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    暖(はる)

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    POIPOI 56

    暖(はる)

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    56の日。ディスカウントストアーにゴム買いに行く話

    #長晋
    changjin

    ゴムの日 デザイナーズマンションのモダンな寝室のベッドに清潔な場所はなく、放った体液と汗が染みついている。夥しい量を含ませたゴムが乱雑と捨てられている。
     お互いの境界線が分からなくなるほど抱きあっていた躯がふと離れる。
     早くと手を広げて待っていると、ゴムの入っていた箱を森が逆さに傾ける。
    「切れた、」
     視界を広げて未使用ゴムが落ちていないかと森が、ふぅっと張り付く赤い髪を上げ熱い息を漏らすだけで、高杉は酩酊してしまう、
    「早く……」
    太く逞しい首に腕を絡めれば、ぐっと視線が高杉だけに注がれる。
     欲しいとはしたなくも脚を拡げれば、シーツに流れる髪と変わらない紅く熟れた莟が露わとなる。
     これだけ欲を孕んでいるのに白濁一滴もないそこがヒクつく。
    「ねえ……」
    切ないと高杉が焦れったいと囁けば、森は魔羅を莟へ押し当てる。
    「外には出すから……」
    「やだ……ナカに出してよ、その方が君も気持ちいいだろう」
     腹を壊すと眉間に皺を寄せ森が高杉を諫めるが、逞しい腰に足を絡め高杉は止めない。
     気持ちいいと分かっているのに勿体ない、据え膳だ、満たされたい。よく廻る口で森を翻弄していくが、欲しくて堪らないのは高杉だ。
    「森君……お願い、」
     森の顔をじっと見据え牝の顔をし、高杉がほろほろと涙を流せば、森が観念して一回だけだと口にする。
    「あ、ぁ――……」」
    薄皮一枚ないだけなのに本来の熱を感じ取った高杉はそれだけで絶頂する。
     ふわふわと軽くなる躯は蕩けて自我を失いそうになる。離したくないと、森のガッシリとした躯に触れられる箇所全てで自分の身を支える。
     暫くして森も絶頂を迎える。とろとろに熔けたナカは魅惑的で幾度となく快感に達したのに新たな欲を目覚めさせる
    「あ、ぁ……、んぅ……っ」
     放たれた熱量と溢れんばかりの精液に酔いしれながら高杉は満たされていく。
     *
     あの後満たされた欲を掻き出すようにまた莟を暴かれた高杉は翌朝、指先すら動かせないでいた。
     漸くもぎ取った長期休暇の最終日を寝室で過ごすハメになるとはため息をついたが、不思議と後悔はない。いつもは行儀が悪いと、億劫な高杉をリビングまで連れて行き朝食を取らせるが、無理をさせたと森も自覚しているのか今日は温かな手製の茶漬けを寝室に運び、スプーンで掬うと高杉に食べさせていく。
     これはこれで悪くないと高杉はこのひとときを満喫し、そして知恵の回る頭で最も正解から遠い答えを導き出した。
     *
     社長業と言えば、最近こそスタイリッシュなイメージでメディアに取り上げられているが大体は悪役で描かれていることが多い。少なくとも高杉は前者だろうと口にすれば、秘書の阿国から冷めた目で見つめられる。そんなに見つめないでよとウィンクで愛嬌を取るが、彼女は手帳を開き華麗にスルーしていく。
     恐らくは愛しの恋人を見て精神を落ち着かせているのだろう。
    「週休二日、フレックスとは言いませんがもっとまめに休んでくださいな」
     大分前に流行った歌がうら若き女性から口にされる。休みたいのは承知だがこの案件が片付いたらとずるずると纏まった休みを取らなかった高杉は耳が痛い。
     一週間は休むようにと優秀な阿国は前々からスケジュールを調節していたのか、ゴールデンウィークに高杉を仕事から解放した。
