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    カイネ

    @kainefry0

    成人済/fryとgrc・pngの夢女/腐カプ✗
    ⚠up後もたびたび作品の加筆・修正をします⚠
    fry落ち長編【二度、恋をする。】
    1〜4→ゼロ執の順番にお読みください。

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    カイネ

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    fry落ち(たまに📖沿い)
    夢主設定→教師 fryの高校の同級生 両片想いのまま卒業
    #decnプラス #decn夢

    #decnプラス
    decnPlus
    #decn夢

    二度、恋をする。35
    帝丹高校での仕事を終え、自宅マンションへと辿り着くと郵便受けの中身をチェックする。会員登録しているデパートからのお知らせなどに交じって白い封筒が入っていた。宛名が書かれておらず、裏返してみても差出人の名前も見当たらない。ナマエは不思議に思いながらもマンションの階段を上がって行く。ヒールの音が静かにコツコツと響いた。ナマエは鞄から花柄のポーチを取り出すと、キツネのキーホルダーが付いた鍵を鍵穴に差し込む。『ただいま…。』誰もいない部屋に向かって、帰宅の挨拶をする。一日履きっぱなしのヒールを脱ぎ、洗面所へと向かった。手を洗い、うがいを済ませると着ていた服を脱ぎ、部屋着へと着替える。普段と変わらない行動なのに何故か違和感を感じ、ナマエは辺りを見渡す。だが、特に変わった様子はない。ナマエは首を傾げながら脱衣所を後にした。簡単な夕飯を作り、テレビを見ながらそれを口を運ぶ。バラエティ番組から流行りの芸人のギャグが聞こえて来る。ナマエは食べ終えた食器を持ち、流しへと向かう。洗い物を済ませ、食後のコーヒーの準備をしている時、ふと白い封筒の存在を思い出した。お湯が沸くまでまだ時間がある。ナマエは郵便物の中から白い封筒を取り出しそれを開けた。封筒の中には一枚の便箋が入っており、ナマエは恐る恐る便箋を開く。『な、に…これ…。』開いた便箋には【君のことは守るから安心して】と書かれていた。手書きではなく、パソコンで打たれた物でどんな人物が書いたのか想像出来ない。ナマエは気持ち悪さを感じ、その便箋を思わず投げ捨てた。『…ど、どうしよう。』初めての事に頭がうまく回転しない。心臓も信じられない速さで鼓動を打ち、次第に呼吸も乱れ始めた。『(落ち着け…!落ち着け…!)』早鐘を打つ胸に手を当て、必死に呼吸を整えようとしていると、ふいに安室の笑顔が脳裏に浮かんだ。ナマエは、はっとしてスマホを掴むとアドレスから【安室透】の名前を探す。だが、探している途中で、その手が止まった。本当に今すぐ安室に頼らなければならないのか?ただのイタズラではないのか?そう思い出すと気持ちがスーッと落ち着き、呼吸も普段通りに戻る。『(…安室さんだって今頃、プライベートな時間を過ごしてるんだから邪魔しちゃいけない…。)』ナマエはスマホをテーブルの上に戻すと床へ落とした手紙を拾いあげる。そしてなるべく内容は見ないようにして封筒へと直した。

    一週間後――…「最近、アダ名ちゃん先生体調悪そうじゃない?」昼食のお弁当を広げながら園子は蘭と真純に問いかけた。「僕もそれ思った!」購買で買ったパンの袋を開けながら真純も同意する。「化粧で誤魔化してるみたいだったけど、目の下の隈もヤバいよね?」「…大丈夫かな、ミョウジ先生。」「ご飯食べたらさ、ナマエちゃんとこ行ってみない?」真純の提案に2人は小さく頷き、ひとまず昼食を取る事にした。

    ナマエは職員室にある自身のデスクに座り、朝作って来たお弁当を数口食べたところでため息をこぼし、蓋をする。一週間前から届くようになった白い封筒は、今朝で8通目となった。中身も【君のことは守るから安心して】から【あいつは必ず排除する】といった過激な内容になりつつあり、ナマエはどうしたものかと頭を抱える。「ミョウジ先生!」ふいに同僚の教師に名前を呼ばれ、顔をあげる。同僚の声がした職員室の入り口を見ると、副担任をつとめる2年B組の蘭、園子、真純の姿があった。ナマエは慌てて席を立つと、3人の方へと駆け寄る。『どうしましたか?』「ナマエちゃんちょっといいかな?」質問に質問で返され、さらに返事を聞く事なく腕を掴まれひと気のないところへと引っ張られる。『あ、あの世良さん?』「ナマエちゃんさ、何か悩み事あるんじゃないのか?」真純の単刀直入な質問にナマエは一瞬、目を見開く。しかし、すぐに笑顔を浮かべると困った顔をしながら口を開いた。『そりゃ先生だって人間だもの…悩みぐらいありますよ。でもね、みんなに心配されるような…「嘘よ!いつも明るくて優しいアダ名ちゃん先生がここ最近おかしいじゃない!」「ミョウジ先生…何か私達に言いにくい理由でもあるんですか?」蘭の言葉に肩が無意識に反応する。「アダ名ちゃん先生…私らに言いにくい事だったらさ、蘭のお父さんに相談してみたらどう?」『毛利さんのお父さんって、…あの探偵の?』「そうですよ、先生!父に解決出来そうな悩みだったら相談してみましょうよ!」蘭にぎゅっと手を握られ、澄んだ瞳に見つめられる。「ご飯も食べれないくらい悩んでるんだったら行動を起こしてもいいんじゃないかな?…なんでわかるのって顔してるね。ナマエちゃんの顔見たら誰だってわかるよ。自分では隠してるつもりだろうけど、隠し切れてないからね。」真剣な真純の表情にナマエは顔を俯かせた。『生徒に心配かけさせるなんて教師失格ね…。毛利さん…明日の夕方、学校が終わってから事務所にお邪魔しても?』「父には私から伝えておきます!」そう言って、蘭はもう一度ナマエの手を握り締めた。

    帝丹高校での仕事が終わり、ナマエは毎日届く白い手紙が入った紙袋を片手に毛利探偵事務所の下にいた。あとは階段をあがってしまえばすぐそこだが、なかなか一歩が出ない。階段を見上げては俯くを繰り返していると遊びから帰って来たコナンが駆け寄って来た。「ナマエお姉さん!小五郎のおじさんに会いに来たんでしょ?早く行こ?」そう言ってナマエの手を引くと、一気に階段を駆け上がった。

    降谷はナマエが毛利探偵事務所を訪れるのを今か今かと待っていた。昨日、毛利家に仕込んでいる盗聴器からナマエが食事もほとんど取れないほどの悩み事を抱えている事は分かった。だが、その内容までは分からない。ナマエが事務所を訪れたタイミングで降谷自身も事務所へ向かうつもりでいた。しばらくすると小さな紙袋を持ったナマエが現れ、事務所を見上げては俯くを繰り返していた。声を掛けるべきか否か考えていると、毛利宅へ居候しているコナンが帰って来たため、降谷は表へ出るのをやめ、足早にカウンター裏へと向かう。「すみません梓さん!毛利先生のところへ差し入れを持って行って来てもいいですか?」安室はそう言いながらも差し入れを持って行く準備を進める。「あ、安室さん!今日はこの後、マスターが来られるのでそのまま上がって貰っても大丈夫ですよ!」榎本の言葉に安室はお辞儀をすると、タイムカードを切り、サンドイッチとポットをふたつ持つとポアロを後にした。

