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    iduha_dkz

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    #tdodワンドロライ企画
    お題「クリスマス」です
    大学生花瀬花で付き合う一歩手前
    瀬田ちゃんの愉快な友達たちを捏造してます

    退路を断つメッセージ『今年も集まるやつ!』
    『オレ出席』
    『俺も』
    『チクショー今年こそ欠席連絡するつもりだったのに』
    『ふっ、お前らまったく変わらねーなー。俺は去年の後彼女できたぜ! まっ、別れたから出席なんだけどな!』
    『裏切り者だと思ったら悲しいやつだった』
    『ちなみに何ヶ月?』
    『三日』
    『逆にどうしたらそんな早くフられんだよ』
    いつものグループが今年も活気づいているのを、瀬田はじっと眺めていた。調子のいい仲間たちは恋人がいないクリスマスを楽しもうと、みんなで集まる同志たちだ。高速で流れていくメッセージを見ながら、瀬田は今からここに送らなければいけない内容を考えて、一度大きくため息をつく。
    『あとは瀬田だけか?』
    『既読数的に見てるよな』
    『え、まさか……』
    『裏切り者発生?』
    どんなメッセージで送れば穏便に済むか考えている間に、雲行きが怪しくなっていく。
    「独り身だから裏切ってはねーよ」
    とりあえず、誤解がこれ以上広がって話題の種に火が付く前に消火にかかる。
    『あ、出た』
    『なーんだ、じゃあ今年も無事全員揃って恋人なしか』
    『無事じゃねーだろ!全員撃沈じゃねーか』
    『まぁ、このグループ役割終わる方がいいよなぁ』
    少し落ち着いた熱量に、今からまた爆弾を投下するのが気は重い。でも、ここ数年毎年慰めあってきた奴らに本質的な嘘をつくのも不誠実だと瀬田は思う。この後の彼らの反応はどう考えても気まずいが、伝えないのはもっとありえない。
    「あー、でも今年はオレ欠席」
    『あれ、どしたん』
    『賭けに負けたらクリスマス一緒にすごすって約束したやつに負けたから、今年はそいつと会ってくる』
    『先約あるって断われなかったん?』
    「オレもそいつと一緒にいたいなって、ちょっと思って……」
    瀬田がそのメッセージを送った後、人数分の既読がついたのにあれだけ早かった流れがピタリと止まる。この集まりよりも優先するクリスマスに一緒にいたい人、なんて意味は一つしかない。
    「だから、今年はそっち行くから欠席で」
    止まった流れにもう一つメッセージを投げ込むと、ようやく言葉の流れが戻ってくる。それは瀬田が送る前から想定していた内容だった。
    『裏切り者じゃね?』
    『でも片想いかもしれねーよな?』
    『勝ったらクリスマス一緒にいたいっていう相手が脈なしとかねーだろ。自分がすぐフられたからって現実逃避すんな』
    『もうそういうことだろ。さっさと告白して確定裏切り者になれ。フられたかわいそうなやつに引導を渡してやれ』
    「引導渡すのはどっちでもいいんだけど、ほんとに裏切り者になれっかはわかんねーぞ」
    『は? クリスマスに会いたいって言われてんのに?』
    「よくわかんねーんだよ。からかわれてるだけかもしんねーし」
    『告白して玉砕するにしてもクリスマスじゃね?』
    『だよなぁ』
    『賛成』
    『まさかの勘違いでフられたら、今までで一番あたたかーく迎えてやるから安心して玉砕してこい』
    『欠席するならそれ条件な』
    なにやら良からぬ方に本人の意志抜きで話がまとまりはじめている。
    「待ってなんでオレが告白するって決まってんの?」
    『え、クリスマスに会いたいって言われて会うのに何も言わないつもりなん?』
    『言わねー方が不思議だわー』
    『たぶん距離感間違えて即フられたやつだけど、でも流石に今回はこいつのが正しいと思うぞ』
    「うるせーここにいる全員恋人いたことねーだろ」
    『急に爆弾投げるじゃん』
    『やっぱり裏切り者だな』
    「えー、フられたらあたたかーく迎えてくれるんじゃねーのかよ」
    『ほんとにフられたらな』
    『フられなかったら当日は連絡もいらねーから』
    『瀬田の好きなもの用意して、欠席だったらこれなくて悔しーって思うようにしようぜ』
    『あ、それいーな。参加になったら慰めのごちそうになるし』
    「おまえら勝手に話進めすぎ。唐揚げで」
    『オーケー俺らだけでうまい唐揚げ食ってるから悔しがれ』
    『これこっから毎年唐揚げ定番になるんじゃね?』
    『いや来年は全員恋人できて解散だろ』
    『そうだった』
    『お前かなり諦めてない?』
    相変わらず賑やかな彼らの、彼らなりの祝福と応援が画面上を流れていく。報告の気まずさは乗り越えたので、後は当日瀬田がどうするかだけだ。とはいっても、告白しないという選択肢はもとから瀬田にはない。普段は冗談か本音かわからない言葉で手を伸ばしてくるしかしない彼が見せた珍しい隙だ。ここで伝えられなかったら、瀬田はたぶんもう一生伝えられないだろう。
    報告をして退路も断った。後は告白して真意を捕まえるだけだ。

    そして迎えたクリスマス。瀬田が唐揚げを食べることはなく、変わりに味わうことになったのは好きな人の唇の感触だった。

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