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    Layla_utsusemi

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    Layla_utsusemi

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    一次創作【空蝉日記】のショートストーリー。初めて主人公が……喋っ、た…………。

    【空蝉日記 短編】下知された虚ろな愛憐他の新聞部員達との会議を終え、次週取り扱う記事の方向性を定め終えた私は、学校を後にするその前に一年の教室へと足を運んだ。

    私は目立つのか相変わらず周囲の後輩達からの目線が絶えないが、"彼"が居る教室の中は無人で、静かだった。それ程までに彼は避けられているのだろう。そしてそんな彼に自ら会いに来ている私も変わり者だ。

    「こんにちは、涼也。」

    私の挨拶に彼は反応を示さない。いつもの事だ。

    「今日もメモ帳、見させてもらうわよ。」

    特に返答を待たずに、私は彼の鞄を勝手に漁ると一つのメモ帳を取り出した。これもいつもの事。

    彼──茜見 涼也は、感情という感情を全て取り除いた……言うなれば、臓器があるマネキンのような子。


    しかしそんな彼には唯一、"人の噂話や世間話を耳にすると、一方的にその内容を聞き出してメモに取る"という習慣がある。理由は不明だ。

    私の友人による考察では……いや、それは長くなるからいいだろう。

    そんな特性ゆえ涼也の傍には誰も寄り付かないが、新聞部長であり常に"情報"を求めている私からすれば彼はネタの宝庫だ。

    そして私は、メモ帳に書かれていた日付の記載を見てある事を思い出す。

    「あぁ……今月末は母さんの誕生日だったわね。……そういえば涼也、貴方の……お母さんの誕生日は、いつ?」

    「……再来週の、金曜日です。」

    「再来週?もうすぐじゃない。」

    別に他人の家庭など興味は無いが……涼也の母親には、前に一度会った事がある。その時彼女は、息子と親しい人間が一人でも学校に居るという事実が余程嬉しかったのか、私に非常に良くしてくれた。

    「……何か、プレゼントでもあげたら?」

    「……何を、ですか?」

    「そうね……特に無いなら、無難に花、とか?」

    「……何の花ですか?」

    「うーん、カーネーションは母の日だものね……それは、光葉に訊いて。あの子の方が詳しいわ。」

    「……分かりました。」

    まるで一昔前のAIとの会話の様。
    だが涼也には世話になっているし、これぐらいならまぁ……いいか。

    その後、同じく後輩の小鳥遊 光葉曰く、涼也から突然『光葉くんに母さんのプレゼントに送る花について訊くよう、優奈さんに言われた』と話しかけられ、一緒に駅の花屋まで着いていって選んであげたらしい。


    ──全く……私から持ちかけた提案だってことまで、あの子の口から漏れるということを忘れていた。

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