    「…と言う事はなんですか…一週間程前からポストにこれが届き始めたと言うわけですか。」ナマエから預かった紙袋から白い手紙を取り出し、毛利とコナンはそれを眺める。『はい…最初の内はイタズラかな…と思ったんですが…。』そう言いながら5日目に届いた手紙を差し出そうとしたその時、毛利探偵事務所のドアがノックされた。「こんにちは、僕です!安室透です!差し入れ持って来ました。開けますよー!」明るい声がしたかと思うとお盆にサンドイッチとポットを乗せた安室がゆっくりとドアを開け、中へ入って来た。『あ、安室さん!』「あれ、ナマエさん?」「なんだぁ、お前…先生と知り合いか?」「えぇ、ポアロで知り合って色々とお世話になってます。…ところで、ナマエさんは毛利先生にご依頼ですか?」テーブルに広げられた白い手紙を見ながらナマエに問いかける。『えぇ…。一週間程前からこれがポストに…。イタズラかもしれませんが、蘭さん達のすすめで相談に来ました。』「拝見しても?」『あ、はい…。』ナマエから簡単な説明を受け、手紙を届いた順番に手に取る。
    1通目【君のことは守るから安心して】
    2通目【君は僕のお姫様】
    3通目【好きだ】
    4通目【愛してる】
    5通目【久しぶりに会えるね】
    6通目【明日は来てくれるよね?】
    7通目【何故来てくれないんだ?】
    8通目【あいつは必ず排除する】
    9通目【君に会いたい】
    「5通目辺りから具体的な内容になっていますね?届いたのは金曜日…【久しぶりに会えるね】と言う内容からこの手紙の送り主とは会った事があると言う事になりますね。」『この土・日は誰とも約束はしていません。自宅にいても気のせいだと思うのですが、視線を感じたり、違和感を感じるので朝から夕方まで図書館にこもってました。』「だから【明日は来てくれるよね?】と【何故来てくれないんだ?】なんですね。」「あと8通目にある【あいつ】も気になるよね?」ナマエの隣にちょこんと座り、8通目の手紙を指さすコナンに安室も頷く。「【あいつ】と言う事は、手紙の送り主の邪魔をしている存在がいると言う事ですね。」「ナマエお姉さんは、土・日に必ず出掛ける場所ってあるの?」コナンの問い掛けにナマエはしばらく考え込む。そのあいだに安室は持って来たポットからカップへコーヒーを注いでいく。毛利とコナンと自身用にホットコーヒーを淹れ、ナマエには胃に優しいホットミルクを注ぐ。「どうぞ。」ナマエは礼を伝え、安室から差し出されたカップを受け取り、口を付けた。『甘くておいしいです。』そう言うと、少し安心したようにほっこりと微笑んだ。『考えてみたんですが、必ず行く場所はないですね…。よく行くのはスーパーに本屋、喫茶店…と言っても毎回同じ場所に行くとも限りませんし…。』「うーん…ではこの【あいつ】に心当たりはありますか?【排除】と言う物騒な言葉を使っているところを見ると【あいつ】とはナマエさんと親しい男性ではないかと思いますが…。」『親しい男性…?』「ナマエお姉さんはお付き合いしてる男の人はいないの?」コナンの質問に安室、毛利の目がナマエに集中する。『お、お恥ずかしい話…そう言うのには縁がなくて。』「と言う事は、手紙の送り主が一方的に【あいつ】を敵視しているって事か?」毛利は口に生えた髭を触りながら8通目の手紙を見る。「そうなりますね。ナマエさん…この手紙が送られて来たのは一週間程前からでしたよね?」『あ、はい。』「ではここ最近、親しくしている男性はいますか?」『ここ最近………あの、親しいかどうかはわかりませんが、1人だけいます。』ナマエの言葉に毛利は身を乗り出した。「おぉ!そいつは誰ですか、先生!」『あ、それは…その……………………安室さんです。』その答えに毛利とコナンの視線が安室に突き刺さった。「お前が原因じゃねぇか!」そう言って毛利は力いっぱい安室の肩を叩いた。「痛いですよ、毛利先生!」「知るか!」毛利はぶっきらぼうにそう答えると、8通目の手紙を紙袋へと戻した。「これは安室の事だとして…あとは5通目からのこいつらだな…。」「手紙の送り主が安室さんの事を敵視してるって事は安室さん自身もこの人に会った事あるんじゃないの?」コナンはそう言うとナマエの向かいに腰掛ける安室を見た。安室は腕を組み、ここ最近の出来事を思い出す。「(ミョウジと再会した時は蘭さん達と一緒で近くにいた男はコナンくんぐらいだったな…。その次は、コナンくん達から送られて来たレシートを追いかけていたら偶然会って、その後に映画を観に行ったな。ここでも特に知り合いに会うような事はなかった。で、このあいだの買い物だろ?……いや、待てよ…あの日、ミョウジは鍵の入ったポーチを失くして…。そう言えばレシートを追いかけてたまたま会った場所もあそこの近くだったような…。)」しばらく考えて込んでいた安室であったが、次第に表情が強張って行く。そして、ゆっくりと視線を上げると、ナマエを見た。安室を心配そうに見つめるナマエと視線が交わる。そしてひとつの可能性へと辿り着いた。「その手紙の送り主が分かりましたよ…。」

    部活から帰宅した蘭は自宅のキッチンで料理するナマエと安室の姿に目を丸めた。「コナンくんどうしてミョウジ先生と安室さんがうちで晩ご飯作ってるの?」「色々あってナマエお姉さんがここに泊まる事になったんだよ。」「その色々って…?」キッチンの隣にあるテレビと食卓のテーブルが置かれた部屋でひそひそと話す蘭とコナン。「ナマエお姉さんがストーカーの被害に合ってるかもしれないんだよ。で、昨日届いた手紙に【君に会いたい】って書かれててね。もしかしたらと思っておじさんとボクの2人でナマエお姉さんの家のポストを見に行ったんだ。そしたら【明日会いに行くよ】って手紙が入ってて…。」「俺が先生に家へ泊まるようにすすめたってわけよ。」横から会話に割り込む形で毛利が姿を現す。手には例の手紙が握られており、蘭は眉間に皺を寄せた。「泊まるのはいいけど、お父さん…変な事考えてないよね?」「ばっ…!蘭!俺はやましい事なんかひとつも!」「どうだか!…安室さーん!」蘭は父親をジトリと睨むとキッチンで晩ご飯を作る安室へと声を掛けた。「あ、おかえりなさい蘭さん。」『毛利さん、おかえりなさい。急にお世話になる事になってごめんなさい。』「いいんです、先生!気にしないで下さい!」深々と頭をさげるナマエに蘭は慌てて頭をあげるように促す。「その事なんですけど、安室さん…お願いがあるんです。」「お願い…ですか?」蘭の気迫のこもった瞳に安室とナマエは互いに顔を見合わせた。

