Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    nezuno

    @nezuno
    小説のみ
    ぱっと思いついた短いネタ、練習等を投げる予定です
    尻切れトンボとか思いついたシーンのみ投げるかもしれません
    ちゃんと完成させろ、っていうやつがあったらTwitterの方で言ってもらえたらモチベが上がります
    上がるだけです

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    nezuno

    ☆quiet follow

    2021年一作目
    とくに季節ネタではないです
    食いしん坊ユウリちゃんのよくわからない悩み事に付き合ってくれるホップのお話です
    推しポケモンと推しカプを並べたかったやつです

    #ホプユウ
    Hopscotch (Hop/Gloria ship)

    「こんなことホップにしか頼めないの……!」
     バトル以外では普段マイペースなユウリが珍しく差し迫った表情でそんな言葉を口にしてすがってくるのを断る理由などあるわけがなかった。ライバルが困ってるとき力を貸すのは当然だぞ、なんて耳触りの良い言葉で二つ返事したものの、内心はユウリが困ったときに最初に頼るのがアニキをはじめとするリーグ委員会の大人たちや、他のトレーナーの誰でもなくオレだという事実に安堵とほんの少しの優越感を感じていた。
     だからどんな頼み事だって聞くつもりでユウリに言われるままに研究所の表に出て目にしたのは、彼女の苦悩の表情とは裏腹にのんきな光景だった。
    「ヤドンか。こっちは、ガラル以外の地方で見られる姿だな」
     生息地域ごとの環境や生態系の違いによって同じ種のポケモンでも姿やタイプが変化する、学術的にはリージョンフォームと呼ばれてる現象だ。ガラル以外の地域でみられるヤドンは──個体数でいえばこちがのほうが一般的な姿と考えられるだろう──のぼせたみたいな全身ピンク色で、しっぽの先だけが白い。ガラルのヤドンは額から頭部にかけて、それからしっぽがカレーみたいな黄色になっている。この違いは食糧の違いだと考えられていて……、というような本に書いてることはさておき、この気の抜けた顔で二匹ならんだヤドンの一体なにがユウリを悩ませているというのだろう。
     黄色頭のヤドンは、日当たりのいい場所を見つけて気持ちよさそうに目を閉じて日光浴をしている。ピンク色の方のヤドンは、知らない場所に来たのが興味深いのか辺りを興味深い様子で見渡しているけど、いかんせん動きが遅いからどこかに行ってしまうという心配はなさそうだ。リージョンフォームポケモンを両種ともにじっくり観察するチャンスには興味がそそられるけど、まさかこいつらを見せてくれるための訪問という雰囲気でもなさそうだ。
    「わ、わたし……」
     のんびりしたヤドンたちとは裏腹にユウリは思いつめた表情で両手をふるえるほど握りしめて自身の胸にあてている。
    「ゆっくりでいいから、ユウリが何に困ってるのか説明してほしいぞ」
     震える手をとって解すように撫でてやると、ユウリは重い口をゆっくりと開く。
    「わたし、知らなかったの。こんな気持ちになるくらいならずっと知らないままでいたかったのに」
     瞳に涙の膜を作って潤ませている。頬を紅潮され何らかの衝動に耐えるかのような表情には正直ぐっとくるものがあったけど、こんなにも思い悩んでオレを頼ってくれたユウリにそんな気持ちになるなんてどうかしている。頭をふって煩悩を振り払い、ユウリの言葉の続きを待つ。
    「……いつもカレーをつくるのに使ってたしっぽの燻製がヤドンのしっぽだったなんて、わたし知らなかったの!」
     意を決して告げられた言葉に拍子抜けしてしまうが、ユウリとしてはショッキングだったのかもしれない、なるべく表情に出さないように努めてなだめる。
    「自分の手持ちにいるポケモンの一部を知らないで食べてたのがショックだったのか。ヤドンはしっぽが抜けても痛みは感じてないらしいし、また生えてくるんだ。そんなに重く受け止めなくてもいいんだぞ。マホイップみたいにトレーナーと仲良くなるとクリームを味見させてくれるポケモンもいるし、草ポケモンや虫ポケモンのつくる蜜やかふんだんごを食べるのを目的で一緒に暮らしている人だっているくらいだから」
    「いや、それは別に平気なんだけど」
    「平気なのか……」
     気を使って言葉を選んだのに、肩透かしをくらう。
