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    Cherry_7396

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    Cherry_7396

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    現パロ長晋 mrくんがイカれてるかもしれません。全体的になんか物騒。なんとなくで書き散らしたので雰囲気で読んでください。

    #長晋
    changjin

    お気に召すままに カランコロンとグラスの中の氷を揺らして一気に煽る。ロックグラスに満たされたウイスキーの味が広がり、アルコールが体内に染み渡る。度数は高いが酔うほどではない。
     キョロキョロと物珍しげに辺りを見回す高杉は森の服の袖を掴んだまま所在なさげに佇んでいる。
     何か飲むかと聞いても首を振るばかりで、目をキュッと細めて黙っている。いつもは騒がしいくせに今は借りてきた猫のように大人しい。
     来たいと言ったのはお前だろうに。
     ジッと固まって動かない高杉にどうしたものかと考える。ぼんやりとしている間に寄越される誘いをやんわりと躱す。躱しても躱しても繰り返される誘いにうんざりする。高杉と付き合う前ならば適当に乗っていたが、今は可愛い恋人が隣にいるので。いなくとも高杉以外と情を交わす気はないが。
     煙管を吹かした妙齢の女が意味ありげに微笑み、通り過ぎ様に高杉の顔に煙を吹きかけようとするのを片手で高杉を抱き寄せて防ぐ。睨みつけることも忘れない。
     顔馴染みの女だ。森が威嚇するのを面白がっているのが分かって眉を顰める。
     粉をかけるのは結構。それほど魅力的な男であることは否定しない。しかし高杉晋作は曲がりなりにも森長可の恋人であるので。遊びであれど恋人が口説かれるのを黙って見過ごすほど森の心は広くない。
    「いやだねぇ、怖い顔」
    「るせぇよ。他当たれ」
    「嫉妬深い男は嫌われるよぉ?」
     クツクツ笑う女は森の睨みなど子猫の威嚇程度にしか思ってないのだろう。その豪胆さは好ましいところだが、だからといって揶揄われるのは面白くない。
    「女泣かせの森長可がマァ、イイ顔をするようになったじゃないか」
    「……女泣かせ?」
    「おやあ?知らないのかい?」
    「おい、妙なこと吹き込むんじゃねぇよ」
     蛇のように笑う女の言葉に反応した高杉がパチリと瞬く。あまり聞かせたくない話だ。これだから昔馴染みの女はタチが悪い。いや、この女がタチが悪いのか。
     コロコロと鈴が鳴る声で笑う女がゆるりと笑う。余計なことを言うなと圧をかけるが、糠に釘、暖簾に腕押しだろう。
    「大事にされてンだねェ。いじらしいじゃないか」
    「見んな。俺のだぞ」
    「こりゃあ、たまげたものだ。相当惚れ込んでいるとみえる」
    「悪いかよ」
    「いいや?あの森長可が随分とヒトらしくなったと聞いたものでねェ。鬼か獣かと呼ばれた男が……大したものだ」
     感嘆の息を漏らした女はヒラリと手を振って笑みを浮かべた。追い払うようにして乱雑に手を振ると苦笑してスルリと離れる。引き際を心得ている女は厄介だ。イイ女であることは間違いないが、昔話をされるのは決まりが悪い。アッサリ引いてくれて良かったと思うべきだろうが、何やら引っ掛かりを覚えたらしい高杉が暗い顔をしているのが気にかかる。
    「……気にすんなよ」
     言ってどうにかなるとは思わないが、つい反射のように言い放った言葉は自分でもどうかと思うほどに弱々しい。ぎゅっと袖を掴む高杉の白い手に力が込められた。
    「森くん、女泣かせって言われてたの?」
    「……昔の話だ」
    「………ふぅん」
     ツンとそっぽを向く高杉の機嫌は悪い。
     当たり前か。誰だって恋人が過去遊んでいた話なんて聞きたくないだろう。
     瞳がゆらゆらと不安に揺れているのが頼りなくて、そんな顔をさせるつもりじゃなかったのにさせているのは自分だと思うと苦い気持ちになる。
    「……今は違う」
    「うん」
    「……お前以外抱く気はねぇよ」
    「………うん」
    「高杉、お前だけだ。お前が俺の恋人だ」
    「………う、うん」
    「俺が抱きてぇのはお前だけだし、泣かせてぇのも悦ばせてぇのもお前だけだ」
    「…………ぅ、ぅぁ」