    蘭の願いを聞き入れた安室は夕食後、ナマエと共に毛利探偵事務所近くのコンビニへと来ていた。目的は、ひとつ。替えの下着を買うためである。「ナマエさん先にどうぞ。僕は先に飲み物を見て来るので…。」そう言うと安室は足早に飲料水コーナーへと向かった。残されたナマエは入り口近くに置かれている女性用ショーツと歯ぶらし、クレンジングセットを手に取り、カゴへと入れる。別に安室の家に泊まるわけではないが、この状況に心臓が張り裂けそうなほどうるさい。この事が鈴木さんにバレたら根掘り葉掘り聞かれそうだな…と考えながらナマエは飲料水コーナーへと向かった。「あ、選び終わりましたか?…と言っても、選ぶ程種類はありませんが。」安室はそう言うと飲料水がおさめられたケースの扉を開け、水を一本取り出した。ナマエも隣のケースを開けると、よく買う飲料水を手に取る。そしてそれをカゴへ入れるとレジへ向かった。

    コンビニ袋を下げ、毛利探偵事務所までの道を戻る。さりげなく車道側を歩く安室にナマエは好感が持てた。「しかし蘭さんのお願いが一緒に泊まる事とは思わなかったので、びっくりしました。」『私の事で色々迷惑をかけてすみません。』「迷惑だなんて…そんな風に思ってませんよ。むしろ修学旅行みたいで今、かなり楽しんでます。」そう言うと少年のような笑顔を浮かべ、ナマエを見る。その顔があまりにも元同級生の降谷に似ており、ナマエは目を見開いた。「どうしましたか?」ナマエの様子に気付いた安室は少し身を屈め、問い掛ける。『あ、いえ……やっぱり似てるなぁって思って……あ…ごめんなさい。こんな話、楽しくないですよね。』安室から視線を外し、少し足を早める。だがそんなナマエの白い腕を何かが掴む。ナマエは自身の腕を掴むそれが安室の手だと確認すると、ゆっくりと振り返った。「ナマエさんはその人の事が………あ、いえ。なんでもないです。…手、痛かったですよね。すみません。」それから2人は毛利探偵事務所まで言葉を交わす事はなかった。

    毛利探偵事務所へ戻ると蘭が2人の帰宅を待ち構えていた。手にはパジャマが二組握られている。「あの、これ。開けてないパジャマなのでよかったら使って下さい。」『え、でも…。』新品のそれを使っていいものか悩んでいると毛利が口を開いた。「もう何年もそのままなんです。気にしないで使ってやって下さい。」『じゃあお言葉に甘えて。』ナマエの返事に蘭は「脱衣所へ置いておきますね」と言い、風呂場へと姿を消した。それからしばらく蘭と一緒に用意したコーヒーを飲みながら5人はテレビを観たり、談笑を楽しむ。ナマエは久々に楽しい時間を過ごしているな…と感じていた。「あ、もうこんな時間。」ふいに時計を見た蘭が口を開いた。それに続き、皆が時計を見る。時刻は午後8時を少し回ったところだった。「お風呂にお湯はって来るので先生から順番に入って下さい。」蘭はそう言って風呂場へと向かう。ナマエは毛利と安室に『お先にすみません』と伝え、風呂へ入る準備をしようとした時、ふいにテレビを見るコナンが目にとまった。『ねぇ、江戸川くん。』「え、何?」『先生と一緒にお風呂入らない?』「うぇ?!な、なんで?!」『一緒に入った方が時間の節約になるかと思って。それとも私より蘭さんの方がいいかな?』「あ、いや…その…」ナマエに詰め寄られ、毛利に助けを求めようとそちらを見るも毛利はさっさと行って来いと手を振る。これは駄目だと思い、安室の方を見ると笑顔を浮かべてはいるが、目が笑っていなかった。「(ここで一緒に風呂になんて行ったら、ぜってぇー安室さんに恨まれるやつじゃねぇか!)」先日の杯戸中央病院でのやり取りからコナンは安室の事を組織の人間ではなく、公安の人間ではないかとふんでいるが、何故その安室がこんなにもナマエに対して執着しているのかが分からずにいた。「ボ、ボク1人で入れるから!」『もしかして照れてるの?』「ガキが一丁前に…。」毛利はそう言いながらテレビへと視線を戻した。「先生!お風呂の用意出来ましたよ…って、どうしたの、コナンくん?顔真っ赤だけど。」『お風呂へ誘ったら照れちゃって…。』「ボク、ちょっとトイレー!」コナンはそう叫ぶと逃げるようにして毛利の部屋へと逃げ込んだ。『あらら…フラレちゃいました。』ナマエはそう言うと、肩をすくめる。そして入浴セットを持ち、風呂場へと向かった。

    ナマエの後にコナン、蘭、毛利が続き、入浴を済ませる。安室は最後が良いと言い、現在入浴中である。蘭とコナンは客用の布団を置いている部屋からリビングへとそれを運び、ナマエが敷いて行く。二組の布団を敷き終える頃には安室も風呂から上がって来ていた。「あ…ペアルックですね。」入浴後、布団の上でスマホをチェックしていたナマエに対して安室が声を掛ける。ナマエはその言葉に顔を上げ、目の前の安室を見た。上着は水色で、スボンは青をメインとしたチェック柄。自身が着ているのもそれとは色違いではあるが同型の物だった。「わぁ!なんだか新婚さんみたいですね!」「なんだか照れます!ね、ナマエさん。」まんざらではなさそうな安室にコナンは苦笑いを浮かべる。「さてと、そろそろ寝るか!」テレビの電源を切り、毛利はあくびをひとつ落とす。蘭とコナンも毛利に続き、リビングを後にする。「おやすみなさい、ナマエお姉さん、安室さん。」リビングを出る際、そう言って手を振るコナンにナマエは手を振り返した。

    3人が出て行ってしまったリビングに静けさが広がる。コンビニからの帰り道…安室が聞こうとした質問をもし問われていたら、自身は何と答えていただろうか…ふとそんな事を考える。当時、降谷零と言う男に惹かれていたのは事実。しかし自身の思いを告げる事はなく卒業し、お互い別々の道へと歩んだ。今もこの淡い気持ちを忘れられずにいる事は確かだが、この安室透と言う人間に惹かれている事も事実。そんな事を考えながら安室を盗み見する。布団の上で胡座をかき、金髪に近い髪をタオルで拭いていた。タオルの隙間やパジャマから見える褐色の肌に既視感を覚える。『(あれはたしか…降谷くんとお揃いのキーホルダーを買ったその夜…。)』同じ班の子に誘われて男子の部屋へ遊びに行った時、降谷が今の安室と同じように胡座をかいて髪を拭いていた事を思い出す。見れば見る程、降谷に似ている安室に対して脳が錯覚する前にナマエは頭を振った。
    降谷はどうしたものかと悩んでいた。成り行きで毛利家へナマエと泊まる事となったのは良いが、まさか同じ部屋で一夜を過ごす事になろうとは。いくらなんでも欲望のままに行動を起こす事はないが、己が試される案件である。「(そもそもこの家の人間は俺の事を信用しすぎでは?)」信用されている事はいい事だが、このシチュエーションは駄目だろ…と心の中で呟く。ガシガシと髪をタオルで拭き、気持ちを誤魔化すがナマエから送られる視線が痛い。降谷は髪を拭いていたタオルを勢いよく取るとわざといつもよりも高めの声を出した。「さ!そろそろ寝ましょうか!電気、消しますね。」そう言うと安室はスイッチに手を掛けた。

