初詣に行く台牧のお話 どこにいても主役にしかなれない人間がいるとしたら、きっと彼のことなんだろう。
カップの半分ほどになったコーヒーを惜しむように飲みながら、ウルフウッドは腕時計を見る。指定された約束の時間は既に三十分過ぎている。
年が明けて早々だが、行きつけの喫茶店はそこそこ混み合っていた。このあたりで、昼間から喫煙可能な場所は少ない。
その喫茶店は交通量の多い道路と舗装された歩道に面しており、その間には街路樹が等間隔に植えられていた。
夏には木陰を作り秋には紅葉、今の時期はクリスマスシーズンの余韻を残したLEDの電飾に彩られていた。
すっかり葉を落とした広葉樹が電飾のコードを巻きつけられて、じっと春を待っている。寒々しくも思えるが、四季で一番地味な冬木立の景色もウルフウッドは気に入っている。
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