    「しっぽの燻製を使ったあぶりテールカレーがあんなに美味しいんだったら、採れたてのヤドンのしっぽはどんな味なんだろう? しかも二種類もいるなんて……味に違いはあるのかな、ガラルのヤドンの黄色はスパイスの色なんでしょ。だったらそんなの、そんなの絶対美味しいにきまってるもん。それを考え出したら、わたし……」
     切実な様子で一息でそこまでまくしたてたところで、ユウリの細い腰には不釣り合いなほどの力強い音でお腹が空腹を訴える。
     ユウリは今度は羞恥から赤く染まった頬を隠すように両手で覆って、上目遣いでじっとオレをみつめてくる。
    「だからホップにわたしがヤドンのしっぽを味見しないように見張っててほしいの」
     表情の破壊力と発言の内容との落差に混乱状態を食らいそうだった。
    「バトルとか、何かの拍子に抜けたときにちょっと食べてみるくらいなら、いいんじゃないのか。ヤドンたちもこんなに懐いてるんだし、きっとユウリに喜んでもらいたいと思ってるぞ」
     思い思いに過ごしていたヤドンは二匹ともこっちに寄ってきて、お互い相手のしっぽを口にくわえてオレたちを囲むような感じでもう一匹のお尻をおいかける形でぐるぐると回り始める。群れで生活する野生のヤドンがしばしば行うことが確認されている動きだ。リージョンフォーム間でもやるのか、ものすごく観察したいけど、まずはユウリの話をきくのが先だ。
    「それ! そのちょっと味見が一番こわいんだよ!」
    「怖いのか?」
    「だってちょっと食べてみてものすごく美味しかったらどうするの。ヤドンのしっぽが生えてくるたび、美味しそうだなって思っちゃうもん! 生え変わるたびにひっこぬいてカレーに入れるわたしをみたらホップどう思うの!?」
     想像みると、たしかにヤドンにとって痛みがないとはいえ、ちょっと……どうかと思うぞ。メディアにみつかったら「怪奇!手持ちのヤドンをおやつにするチャンピオン」なんて見出しをつけられてしまうかもしれない。
    「ほら、やっぱりダメだよ」
     オレの返事を待つまでもなく、表情で察したらしく、ユウリは唇をとがらせる。
    「どややん」
    「やぁん……」
     オレとユウリの周囲を回り続けていたヤドンたちがどちらかともなく石か何かに躓いたのか緊迫感のかけらもない声を出しながらドテリと重たそうに転がる。その拍子にぶちり、ぶちり、と二匹のしっぽがちぎれてしまう。
     文献にあったように、痛みも驚きもないのか、転んだヤドンたちは気にする様子もなくその場で思い思いの姿勢で地面に転がって怠けている。まぬけポケモンというほとんど悪口にしか聞こえない分類名は伊達ではないようだ。
    「あーっ!」
     ユウリは驚きの声を上げた後、ヤドンと共に転がっている二本のしっぽにキラキラとした視線を注いだ後、また涙目になってオレをみつけてくる。
    「うーん……、そうだ、ユウリ、ちょうどリージョンフォームポケモンのサンプルが欲しいところだったんだ。わるいけどそのしっぽオレにゆずってくれないか」
     思いつきだったけど、興味があるのは本当だ。それを聞いて、ユウリは安堵したように溜息をつく。
    「そっかー。研究のためならしかたないよね! わたしのヤドンたちのしっぽ、大事にしてね」
     持ち上げてみると意外とずっしりと重いしっぽを小脇に抱え、保存の処理のために研究所に戻ることにした。
     またしっぽが生えてきたらどうするつもりなのかはわからないけど、ユウリはすっきりとした表情で、とりあえず目下の問題は解決したということだろう。
    「そういえば、このあいだユウリが探してた本みつけたんだった」
    「ほんと? 借りて行ってもいいの?」
    「もちろんだぞ」
     たしかこのへんだった、と本棚から本を取り出して、頁をめくって内容を確認するふりをしてポケットに入ってたふせんをあるページにぺたりと貼り付ける。ガラルの森に生息するポケモンについての頁、ネマシュについての記述“頭の皿がとても美味しい。森のポケモンたちに食べられるが、一晩で再生する”とのことだ。
     好奇心旺盛な彼女のことだ。きっとこれを読んだらまた食への探求心が刺激されて頭を抱えることになるのは目に見えているのにこんないたずらをするのは、食欲と理性の間にゆれるユウリが妙に可愛くてもうちょっとみていたかったな、なんて。
     ユウリについてきて研究所の床でごろごろしていた二匹のヤドンがぼんやりとした視線でこっちを見たかと思うと、訳知り顔で「やぁん」と気の抜けた鳴き声を上げた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nezuno