    安室が電気を消してからどれぐらいの時間が経っただろうか。ナマエはなかなか寝付く事が出来ず、何度目か分からない寝返りをうつ。白い手紙が届くようになってからなかなか寝付けない日々が続いており、ナマエは小さなため息を漏らした。「…眠れませんか?」背中越しに安室の声が聞こえ、ナマエはゆっくりと身体を起こし、安室の方を見た。カーテンの隙間から漏れる月明かりが、安室の輪郭を捉える。ナマエ同様、布団から身体を起こした安室の青い瞳に見つめられ、言葉が出ない。「眠れませんか?」もう一度問われ、ナマエは小さな声で『はい』と答えた。「……無理もない。あんな手紙が何通も届いて毎日不安だった事でしょう。」安室の優しい声がナマエの心を刺激し、気付けば大粒の涙が頬を伝っていた。「…よく我慢しましたね…。でも、もう我慢しなくていいんですよ。」安室は両手で顔を覆い、声を押し殺して泣くナマエの頭に優しく触れる。手のひらのぬくもりを直に感じ、ナマエは涙を堪える事が出来なかった。

    しばらくすると落ち着いたのか乱れていた呼吸を整え、ナマエは顔を上げた。薄暗い部屋だが、頬に残る涙の跡が確認出来る。安室はナマエと向かい合うように座り直すと、右手の親指で目尻に残る涙を拭った。「落ち着きましたか?」『は、はい…ごめッ…!』謝罪の言葉を告げようと口を開くとその口を安室の人差し指で制される。「“ごめんなさい”なんて言葉は聞きたくありません。」『……ありがとう、ございました。』「どういたしまして。…さてと、眠れそうですか?」『はい、何とか。』再び布団へ潜り込み、安室の方を見る。すると褐色の大きな手が目の前に差し出された。「ナマエさんが嫌でなかったら、手を繋いで寝ましょう。」ナマエは何も答えず、その大きな手に自身の手を重ね合わせた。触れ合った手がじんわりと温もりを共有する。その温もりに安堵のため息を漏らすと、ナマエの意識は眠りの世界へと落ちて行った。

    カーテンの隙間から差し込む朝日と小鳥の鳴き声にナマエの脳が覚醒する。目を開き、まず飛び込んで来たのは見慣れない天井。そして次に自身の左手に違和感を感じ、そちらを見た。視線の先にはナマエの小さな手を掴んで離そうとしない安室の姿…どうやらまだ眠っているようである。ナマエは包み込まれた手からゆっくりと手を引こうとするが、びくともしない。『安室さーん。』少し身体を起こして安室の名前を呼んでみるが、起きる気配はない。ナマエは身体を起こし、安室の方へと這う。繋がれたままの手がなんだか気恥ずかしい。ナマエは眠る安室の肩に繋がれていない方の手で触れ、そして軽く揺する。『安室さん、朝ですよ?』身体への刺激に安室の瞼が微かに反応したかと思うと安室は閉じている瞳を一度だけぎゅっと、閉じた。そしてゆっくりと目を開けると、青い瞳がナマエを捉える。「ん…あぁ…朝、か。」普段とは違う少し砕けた口調と、髪をかきあげる姿にナマエの胸が高鳴る。「…あぁ、おはようございますナマエさん。よく眠れましたか?」先程とは違い、普段の口調に戻った安室はにっこりと微笑みナマエに問い掛けた。『あ、おはようございます…久々によく眠ったように思います。』「それはよかったです。」「“それはよかったです”じゃねぇーよ!なぁに朝っぱらからいちゃついてんだ!」いつの間にか、あくびを噛み殺す毛利がリビングにやって来ていた。「おはようございます、毛利先生!いちゃついてるわけではなくて、これは安眠のためのおまじないですよ。」「けっ!屁理屈はいいからさっさとその手を離せ。もうすぐしたら蘭とガキが起きて来るぞ。こんな状況見たら何て言うか…。」そう言いながらキッチンへと姿を消す毛利の後ろ姿を見送り、安室とナマエは静かに手を離した。

    降谷はガラスの貼り紙を見て、口角を上げた。「(これで時間が絞れるな…。)」被っているキャップに手をかけ深く被り直すと降谷は踵を返し、毛利探偵事務所へと足早に戻った。毛利家の玄関からリビングに入ると朝食の準備に勤しむナマエの姿が目に入った。蘭から借りたエプロンに身を包み、テーブルへ皿やコップを並べている。そんなナマエの後ろ姿に自然と口元が緩んだ。『…よし!……あ、安室さん!どこに行ってたんですか?』食器を並べ終え、キッチンへ戻ろうとしたナマエは安室の存在に気付き、声を掛ける。「ちょっと朝の散歩に行ってました。」毛利家より勝手に拝借したキャップを元の場所へ戻し、テーブルを覗き込む。「いい匂いですね!美味しそうな卵焼きだ。」そう言いながらつまみ食いしようと手を伸ばす。だがその手を軽く叩かれ、安室は目を丸めた。『安室さん…手を洗ってからですよ。』「そうですね…すみません。あまりにも美味しそうだった物で。」『口に合うか分かりませんが、手を洗ったらご飯にしましょう。』ナマエはそう言うとお盆を抱えてキッチンへと足早に姿を消した。安室も洗面所へと向かうべく、踵を返す。そんな2人のやり取りを黙って見ていた毛利はやれやれと言った風に新聞へと目を落とした。

    「それではナマエさん、午前の授業が終わったら電話下さい。学校の前まで迎えに行きますから。」『分かりました。校長には話を付けているので終わったらすぐ連絡しますね。…それでは、行って来ます。』「はい、行ってらっしゃい。」安室はにっこり微笑み、ナマエを送り出す。「ねぇ、コナンくん。先生と安室さん…いい感じじゃない?」まるで奥さんを送り出す主夫のような安室に蘭は頬を赤らめ、そうコナンに耳打ちする。「そ、そうだね。」コナンは乾いた笑いを漏らしながらランドセルを背負い直した。ナマエ達を見送った降谷は一度自宅へ戻り、ヤカンを火にかけた。そして急須に抹茶入りの緑茶の葉を入れ、マグカップを用意する。湯が沸くまでのあいだに盗聴器の有無を調べる機械を鞄へと放り込んだ。「………これが反応しなければいいが…。」そう呟きながらも嫌な予感がする。降谷は小さなため息をついた。「………近くに居ながら何やってるんだ、俺は。」ナマエに届いた手紙の内容を思い出し、握り締めた拳をテーブルに叩きつける。急須とマグカップが軽くぶつかり、音を立てた。降谷は苛立ちをあらわに髪をかきあげ、ガスを止めると沸かしかけていた湯を流し台へと捨て、鞄を掴む。頭に血が昇っていては冷静な判断は出来ない。降谷はナマエを迎えに行く時間まで愛車を走らせ、頭を冷やす事にした。