    「つかお前以外で勃つかもわかんねぇしよ」
    「……………あ、あの、森くん」
    「甘やかしてぇし可愛がりてぇって思うのもお前が初めてだ」
    「………森くん、もう、いいからっ。わかったからっ!」
    「あとなんだ……添い遂げてぇって思ったのもお前が初めてだ」
    「森くんっ!」
    「んだよ……」
     弁明をと思ってつらつらと心の内を話せば焦ったような声が聞こえ、ピタリと止まる。やはり不安かと顔を覗き込めば、真っ赤に染まる高杉の顔があった。
    「……………。」
    「わっ、わわっ!」
     思わずぐいっとパーカーのフードを深く被らせる。この顔を他人に見せたくない。その一心だった。
    「え、なに?」
    「んな可愛い顔すんなよ。攫われんぞ」
    「えっ、えっ?」
    「隠しとけ。見せんな」
    「えぇ……?」
     チラリと横目で周囲を窺えば、あからさまな欲を孕んだ目が向けられている。ギロっと人睨みすれば即座に逸らされた視線を鼻で笑い、モゴモゴと抵抗する高杉を抱え込む。
    「ー、ダーツでもやるか?」
     なんとなく酒も飲まずに突っ立っているだけだと暇だろうと思って提案したものは我ながら良い選択なんじゃないだろうか。
    「ダーツ?あるの?」
    「やってんだろ。あそこ」
    「………ダーツ?」
     しがみつかれながら聞かれた問いに答えれば、引き攣った声が返される。
     何か可笑しかったかと首を傾げ、ダーツをしている人々を見る。
     やはり何も可笑しいところはない。
     通常より殺傷能力のある矢を用いて、磔にされた人間の的に投げるだけだ。森がこの店に来た当初からある店のゲーム。首と心臓が百点。目玉は八十点。手足は五十点。パーツごとに点数が変わる人間ダーツ。楽しめると思ったのだが、どうやら高杉はやりたくなさそうだ。
    「……もっと穏やかなのはないのかい?」
    「穏やか」
    「普通のゲームとか……」
    「ビリヤードならあんぞ」
    「あの、ビリヤードの玉が小さい……というかあれって……」
    「目玉だなぁ」
    「キューに使ってるのって……」
    「骨」
    「…………やらない」
     森の胸元に顔を埋めた高杉がいやいやと首を振る。死体を加工しているから脆くはないのだが。死体だって訳ありで処分に困ったモノを再利用しているわけだし、無駄がない。気分が乗らないのだろうか。とはいえ困った。他にあるものといえば、命をbetする賭け事しかない。あとはなんだ。殺し合いショーか実弾ロシアンルーレットか。しかしそうなると地下に行かなければならなくなる。森がいるから安全は保証されているが、解体サーカスなんて悪趣味なものを肴に酒を飲むつもりはない。大殿なら手を叩いて笑うんだけどな。そのあと焼き討ちするけど。森は首を狩ることができれば別に良いので文句を言ったことはない。
     困ったなぁと再度首を捻る。強請られたからには楽しませようと思ったのだが、高杉はどれもお気に召さないらしい。それどころか早く帰りたそうにしている。気に入らないなら仕方がない。
    「……潰すか?」
    「へ?」
    「気に入らねぇなら全員殺して店ごと潰すが……」
    「いやいやいやいやっ!」
     これも違ったらしい。気に入らなければ殺せば良いだろうただし一般人は除く。の精神で生きてきた森はほとほと困り果てた。首の一つや二つ見せれば笑うかと思ったのだが。高杉の求めるものが分からない。
     空になったグラスを弄びながら、胸元に抱きついたままの高杉の小さな頭を撫でる。
     もう帰った方が良いんじゃないか。この場所にこの男は似合わない。
     少しばかり逡巡し、判断を下した森はカウンターに金だけ置いて高杉の腰を抱く。
    「出んぞ」
     ピクっと反応した高杉はパチリと瞬いて、そろそろと森の手を取った。
     ふらふらと覚束ない足取りの高杉が人にぶつかりそうになるのを支えながら、ふと思う。
     おそらく、もうこの店に来ることはないだろう。自分の恋人が欲を孕んだ目で見られるのがこれほどまでに耐えがたいとは思わなかった。
     繋がれた手の先、初めて愛しいと思った男は森の変化などいざ知らず、きょとんと何も分かってない顔で森を見上げている。
     その顔が蕩ける様を想像して、誰にも見せたくないなァと沸き立つ独占欲を実感したのだ。
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