    DONE2021年一作目
    とくに季節ネタではないです
    食いしん坊ユウリちゃんのよくわからない悩み事に付き合ってくれるホップのお話です
    推しポケモンと推しカプを並べたかったやつです
    「こんなことホップにしか頼めないの……!」
     バトル以外では普段マイペースなユウリが珍しく差し迫った表情でそんな言葉を口にしてすがってくるのを断る理由などあるわけがなかった。ライバルが困ってるとき力を貸すのは当然だぞ、なんて耳触りの良い言葉で二つ返事したものの、内心はユウリが困ったときに最初に頼るのがアニキをはじめとするリーグ委員会の大人たちや、他のトレーナーの誰でもなくオレだという事実に安堵とほんの少しの優越感を感じていた。
     だからどんな頼み事だって聞くつもりでユウリに言われるままに研究所の表に出て目にしたのは、彼女の苦悩の表情とは裏腹にのんきな光景だった。
    「ヤドンか。こっちは、ガラル以外の地方で見られる姿だな」
     生息地域ごとの環境や生態系の違いによって同じ種のポケモンでも姿やタイプが変化する、学術的にはリージョンフォームと呼ばれてる現象だ。ガラル以外の地域でみられるヤドンは──個体数でいえばこちがのほうが一般的な姿と考えられるだろう──のぼせたみたいな全身ピンク色で、しっぽの先だけが白い。ガラルのヤドンは額から頭部にかけて、それからしっぽがカレーみたいな黄色になっている。この 3326

    nezuno

    DONEポケマスにユウリちゃん実装決定後、ガチャ祈願でかいたポケマス時空のふわっとしたお話
    ユウリちゃんとメイちゃんがお話しているだけですが、ホプユウ前提
    カプというほどの絡みはないのでタグ無しで
    身じろぎをした拍子にベッド……ではなく、硬いベンチから転げ落ちそうになって慌てて飛び起きる。
    『ようこそポケモントレーナー、そしてバディポケモンのみなさん。ここは人工島パシオ』
     頭の上のスピーカーが繰り返すアナウンスでここが何処だったのかようやく思い出した。
     そうだわたし、ホップと一緒に水上バスに乗ってパシオに向かっていたんだった。座席に並んで二人で一冊のガイドブックを覗き込み、どこに行こうか、どんなトレーナーに会えるかな、なんてお喋りに夢中になっているうちに眠ってしまったんだろう。あたりの様子をみるに、ここはパシオの船着場のようだ。でも、どうにもバスから降りた記憶がないし、ホップともはぐれてしまったようだ。腰掛けたベンチの小脇にはさっきまで枕がわりにしていた荷物で膨れ上がったお気に入りのレザーボストン。足元には呆れたように「わふ」とため息を溢すザシアン。きっと眠りこけているわたしの代わりに荷物の番をしていてくれたのだろう。
     左手に妙な違和感がある気がして、空に広げた手をかざしてぼんやりと眺めてみるけどいまひとつ思い当たらない。
    「こんにちは、ポケモントレーナーさん! あなたはど 2361

    related works

    recommended works