    昼の1時すぎ――…ナマエと毛利を乗せたRX-7が名前の住むマンションの駐車場に止まった。前回、安室に部屋の前まで荷物を運んで貰った事があったが中へ招くのは初めてで、ナマエは少し緊張していた。キツネのキーホルダーが付いた鍵を穴に差し込み中へ入ろうとすると、安室に肩を掴まれた。「…僕が先に入ります。毛利先生、ナマエさんをお願いします。」もしもの事を考え、安室が先に玄関へと入る。玄関には女性物の靴が何足が置かれているが、男物の靴はない。ゆっくりと玄関からリビングへ向かうも、人の気配は感じられず、安室はナマエと毛利に声を掛けた。「今から全室まわって盗聴器の有無を調べますね。ナマエさんは僕が探す部屋の中央でケイタイに入っている音楽を最大音量で流して下さい。」『わ、わかりました。』ナマエは鞄からスマホを取り出し、音楽を再生する画面を開く。
    そしてリビングの中央に立つと、それに入っている波土禄道の曲を流した。安室は持っていた鞄から盗聴器を調べる機械を出しスイッチを入れる。《キュオオオォ…》と機械が反応し、安室はナマエに聞こえないように軽く舌打ちをした。「……反応がありますね。」テレビの近くに近付いた瞬間、機械が《ホォォォォン》と強く反応する。テレビの裏を覗くと、コンセントの穴がふたつあり、テレビのコンセントと何も刺さっていないコンセントタップがあった。「………。」安室は無言でコンセントタップを外すとそれを持って来ていたビニール袋へと入れた。

    「全部でみっつ…リビングと寝室…そして洗面所。」『………。』数の多さにナマエの顔が青ざめる。毛利はそんなナマエを気遣い、ソファーへ座るよう促した。「毛利先生…ナマエさんをお願いします。」安室はそう言うと踵を返し、洗面所へと向かった。中へ入ると一通り部屋を見渡し、洗面所に飾られている鉢を持ち上げる。鉢には小さな穴が空いており、向こう側にレンズのような物が見えた。降谷は眉間に皺を寄せ、鉢に入っている観葉植物と土を取り出す。パラパラ…と土が零れた。「……こんな物までッ…!」鉢の底から見つかった小型のカメラを取り出すとスイッチを切り、ポケットへと忍ばせる。そして観葉植物を鉢へ戻し、降谷はリビングへと戻った。「で、手紙の送り主はいつ来るんだぁ?」「…きっと送り主はナマエさんが何時に帰宅するか把握しているでしょう。だいたい帰宅する前にポストへ手紙が入れられているようですし…。」
    「なんで帰宅前って分かるんだ?ポストだったらいつでも入れれるだろ?」毛利の疑問にナマエも同感と頷く。「昨日、毛利先生とコナンくんにポストの中を確認して貰いましたよね?その時、あの手紙はどこにありましたか?」「どこって…ポストの一番上………あ。」「そう…郵便配達時間は午前10時~午後5時…配達員によって誤差は出ますが、だいたいこの辺りは午後4時~5時のあいだに郵便物が配達されているみたいですね。」『…と言う事は5時以降にあの手紙が入れられている可能性が高いと言う事ですか?』ナマエの答えに安室は大きく頷いた。「ナマエさんが帰宅する時間がだいたい夜の7時前後…。」「それじゃあ7時頃にそいつが来るってわけか?」「えぇ…手紙には【待っている】ではなく、【会いに行く】と書かれていた事から待ち伏せの可能性は低いでしょう。」安室はそう言うと壁に掛けられた時計を見る。時刻はそろそろ夕方の5時を迎えようとしていた。

    玄関に背を向ける形で、ナマエはリビング中央に座っていた。テレビも付けずに無言で壁に掛けている時計を見つめる。時刻は夜の7時を少し過ぎたところだった。カチャリ――…背後から鍵が外れる音がし、ナマエの肩がビクリと揺れ、そして膝の上の拳をきつく握りしめた。大丈夫、大丈夫と何度も心の中で繰り返し、早まる鼓動を落ち着かせようと試みる。だが無音の室内にフローリングの軋む音が響き、ナマエは息を止め、両目を瞑った。「そこまでですよ、宮本隆さん。」安室の声にナマエは瞑っていた目を開け、ゆっくりと後ろを振り返った。足元から徐々に顔の方へと視線を上げる。『………ッ!』「なんでお前が、ここに?!」リビングの壁に隠れていた安室に対して驚いた表情を浮かべる宮本。「それはこちらのセリフですよ、宮本さん?何故あなたがナマエさんの自宅の鍵を持っているんですか?」安室の言葉に宮本は持っていた鍵を手の中へと隠す。その行動をナマエは見逃さなかった。『………もしかしてポーチを忘れたあの日…?』「!」その言葉に宮本の目が安室からナマエを捉えた。「この部屋の鍵はマンションでよく見られるディックタイプ…業者に頼めば5分もあれば合鍵を作る事が出来ます。次に…ポーチの中に入っていた保険証などから名前さんの自宅を知り、部屋番号はナマエさんの後をつけ、調べたのでしょう。」「ッ…………!」宮本は安室を睨みつけ、拳を握りしめる。微かにその拳が震えており、ナマエは恐怖を感じた。「この盗聴器を設置したのもあんただな?」安室の横にいた毛利がビニール袋に入った盗聴器を見せる。「そんな物知らない!俺じゃない!」「…今はなんとでも言えます。しかしあなたの自宅を調べれば分かる事ですよ?あなたがポストに入れた手紙もそうです。あなたのパソコンを調べると証拠が出て来るでしょう。…あなたは今まで店の営業時間を10時~20時にしていたのにも関わらず、一週間ほど前から18時には店を閉められていますよね?ポストに手紙を入れ、帰宅したナマエさんの行動を盗聴するのが目的だったんじゃないですか?!」安室の容赦ない追い込みに宮本の顔が歪み、歯を食いしばる。「お前が!お前が、俺達の仲を邪魔するから悪いんだろ?!嫌がる彼女を抱きしめたり、店で2人の時間を過ごしていたのに連れ出しやがった!彼女がポーチを取りに来た時もそうだ!お前は無理矢理彼女を連れて帰った!まだ俺と一緒に居たいと目で訴えかけていた彼女を!お前は!挙げ句の果てには、俺に会いに来ようとしたあの日、言葉巧みに店の前から連れ去った!!」宮本は早口に自分の思いや怒りを吐き出すと安室へ拳を振り上げ、殴りかかろうとした。『安室さん!』「ふッ…!」殴りかかろうとする宮本を素早くかわし、安室は宮本の腕を取ると後ろ手に締め上げた。「うぁ…!」ギリギリと腕を締め上げられ、宮本の口から声が漏れる。「…宮本隆。あとは警察で話を聞くからな。」毛利はそう言うと、警察へと連絡を入れた。