     退屈だと浴槽に湯を溜めるのも面倒な高杉は少し高いスパへ足を運び、リフレッシュしマッサージチェアに座る。揉みほぐされていく躯は整ってきたが、手持ち無沙汰で落ち着かない。
     似たような仕事形態の信長に付き添っている森がゴールデンウィークに解放されるはずがない。阿国には悪いがこっそり忍び込んで仕事でもしようと考えていると、スマホにメールが受信される。「今から帰る」と短い言葉と共に、美少女二人を囲み、サングラスに梅の花をあしらったアロハシャツを着た森の写真に高杉は思わず吹き出す。
     周囲に眉を潜められるが高杉は気にしない。
     幸せ絶好調なのだから許して欲しい。
     それならばと森を出迎える準備をするために高杉は頭を切り替えていった。
    「ただいま」
     キチンと挨拶をし帰ってきた森に高杉はニコニコと出迎える。裸エプロンでお風呂にする・ご飯にする、それともなどとベタな台詞は森には通用しないため、大人しくデリバリーの料理を食べながら地元マフィアと危うく抗戦寸前となった土産話を聞いていく。
     アルコールもないのに良く笑うと森は感心していたがお互い様だろう。
     そうして当然のように寝室で躯を重ね合う。普段不健康がたたって休みを取る高杉が溌剌としているのに森は安堵し、いつもより情熱的に躯を弄る。
     互いの弾む息と軽く絶頂した、高杉の性の匂いが部屋を隠微な空間へと変える。
     いよいよと森がサイドテーブルに常備しているゴムを取り出そうと、引き出しを開ければ空であった。
    「明日から休みだから、生でして良いよ」
     気持ち良かっただろうと高杉は森の頬に手を伸ばすが、森は払いのけるとぎろりと冷たい視線が高杉に注ぐ。どうしてと高杉が森を上目遣いに見つめれば、躯を勢いよく押し倒される。
     ちぐはぐな行動に高杉が困惑していると、「躾直しだ」と耳元で躯を擽るような声で囁かれる。
     暴かれる期待と少しだけ森の考えていることが分からずに不安になり、高杉が身を丸めるとベッドから引きずり出された。
    「行くぞ」
     何処に行くのだと、高杉が森に問いただすが森は無言のまま出張先で買ったアロハシャツを素肌に通す。
     臨戦態勢だった魔羅は風船が破裂したように萎んでおり、どうなっているのだと高杉が口を開いたまま股間に指を差している。
     森はそんな高杉を気にせず、クローゼットから適当な服を取り出し、ベッドに行くと先に車に行っていると寝室を出て行く。
     どうしてこうなった高杉は甘い気分が消え去った寝室で一人寂しくジャケットとシャツを身に纏う。
     *
     メタリックなシルバーのワンボックスカーに乗り込むと片道10分程度のディスカウントストアーに到着する。奇妙なマスコットが鎮座するコンビニを若干広くした店の駐車場で森が高杉に無情に言葉を吐き出す。
    「ゴム、買ってこい」
    「はっ何言っている、それだけのために僕を連れてきたの……」
     生でしたいと補填しなかった高杉も悪いが、それだけのためにわざわざ車を出した森に高杉はため息を漏らす。
    「大体使うのは君だ、君が用意しておくべきだ。買ってこい」
     森はその言葉に頷いてはいるが、高杉の顎を掴むと唇を食み首筋に一つ痕を残す
    それだけで高杉が蕩けてしまいそうになるが、気をしっかり持たそうと反論を続ける。
    「だったら抱かねえ……」
    帰って寝るぞとエンジンを掛けようとする森に高杉はぎょっとする。
     目の前に恋人がいて抱かない選択肢があるのだろうかと、まじまじと森を見るが本気のようでアクセルに足をかけてる。
     どうしてと正解が見つからない高杉に森が外の冷たい空気を入れながら、ぼそりと呟いた
    「潰れてまで抱くのは趣味じゃねェからな」
     折角休み貰ったのだろうと続けられていく言葉に恋人の愛情深さを知る
    「え……あ、」
    分かったよ、買ってくる。高杉は観念し、まごつきながら車の扉を開けて店へと向かっていく。
