ダンデライオンからの祝福をビュウビュウとストームへイルの吹雪が痛いほど叩きつける。
「相変わらず痛いほど寒い街ですね、ここは」
「仕方ない、ここはそういうものとして受け止めてくれ」
「はいはい」
テメノスの護衛として1年以上側にいるのに硬い表情は相変わらずのオルトに軽口で返す。唯一変わったのは皺の数が最初の頃よりは減ったくらいだろうか。皺が減るくらいには心を許してくれたのだろう。
「…まもなく事件関係者への殉死追悼式を執り行います。テメノス異端審問官、追悼式式辞をお願いします」
「こういう改まったものは自分には向いていないのですがねえ。仕方ありません」
はあ、と仰々しく溜め息をつきオルトにしか聞こえない声でテメノスは愚痴を吐く。
「…では、はじめましょうか」
7820