    生活安全課の警察官が宮本をパトカーへと押し込む。安室は近くにいた警察官へポケットに入れていた盗撮機を渡す。安室自身の指紋が付かないようにハンカチへと包まれたそれはビニール袋の中へとおさまった。一通りの事情聴取を終え、警察官達が引きあげたのは夜の10時を過ぎた頃だった。安室と毛利はひとまずの解決に安堵のため息を漏らす。だがナマエは未だ不安な表情を浮かべ、キッチンの椅子に座っていた。そんなナマエの様子を見ていた毛利は安室を呼び寄せる。「何ですか、毛利先生?」「お前、もう少しここにいられるか?」毛利の質問に安室は小さく頷いた。「俺は歩いて帰るからよ、お前…もうちょい先生の傍にいてやれ。」毛利はそう言うと安室の肩を押し、自身は玄関へと向かう。安室はそんな毛利の背中を見送ると踵を返し、椅子に座るナマエに声を掛けた。「……大丈夫ですか、ナマエさん?」安室の声に肩が揺れる。ゆっくりと顔を上げ、それが安室だと理解するとナマエは小さな声で『あ…はい』と答えた。その“はい”が本音ではない事は、ナマエの顔を見れば一目瞭然で安室は眉間に寄せる。安室はナマエの前へしゃがむと膝の上できつく握られた拳にそっと触れた。「ナマエさん…あんな事があったんです。無理しないで下さい。」『……あ、むろ…さん…。』「さぁ、ゆっくりと深呼吸しましょう。」そう言って安室はナマエを見上げた状態で深く息を吸い込み、吐いた。それに習い、ナマエも深呼吸する。「…落ち着きましたか?」安室の問い掛けに対して首を縦に振る。「それはよかったです。…手もほら…力が緩んでますよ。」いつの間にかきつく握り締めていた拳が解かれ、安室に優しく握られている事に気付き、ナマエの頬が赤らむ。「さて…ナマエさんも落ち着いた事ですし、僕もそろそろ帰りますね。」安室はそう言うと名残り惜しそうにナマエの手を離した。『…こんな時間までごめんなさい。』ナマエは安室のぬくもりが残る手を握ると椅子から立ち上がった。そして玄関へ向かう安室を見送る。『あの…今日はありがとうございました。』頭を深々と下げ、安室に感謝の気持ちを伝える。「いえいえ!…また何かありましたらいつでも連絡下さい。……では。」玄関のドアを開けようと踵を返し、ドアノブへと手を伸ばす。そんな安室の背中を見つめていたナマエだったが安室が帰り、この部屋で1人になってしまう事への不安が押し寄せ、気付けば安室の服の裾を掴んでいた。「え?」『え?…あ、ご、ごめんなさい!』無意識の内に掴んだ裾から手を離す。だが次の瞬間その手を掴まえられ、気付いたら安室の腕の中にすっぽりとおさまっていた。『あ、安室さん?!』「…僕だって本当はナマエさんを1人残して帰りたくはないんです。でも、好意を抱いている女性と2人きりで何もしない自信なんてありません。ナマエさんを傷付けたくない。…なので、今日はこのまま帰ります。ゆっくりお風呂に浸かって、疲れを落として下さい。」安室はそう言うと軽く微笑み、ナマエのマンションを後にする。ナマエは呆然と安室が出て行ったドアを見つめていたが、膝から崩れ落ちるようにしてその場に座り込んだ。

    ○名前変換サイトで連載していた作品です○
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    カイネ

    MOURNINGpng夢(?)
    ⚠タヒネタ・夢主コロしてます 鬱展開苦手な方は注意⚠
    #decnマイナス
    書きたいひとコマを書いただけ。4⚠閲覧注意⚠目の前には同僚Aが横たわっていた。しつこく言い寄られ、ただ軽く突き飛ばしただけなのに動かなくなった同僚Aと突き飛ばした感覚の残る両手を交互に見つめ、ナマエは歯をガチガチと震わせる。どうしようどうしようどうしよう…頭の中で警告が鳴り響くが足がすくみ、身体は動かない。「ナマエ?」不意に背後から声を掛けられ、ナマエが慌てて振り返るとそこには首を傾げ、こちらを見るグレースの姿があった。『グ、グレース…わたし…どう、しよう…』今にも崩れ落ちそうな足を何とか奮い立たせ、震える手でグレースにすがればこの場の状況を瞬時に理解したグレースの瞳の色が変わった。「…まずは“コレ”をどうにかしないとね。」グレースは落ち着き払った様子で同僚Aだったモノを静かに見下ろす。この状況がまるで日常生活の一部であるかの様に錯覚するほど、平然とした態度のグレースにナマエは言葉が出ない。「彼…最近は仕事がうまくいってないって愚痴ってたわね。」『…え、えぇ…何をやっても、空回りだ…って…』「なら、自殺として処理しましょう。」同僚Aの亡骸に近付くとグレースは頭を持ち上げる。「あぁ…頭の打ち所が悪かったのね。まぁ海にでも捨てれば何とかなるわね。」パッと手を離すと同僚Aの頭が床へゴトッと落ちた。「遺書を用意して、思い詰めた様子でドライデッキの方へ向かってたとでも言っておけばどうにかなるでしょ。」変わり映えのしない潜入生活に退屈を覚えていたピンガはグレースの仮面の下でほくそ笑むとナマエの身体をそっと抱き締める。「ふふ、これでワタシ達…共犯、ね。」にっこり微笑むグレースの目の奥は一切笑っていない。ピンガは退屈な日常を壊してくれたナマエに感謝の念を抱きながら優しくナマエの髪を撫でた。「(平和ボケした奴らに囲まれてうんざりしてたところだ。せいぜい愉しませてくれよ、ナマエ。)」
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    カイネ

    MOURNINGfry夢(?)
    夢主設定→fryの部下 霊感持ち
    #decnプラス #decn夢
    霊感持ちのfryの部下がK組とわちゃわちゃする話。物心が付いた時からなんとなく生きてる人間、死んでる人間の区別はついていた。でもそれを口に出して言うと周りの大人達は皆、嫌な表情を浮かべ、冷たい視線で私を見た。それが身内であっても、だ。「気持ちの悪い子」のレッテルを貼られ、小さい頃はたびたび居心地の悪い思いをして来た。だから大人になった今では俗に言う幽霊とは一切関わらないように気を付けている。なのに…なのに…『(どうして私の上司にはあんなにたくさんの幽霊が憑いてるの!?)』こちらに背を向け、風見さんと話すのは上司の降谷零。その背後にはここ最近になって現れた4人の男の姿があった。爪楊枝を咥えたガタイのいい男はダテ。顎髭を生やした優男はモロフシ、後ろ髪が長めの色男はハギワラ。そして癖っ毛でサングラスをかけたスカした男はマツダ…と言うのが観察していて分かった名前だ。おそらく、警察関係者なのだろう。まぁこの4人…とにかくうるさいのだ。会議中だろうが、捜査中だろうがとにかく降谷さんの後ろであーだこーだと話すもんだから集中する事が出来ない。おかげで私は捜査資料を何度も読み返すハメになっている。「おい、ミョウジ!」『は、はい!』不意にこちらを振り返った降谷さんに名前を呼ばれ、姿勢を正す。「この前、頼んだやつだが…」『はい、それでしたら…』先日、降谷さんから頼まれていた資料を取り出そうと持っていた鞄に手を突っ込む。すると頭上から覗き込まれる感覚に一瞬、手が止まってしまった。「いつ見てもちんちくりんな女だな。」「えー俺は可愛いと思うけどなぁ〜?マスコットみたいで!」マツダとハギワラだ。自分達の姿が視えていないと高をくくり、いつもこうやって言いたい放題言って来る。「でも公安で働いてるって事は優秀って事だろ?なぁ、諸伏?」「そうだね…女性の登用は狭き門だと思うからここにいるって事はかなり優秀だと思うよ。」「ようするにゴリラみたいな女って事だろ?」どこをどう解釈すればそうなるのか、マツダと言う男は私に対して【ゴリラみたいな女】のレッテルを貼りたいようだ。せっかくモロフシの言葉で上がった気分もだだ下がり、私はバレないようにマツダを睨みつけた……つもりだった。「おい、お前…俺達の事が視えてるだろ?」睨みつけた先には私の視界に入る様、わざわざしゃがみ込んだマツダが居て、しっかりと目が合った。私は突然の出来事に驚き、不覚にも平静を失ってしまう。そん
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    カイネ

