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    Miruru_sweet

    @Miruru_sweet

    主に固定夢主ちゃんのお話載せます🧵
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    Side Story 06
    もっちゃん宅夢主🌾お借りしてます!

    幸せの証第一印象は“ごく普通の女の子”だった。何故ポートマフィアなんかにいるのだろう、と疑問に思ったのを憶えてる。


    初めて会ったのはポートマフィアに在籍中、治を通じて。マフィアに入った当初から話し相手になるよう森医師に云われていたらしいが、最年少幹部となり、彼女が一人になる時間も増えたため、主に拠点で仕事をする私に白羽の矢が立ったのだ。
    彼女は異能力者を対象とした医療班に属していたけれど、私は捕虜の受け渡しと拷問を担当していたから関わることもなかった。度々、働く姿を見かけることはあった。でも、如何しても此方側の人間には思えなくて距離を取っていた。


    ポートマフィアを出る時、治は彼女のことも連れていくと云った。私は結果それに賛同したし、後悔なんてしていない。むしろ、連れ出して良かったと思っている。

    矢張り、彼女が笑顔になる方法を一番知っているのは治なのだ。


    今日もまた、冗談を云う治とその隣に並ぶ彼女を見て、私は平穏な日常を確かめる。





    ✻✻✻





    「与謝野先生が居ないから、簡単な処置しか出来ないけど…」
    「否、それで十分だよ。有難う!」



    くるくると慣れた手つきで包帯を巻いてくれている彼女は___実 千穂は現在、事務員として探偵社で働いている。まぁ、敵に異能を悪用されないようにする為に治が提案した表向きの設定だけど。実際は与謝野さんの助手として仕事を請け負ってくれている。


    眉を下げて緊迫したような表情を浮かべる千穂を見て、そういえば初めて会った時もこんな表情だったなと思った。何故だったかな、嗚呼、私が返り血で汚れている時に会ったからか。
    血や危ないものが苦手って云ってた。相当怖かったよね。千穂は優しいから、怪我をしているのを見るのは厭だよね。ごめん千穂、有難う。
    …なぁんて、心の中で謝罪と感謝をしていれば、見られていることに気づいた千穂が困ったように視線を泳がせた。



    「えっと、如何かした?」
    「んー…千穂、ちゃんと休めてる?最近働き詰めみたいに見えるけど」
    「え?そう、かな…」



    千穂は元来真面目な性格をしている。自分にできることがたるなら何でもします!と事務員さんや他の社員の仕事を手伝ってくれているし、一度決めたことは曲げない。私は彼女のそういう所が好きだ。
    だけど、過去に起きた異能力の事故の影響もあってか、自分の優先順位が著しく低い。



    「最近起きた事件で、伊織さんも含めて皆が走り回ってる…。私なんかに出来ることはそれに比べたら少ないし、休んでいられないよ」



    残りの包帯を元の場所に片付け乍ら、小さく拳を作って云った。
    私は押し黙る。私の生き方は私が決めるし、それと同様に千穂の生き方は千穂が決めるべきだ。誰かが口出ししていいものじゃない。だから、千穂の誰かの為に出来ることをするという生き方を、それは違うと否定する権利は私には無い。

    でも、彼女をこちらの世界へ連れてきたのは私たちだから。不自由なく過ごせるように彼女を支える義務がある。



    「そっかぁ。千穂の的確で素早い手当てには凄い扶けられてる。頼りにしてるよ!
    …だからこそ、働きすぎて倒れないように休んでほしい気持ちもあるんだ」



    頭を撫でれば、擽ったそうにして目を閉じた。



    「今ね、こんなに忙しいのに治がいないの。困っちゃうよねぇ…それでなんだけど、もしよければ捜してきて貰えないかな?」



    ほら、私始末書書かなきゃいけないからさ。そう云って両手を顔の前で合わせて頼めば、千穂は肩を竦めて小さく笑った。書類仕事を引き合いに出したのは失敗だったかな、態とらしかったかも。
    でも、事件も一段落ついて、残りは後始末くらいだから街も落ち着いてる。一人で出歩いても危険は少ないだろう。



    「分かった。捜してくるね」
    「助かる〜!急ぎの用じゃないから、ゆっくりしておいで」



    ここの所ずっと医務室と事務室を往復していた千穂には、いい気分転換になるだろう。

    医務室から千穂が出ていったのを確認し、窓から外を見れば、ひらひらと手を振る治と目が合った。全く、何時も私に任せるんだから困ったもんだよ。心配だからと自分で連れ出せばいいのにね。素直じゃない。



    ___僕の居ない間、伊織に千穂を守ってほしい。



    千穂を紹介された際に云われた言葉を思い出す。珍しく素直に云うものだから、流石の私も驚いてしまった。

    事ある毎に女性を心中に誘う癖に、千穂は一切誘わない。他の女性たちは簡単に口説こうとするのに、千穂に対しては不器用な儘。


    ねぇ、織田作見てる?焦れったくて見てられないんだけど。
    太宰がそうするならいいんじゃないか…そう返すんだろうね、君は。そうだね、千穂と治が此の儘ででいいと云うなら、私は二人の友人としてただ見守っていればいい。


    千穂の笑顔は、私たちにとって幸せを象徴する証なんだから。



    「任されたからには、絶対守るよ」



    困ったように笑う千穂と、彼女の歩幅に合わせて足を進める治。二人の姿を見て、私は今日も平穏を祈るのだった。
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