富「そういえば診療所のオレが使ってた部屋、今は誰が使ってるんです?」
K「お前以外、誰も使っていない」
富「え、何で……部屋数に余裕ないでしょう」
K「おまえが出て行った少し後に、たまたま治療に来た有識者の助言でな」
富「有識者」
K「あの部屋は危険だと」
富「部屋で危険を感じた事はないですが」
K「おまえも昔、自室で妙な音がすると言っていただろう」
富「ああ、たまにありましたね。話し声とか歩く音とか波の音とか。カーテンに辺な影が映ったり……疲れてたんですかね」
K「あれは怪異だ」
富「……怪異?」
K「あの部屋は、人ならざるもの達の通り道だったらしい」
富「初耳」
K「対処法を知らない人間が、あの部屋に長期間滞在するのは良くないと」
富「対処法を知らないオレが、何年も住んでましたけど」
K「前住者が無事だったのは奇跡だと言われた」
富「奇跡て」
K「おまえが無事でよかった」
富「ありがとうございます…?いや、確かに、あの部屋は変な事がよくありましたけど…。えぇ…?本当に?」
K「ああ。そもそもあの部屋は、親父からあまり使わない方が良いと言われていた部屋で」
富「何でそれ最初に言ってくれなかったんですか!?」
K「すまない、忘れていた。村井さんが帰って来てから思い出したが、おまえは何事もなく健康に暮らしていたから、まあ良いだろうと」
富「ちょっとォ!?」
K「部屋数も足りなかったし、一也にその部屋を割り当てる訳にもいかんと思ってな」
富「確かに!一也くんをそんな部屋で生活させなくて良かった!」
K「富永ならばそう言ってくれるだろうと思っていた」
富「くっそ!その言い方はズルい!」
K「だから今は、誰も使わないよう物置きにしている」
富「そうして下さい…。はぁ…今更、知りたくなかったなァ…」
K「おまえが村に来た時に泊まるというなら、片付けるが」
富「寝袋貸してください。診察室の床で寝ます」