    MOURNING⚠🎞沿いでネタバレ注意
    夢主設定→grc(png)の同僚で恋人同士
    #decnプラス #decn夢
    書きたいひとコマを書いただけ。2パシフィック・ブイ メインルームーー…巨大なモニターの下で作業を進めるグレースにナマエは近付くと『お疲れ様』と声を掛けた。「あら、ナマエ!お疲れ様〜」グレースはにっこりと微笑むと座っていた椅子から立ち上がる。『今、直美から連絡があったんだけど、もうすぐしたら警視庁の方々がこちらに来られるそうよ。』「分かったわ。」グレースがそう返事したと同時にメインルームに繋がる大きな扉が開く。二人がそちらを見やるとパシフィック・ブイの局長を務める牧野とエンジニアである直美、そして警視庁から来たと思われる男性二名と小さな男の子がひとり、扉をくぐって中へと入って来るのが見えた。『子ども?グレース何か聞いてる?』と隣を見上げれば、グレースはさぁ?と肩をすくめる。一体、どう言う経緯で子どもが混じっているのか分からないまま、牧野によるスタッフの紹介が始まった。ナマエとグレースはよく分からないままに牧野へと近付いた。「では、メインスタッフを紹介させてください。」巨大なモニター下のコンソールまでやって来た牧野がそう言って順番にエンジニア達を紹介していく。グレース、レオンハルト、エド、直美と順番に紹介され、みな各々にアクションを返す。ナマエはグレースの陰でメインスタッフ達へ尊敬の眼差しを向けていた。「…そしてグレースの隣にいる彼女がメインスタッフのサポートをしている日本出身のナマエ。」牧野の紹介にその場にいる者の視線がナマエに注目する。まさか自分まで紹介されるとは思っていなかったナマエは慌てて背筋を伸ばし、『よ、よろしくお願いします!』と一礼した。そんなナマエに「緊張しすぎよ〜」とグレースがナマエの背中をポンと叩く。「ケッ!仕事中にイチャついてんじゃねぇぞ。」その様子を見ていたレオンハルトがボソリと悪態をつく。そんなレオンハルトにグレースは厭味ったらしい笑みを浮かべ、「あら?“ワタシ”の可愛い“彼女”がそんなに羨ましいの?」と煽る。『ちょ、グレース…』大勢の前で“彼女”と断言され、ナマエの頬が紅潮する。グレースとレオンハルトのあいだに見えない圧を感じ、困惑するナマエに同情したエドが助け舟を出した。「あのさ〜、そろそろ時間じゃない?」エドの言葉に「あっ!」と牧野が慌てて腕時計に目を落とす。そして「総員!配置につけ!」と声を張った。ナマエは紅い頬を隠すように俯くと足早に席へと戻っていく。グレースはフン
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    カイネ

    MOURNINGfry落ち(たまに📖沿い)
    夢主設定→教師 fryの高校の同級生 両片想いのまま卒業
    #decnプラス #decn夢
    二度、恋をする。【ゼロの執行人沿い】⚠1〜4を読んでからお読みください4月28日土曜日__…ナマエは干していた洗濯物を取り入れると、テーブルの上に置いていたリモコンでテレビを点けた。そしてチャンネルをまわし、普段観ているワイドショーで止める。「《無人探査機【はくちょう】が火星からのサンプル採取を終え、日本時間の5月1日、いよいよ地球に帰って来ます。》」女性アナウンサーが帰還計画図に沿って、帰還カプセルの回収方法やカプセルの説明をしている。ナマエは取り入れた洗濯物をたたむため、テレビ画面から目をそらした。「《番組の途中ですが、たった今入ったニュースです。》」顔を上げると女性アナウンサーが探査機について説明していたスタジオから切り替わり、報道局が映っていた。緊迫した様子が男性記者の表情から読み取れる。「《お伝えします。来週、東京サミットが行われる国際会議場で、先程大規模な爆発がありました。その時の防犯カメラの映像です。》」記者がそう伝えると、テレビ画面が防犯カメラの映像に切り替わる。お腹に響くような音がしたかと思うと、国際会議場が爆発し、煙に覆われた。『サミット会場で爆発だなんて…。』洗濯物をたたむ手を止め、テレビの映像を食い入るように観る。「《現場となった統合型リゾート【エッジ・オブ・オーシャン】はまだ開業前だったため利用客はいませんでしたが、サミット警備の下見をしていた警察官数人が死傷したとの情報が入っています。繰り返します。》」再び、爆発現場の映像が流れ、ナマエはただただその映像を見つめる事しか出来なかった。
    19819

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    カイネ

    MOURNING⚠🎞ネタバレ注意
    夢主設定→grcの同僚で恋人同士
    #decnプラス #decn夢
    書きたいひとコマを書いただけ。フサエブランド数量限定販売のブローチを求めてデパートへやって来た夢主と付き添いのグレース。整理券を受け取り、販売開始時間になるのをカフェで待つ。『今日はありがとう、グレース!』「ワタシも夢主とのデートを楽しめて嬉しいわ」グレースの仮面を被ったピンガがウインクをひとつ飛ばす。デートと言う単語に顔を赤らめる夢主にピンガは満足そうに笑った。「そろそろ販売開始の時間ね」グレースの言葉に夢主達はカフェを後にし、フサエブランドの店舗へと向かった。整理券を握り締め、ワクワクする夢主を隣で眺めるピンガの目元は優しく、尊い物を見つめるような瞳だった。「あの…すみません」突然、後方より声を掛けられ、振り返ったピンガの目にひとりの老婆が映る。「ブローチの販売列はここかしら?」「え、えぇ…そうよ」少し戸惑った様子で返事するグレース。変装してやがるがこのババア、ベルモットだな。ピンガは目の前で笑顔を絶やさない女の動向が読めず警戒する。だがそれ以上、話し掛けて来る様子はない。警戒しながらも楽しそうに話し掛けて来る夢主の話に耳を傾ける。そんなピンガの後ろ姿を見つめながらベルモットは口角を上げた。この子が例のKittyちゃんね…あのピンガを魅了している真っ白な子。ふふ、面白いわね。
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    カイネ

