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    fuyukichi

    @fuyu_ha361

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    fuyukichi

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    100日後にくっつくいちじろ48日

    「最近さァ、ワンピ読み直しててよ~」
    「え、1巻から?」
    「そうそう、兄貴が単行本を知り合いから途中まで譲ってもらって、既に全部読んでるけど、この際、全部集めようぜってなってー」
    「じろちゃんも、一郎さんもホント、一度決めたら徹底的に集めるよね。画集とかまで」
    「まあな」

     二郎と友人三人はダラダラとお喋りをしながら帰路についていた。
    二郎も今日はバイトも萬屋の手伝いもないので古本屋に寄って集めている本の続きでも買って兄を喜ばそうなどと思っていた。しかし、そんな放課後の平和なひと時を壊す人物がいた。

    「おい、お前、山田二郎だろ」

     決して好意的な声色ではないトーンで名前を呼ばれた二郎。
    無言でダルそうに振り向くと、そこに二人、他校の生徒が立っていた。パンツが地面に擦れるほど、腰までウエストを落として穿いている学ラン。

    「誰だお前ら」
    「お前の兄貴に世話になったお礼に来たんだけど」
    「じゃあ俺じゃなくて兄貴に言えよ」

     知ってんだろ?萬屋。
    そう言うと男達は瞼をピクリと痙攣させて、それから小馬鹿にするように笑った。

    「一郎クンのところに行こうとしたけど、二郎クンが見えたから声掛けたんだよォ」
    「あ、そう。じゃあ俺から兄貴に礼伝えといてやるよ」

     じゃあな、と背中を向けて無気力そうに手を振る二郎。しかしそう簡単に諦めてくれるはずもなく、男は二郎の腕をがしっと掴んだ。

    「まァ待てって。お喋りしようぜ、じろちゃん」

     さっきまでの会話を聞いていたのか、わざとおちょくったような呼び方。
    二郎の友人のうち、最近転校してきたばかりのメンバーがビクビクと怯えているのを見て、二郎は他のメンバーに「お前ら先に帰ってていいぜ」と呼びかけた。結局、二郎の他にひとりだけ腕っぷしの強いメンバーがその場に残った。二郎は目の前の二人を無視するようにして、その友人に笑いながらいつものテンションで話しかける。

    「んでさ、ワンピの話なんだけど、お前好きなキャラ誰?」
    「えー、いすぎて決めらんねえ。二郎は?」
    「俺は初心に戻ってシャンクス推してんの。喧嘩売られても怒らないのとか格好よくね?」
    「あー、だから今そんな感じなの?」
    「そう、シャンクスリスペクト」
    「くだらねー」

     わざと気だるげに、喧嘩を吹っ掛けてきた二人を『眼中にない』ふうに扱う二郎とその友人に、とうとう二人はキレた。「おい」と視線を向けさせると鼻で笑って挑発してやる。

    「俺は山田一郎に用事があるんだよ、お前を相手にしてるヒマねえの。分かる?」
    「え、お前から声かけてきたんじゃん」

     どっと笑う二郎と友人。相手は顔を真っ赤にして反論してきた。

    「うるせえ!お前みたいなのが弟なら、どうせ山田一郎だって大したことねえんだろうな!三男も弱そうなくせに調子乗ってるみてぇな態度だし、鼻につくんだよお前ら三人ブクロでデカい顔しやがって」

     二郎は額に青筋を浮かべると鞄を友人に預けた。そして尋ねる。

    「お前、ワンピ読んでねえの?」
    「は?」
    「読んでねえのかって」
    「読んでねえよ、オタクきめぇんだよ」
    「じゃあ教えてやるよ、シャンクスは普段ちょっとのことじゃ怒らないけど、友達を馬鹿にする奴は許さねえんだよ」

     普通に沸点の低い二郎は怒髪冠を衝き、他校の不良にキレ散らかした。
    過剰にならない程度だが、二度と自分にも家族にも手を出したくなくなる程にはボコスカにした。普通に路上だと迷惑なので少しずれた路地でボコスカにしてやると、二人は、ワッと路地から飛び出して退散していった。

    「つか二郎、馬鹿にされたの友達じゃなくて兄弟な」
    「あ……そうじゃん」
    「締まらねえなァ」

     笑いながら鞄を背負い直していると、連絡をしていたのか、先程、退避させた友人二人が駆け足で戻ってきた。

    「大丈夫!?」
    「おう、もう帰ったぜ」
    「うわ、無傷じゃん!不良怖い!」
    「もう帰ろうぜ~、俺本屋行きたいんだって」

     そんな会話をしていたとき。友人のひとりが「あれ一郎さんじゃね?」と道路を挟んで向こうの通りを指さした。即座に反応して顔を向ける二郎。コンマ1秒で確かに兄であることを確認すると大きく手を振った。

    「おおーい!兄貴ー!今帰りー!?」

     道路を挟んでいるにも関わらず二郎の馬鹿でかい声は聞こえたようで、一郎も振り向くとヘッドホンを外して手を振り返してきた。

    「じゃ俺ここで」
    「おう、ばいばいジロちゃん」
    「おー」

     バタバタとやかましく駆けていった二郎。そんな背中を見送りながら友人達は苦笑いを零したのだった。

    「相変わらず態度、変わり過ぎだろ……」


    2024.12.10

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