     中にいる客を威圧するように森が入口まで着いてきたが、そこから先は一人だ。
     心地の良い空調が流れているはずなのに、暑くして仕方がない。
     喉も渇いている。ゴムを一箱買うだけだと高杉が店内を物色する。
     高級住宅地の裏手が寂れるのは必定で形だけディスカウントストアーを取っているが、繁華街のアダルトショップと変わらずカオスな空間を作り出している。
     セーラー服を着たマネキンや剥き出しのエネマグラが目に付く。
    「調教にオススメ」 最早隠していないポップに高杉は胸が締めつけられる。
     絆されてしまったがこれは調教ではないのか、今からでも文句を言ってやろうと引き返すが、見えないはずなのに黄金色の瞳が自分を見ている気配を車から感じる。
     頭がヤケに働きエネマグラから最低の事態を想像させてくる。
     逃げるようにその場を離れると監査の時期にやってくる強面の男が好きそうな柔らかなパットを素通りし、目的地にたどり着く。
     あくまでも避妊具としてパッケージこそ簡素だが、薄々、苺味、トゲトゲつぶつぶと奇妙な言葉が並んでいる。
     その中から定番の商品を手にするが、ふと置いてある鏡に映った自分と目が合う。
     首筋にキスマークをつけ、頬を染めて瞳を潤ませた牝の顔をした男がそこに映っている
     手にしているのは特大サイズ唄っている箱で、これをレジに運ぶ高杉は明らかに抱かれる側だと分かる。
    「う……」
     高杉はジャケットで必死にキスマークを隠す。抱かれるのは間違いないがこれではまるで自分が期待して買っているようではないかと、首を振る。あくまでこちらに主導権があるように装わなければと、周りをキョロキョロと覗けば、ファーが付いた手錠をみつけ、それをゴムの箱の上に載せ、下は入口にあったしいたけスナックでカモフラージュし、素知らぬ顔で高杉はレジへと向かった。
    「買ってきたぞ」
     息を弾ませ、レジ袋を突き出してきた高杉に森が首を傾げればゴムの箱に手錠とスナック菓子がある
    「これは、」
     袋から取り出した手錠を森は高杉の前に差し出す
    「君に使うのさ、これだけ頑張ったんだ。あとは好きにさせて貰うぞ」
    啼かせてやると高杉が胸を張るが、森はほーんと返事をすると素早くパッケージを破り、手錠を高杉に嵌める。
    「へッぇ……!森君!!」
    「行くぞ、」
     エンジン音と負けないくらいに高杉の心臓が跳ね上がる。
    「潰れてまで抱くのは趣味じゃねェからな」からと森は言ったが、明日生きてるかなと高杉は拝めない手でそっと月夜を拝んだ。
     *
    「ッ――!! ……~~~」
    最早言葉も発せず高杉が仰け反りながら絶頂する。
     絶頂の余韻はあるがそれでもようやく視界がはっきりしてくる。空になったゴムの箱がゴミ箱の捨てられており、漸く終わったと、ひとりごごちでいると箱を開ける音が聞こえてくる。
    「どうして……」
    二箱も買ったかと高杉があたふたしていると、準備しておくモノだろうと森が笑う。
     どうせこうなるだろうと出張先で買っておいたのだった。
     国産の質の良いゴムより付け心地は悪いがサイズはぴったりで、そのまま高杉の躯に覆い被さる
    「もう無理だぞ、孕む、絶対に孕む」
     ゴム溜まりが胎を突き上げる度に高杉の躯はとろとろに溶け、森のことしか考えられなくなる。欲しい欲しいと疼く躯が牡を求めてしまうのだ
    「ゴムしてるから孕まないだろう、」
     未開封のゴムの袋を高杉の唇に添え、彼の薄い腹をなぞりながら森が、ナカを掻き回していく
    「えっぁ、ぅ……あ……むり……あぁぁ――ッ」
     翌日出すモノを出し切った森とゴム越しでも散々に蕩かされた高杉が怠惰な一日を過ごしていると、「ハッピーホリデーゴムの日」と浮かれたメッセージと共に信長からダースのゴム箱が送られてきた
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