれる。

    「えー?上手く出来たと思うけど?」
    「はぁ…掃除してんのかと思えば、遊んでんじゃねえか。風邪引くだろ、さっさと閉めろ」
    「ねぇ、ヘタクソって言うなら馬狼も作ってよ」
    「却下、さっさと中入れ」
    「あ、もしかして王様、雪だるま作れないとか?」
    「?」

    売り言葉に買い言葉
    隣に腰を下ろした馬狼が唇をツンっと尖らせて雪だるまを作る様子を、チョロいな、なんて思いながら横目に眺める。
    馬狼のゴツい大きい手が雑に雪を掻き集めて、雪玉を作っていき、俺が作った物よりも遥かに綺麗な雪玉がころころと出来上がり、集中してるのか一度唇をペロリと舐めた馬狼が作り終わった雪玉を雪だるまにしいてく。
    雪国出身だと言う手慣れた手元から目線を上げれば、馬狼の耳も鼻先も指先も赤くなり始めてるのに気付いて、なんだか既視感があってぼんやり考えていれば、ああ、エッチしてる時の馬狼も真っ赤だ、なんて思い至る。
    真剣に雪だるまを作る馬狼に勝手にムラムラとして、やっぱり早くいちゃつきたいな、張り合わなかったら今頃イチャつけたのにと少し後悔する。

    「…、サオ、クサオ!」
    「あぇ?なに」
    「何じゃねぇ…おら、俺の作った雪だるまの方がすげぇだろ」

    ぼんやりとベッドに押し倒した馬狼を想像していれば肩を小突かれて、ハッと馬狼を見れば鼻も頬も赤く染めながら自慢げに笑いかけてくる馬狼に、ああ、好きだな、なんて思う。
    キスしたい。そう思ったら身体が勝手に動いていて雪のついた手で馬狼の胸元を掴んで引き寄せ、気付いた頃にはキスをしてた。

    「ぅっ?!」

    冷たさと柔らかさを感じながらベロッと馬狼の唇を舐め、突き飛ばされる前にとまだ隙のある口腔内に舌を入れ込めば、抗議するように馬狼の声が鼻から抜けて聞こえてきて、寒さなんて一気に吹き飛ぶ。
    勢いがつきすぎて馬狼を床へと押し倒してもキスを続けていれば、我に帰った馬狼が強く胸元を叩いてきて、仕方なくぢゅっと唇を吸ってから口を離す。

    「ん…?なんか、あま…」
    「は、ッ、急に…盛んなっ」
    「ねぇ、馬狼…俺が頑張って掃除してたのにケーキ食べた?」

    口を拭いながら俺を睨み付けてくる馬狼にそのまま覆い被さって目を細めれば、馬狼の身体がぎくりと固まる。案外に甘党な恋人が残り一切れのケーキを楽しみにしていたのは知ってるので少しの意地悪とこのままご褒美でも貰ってしまおうと画策したからの言葉だったけど、意外にも罪悪感があるのかウロウロと視線が揺れる。
    その反応が苛虐心を煽ってると気付いてないんだろうなと思いながらも絶対に言ってやらない。そうして全部馬狼のせいにして甘い蜜を吸ってやるんだ。

    「俺にもちょーだい」
    「は?、ぁ?もうねぇよ、全部食った…、レモンティーいれてやるから退けろ」

    好物で釣れば俺が言うことを聞くと思ってるのか、まぁ、それも否定は出来ない。
    寄せられた眉毛と強気に睨み付けてくる馬狼の様子にこくりと喉を上下させて唾を飲み込む。

    「レモンティーも嬉しいけどさ…、ねぇ、俺のところにミニスカサンタさん来てないんだけど」
    「はぁ?!」

    なに言ってんだと呆れたような声にひくつく目元と浮き上がる青筋に、あ、やば…と思ったところで手遅れで馬狼の紅い瞳が目の前に迫ったかと思った瞬間にゴンっと音がして額に痛みが走る。

    「っ〜?!」
    「ッ、だぁ、いてぇ」

    額がぶつかった衝撃に2人して冷えた床に蹲って痛みに呻きながら熱を持つほどに痛い額を手のひらで押さえる。
    頭突きって…反則でしょ…レッドカード1発退場!
    ゴロゴロと床の上を行ったり来たりと動いていれば、俺よりも早く回復したのか、悪態を吐きながら立ち上がった馬狼に見下ろされびしりと指を刺される。

    「このくそ石頭野郎!良い子にしてねぇお前にサンタさんなんか来るわけねぇだろ!雪でも食って頭冷やしやがれッ!お前分のプリンは俺のもんだ」

    非情にも突きつけられた言葉と振り出しに戻ってしまった馬狼の機嫌にガーンと効果音が付きそうなほどショックを受けながら床に寝転んでいれば、馬狼の足に蹴られて窓から引き離され、開いていた窓が静かに閉められる。

    「うぇー、王様、そこをなんとか」
    「くそうぜぇ!まとわりつくな!」
    「どうかご慈悲を〜」
    「お前にやる慈悲なんてねぇ」

    ずるずると足に引きづられてリビングを移動していれば情のカケラもない言葉と同時に足を振り払われてベシャリと床に沈み込む。
    泣き真似をして見せても馬狼の反応はなく、ちぇーと残念に思いながらすぐ立ち上がってキッチンで掃除の締めを準備し始めた馬狼に後ろから引っ付く。

    手元に用意されてる紅茶のパックを見れば、レモンティーは変わらず淹れてくれるようで、バレないように口元を緩める。

    「アンタのそういうところ好き」
    「俺は嫌いだな」

    慣れたような言葉の応酬にふわふわと幸せな暖かさを感じる。大掃除は終わったし、部屋は寒いし、レモンティーとプリンで糖分を摂ったらサッサと馬狼を連れて寝室へ引き篭ろう。この際プリンは馬狼に譲っても良い。馬狼との甘いキスも大好きだから。



    end.
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