    MOURNINGfry落ち(たまに📖沿い)
    夢主設定→教師 fryの高校の同級生 両片想いのまま卒業
    #decnプラス #decn夢
    二度、恋をする。1
    【喫茶 ミチクサ】
    コーヒーの香りが漂う店内にマスターの宮本とカウンター奥に座る女性が1人。宮本はコーヒーカップを拭きながら女性へと視線を向けた。女性は真剣な眼差しを左手の文庫へと落とし、その世界にのめり込んでいるようだ。宮本にはどんな物語を楽しんでいるのかまではわ分からなかったが、女性の真剣な表情を見ているこの時間が嫌いではなかった。ふと、文庫のページが残りわずかな事に気付き、宮本の口から小さなため息が漏れた。ペラ…ペラ…と読み進められていく物語。そして女性は最後の行を読み終えると静かにそれを閉じると『ふぅ…』と息を漏らした。どうやら今、体験し終えた物語に満足しているようだ。しばらくのあいだ、余韻に浸っていたが文庫を鞄の中へ戻すとカップに残った僅かなコーヒーを飲み干しカウンターから腰をあげる。そしてレジでコーヒー代を払うと女性は『ごちそうさま』と礼を告げ、ミチクサを後にした。女性の名前は、【ミョウジ ナマエ】。帝丹高校で国語を教えており、生徒からは親しみを込めて【アダ名】ちゃん先生と呼ばれる事もあった。趣味は、静かな喫茶店を見つけてはそこで読書する事。先程まで居た【喫茶 ミチクサ】はここ最近贔屓にしている店だった。雰囲気も良く、コーヒーが美味しい。学校が休みの日はこうして米花町の喫茶店を渡り歩いている。なので、帝丹高校の学生と出会う事も少なくはない。
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    カイネ

    MOURNINGfry落ち(たまに📖沿い)
    夢主設定→教師 fryの高校の同級生 両片想いのまま卒業
    #decnプラス #decn夢
    二度、恋をする。23
    テストも無事に終わり、ナマエは久々に【ミチクサ】を訪れていた。いつもはカウンター席に腰掛けるが、今日は窓側のテーブル席に身を置き、ノートパソコンと向き合う。テーブルの上には頼んだカプチーノと手帳にスマホ、びっちりと文字が書き込まれたノートにポーチが並んでいる。パソコンの画面とにらめっこしながらキーボードをカタカタと打ち、時折、目頭を抑えてはため息をつき、再びキーボードを打つと言う作業を繰り返す。宮本はそんなナマエに目をやりながらも自分の作業を進めて行く。他に客は居らず、ナマエの打つキーボードの微かな音と店内に流れるBGMが心地良い。『あ…』不意にナマエの口から声が漏れ、宮本はそちらを見た。ナマエはパソコンから顔をあげ、店の外へと視線を向けている。宮本は不思議に思い、窓の方へと視線を動かす。そして窓ガラスをはさんだ向こう側に1人の男が立っている事に気付いた。金色に近い髪が風になびき、男の青い瞳があらわになる。「(あいつは…)」風が強かったあの日。【ミチクサ】の向かいの歩道でナマエと抱き合っていた男だと宮本は気付き、眉間に皺が寄る。そんな宮本とは裏腹にナマエは笑顔を浮かべ、席を立った。そして荷物をそのままに宮本に一言声を掛け、店の外へと出て行く。どうやら男が外へ出て来るように合図したようで、宮本の心の中をどす黒い影がじわりじわりと侵食して行った。
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    カイネ

    MOURNINGfry落ち(たまに📖沿い)
    夢主設定→教師 fryの高校の同級生 両片想いのまま卒業
    #decnプラス #decn夢
    二度、恋をする。35
    帝丹高校での仕事を終え、自宅マンションへと辿り着くと郵便受けの中身をチェックする。会員登録しているデパートからのお知らせなどに交じって白い封筒が入っていた。宛名が書かれておらず、裏返してみても差出人の名前も見当たらない。ナマエは不思議に思いながらもマンションの階段を上がって行く。ヒールの音が静かにコツコツと響いた。ナマエは鞄から花柄のポーチを取り出すと、キツネのキーホルダーが付いた鍵を鍵穴に差し込む。『ただいま…。』誰もいない部屋に向かって、帰宅の挨拶をする。一日履きっぱなしのヒールを脱ぎ、洗面所へと向かった。手を洗い、うがいを済ませると着ていた服を脱ぎ、部屋着へと着替える。普段と変わらない行動なのに何故か違和感を感じ、ナマエは辺りを見渡す。だが、特に変わった様子はない。ナマエは首を傾げながら脱衣所を後にした。簡単な夕飯を作り、テレビを見ながらそれを口を運ぶ。バラエティ番組から流行りの芸人のギャグが聞こえて来る。ナマエは食べ終えた食器を持ち、流しへと向かう。洗い物を済ませ、食後のコーヒーの準備をしている時、ふと白い封筒の存在を思い出した。お湯が沸くまでまだ時間がある。ナマエは郵便物の中から白い封筒を取り出しそれを開けた。封筒の中には一枚の便箋が入っており、ナマエは恐る恐る便箋を開く。『な、に…これ…。』開いた便箋には【君のことは守るから安心して】と書かれていた。手書きではなく、パソコンで打たれた物でどんな人物が書いたのか想像出来ない。ナマエは気持ち悪さを感じ、その便箋を思わず投げ捨てた。『…ど、どうしよう。』初めての事に頭がうまく回転しない。心臓も信じられない速さで鼓動を打ち、次第に呼吸も乱れ始めた。『(落ち着け…!落ち着け…!)』早鐘を打つ胸に手を当て、必死に呼吸を整えようとしていると、ふいに安室の笑顔が脳裏に浮かんだ。ナマエは、はっとしてスマホを掴むとアドレスから【安室透】の名前を探す。だが、探している途中で、その手が止まった。本当に今すぐ安室に頼らなければならないのか?ただのイタズラではないのか?そう思い出すと気持ちがスーッと落ち着き、呼吸も普段通りに戻る。『(…安室さんだって今頃、プライベートな時間を過ごしてるんだから邪魔しちゃいけない…。)』ナマエはスマホをテーブルの上に戻すと床へ落とした手紙を拾いあげる。そしてなるべく内容は見ないようにして封筒へと直
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    カイネ

    MOURNINGfry落ち(たまに📖沿い)
    夢主設定→教師 fryの高校の同級生 両片想いのまま卒業
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    二度、恋をする。46
    「それでナマエは大丈夫だったの?」澁谷の自宅マンションでコーヒーを飲みながら先日のストーカー事件が話題にあがる。『安室さんと毛利さんのおかげでなんとか…。まだ少し夜は怖いけどね。』そう言うとナマエは苦笑いを浮かべた。「だよね…。」『…夏子?』澁谷の様子に違和感を感じ、ナマエは澁谷の顔を覗き込む。「………実はさ、」

    「………なるほど。勤務先の学校から何者かに跡を付けられているような気がすると言うわけですね。」安室の問い掛けに澁谷は小さく頷いた。「…それで、調査のお願いって出来ますか?」「えぇ、もちろん。任せて下さい!」安室はそう言うとポケットから名刺ケースを取り出す。そしてそこから名刺を一枚出すと、澁谷へと差し出した。「基本、調査の報告はメールで行います。」澁谷は名刺に書かれているアドレスを見る。「わかりました。あとでこのアドレスへメール送っておきますね。」手帳へと名刺を挟み、安室を見た。安室は「お願いします」と返事を返すと、ナマエの方へと優しい視線を向ける。澁谷はそんな安室の様子を見て大きな声を上げた。「あ!ごめん、ナマエ!私ちょっと用事思い出したから帰るね!」澁谷はそう言うとナマエの返事も聞かぬ間にコーヒー代をテーブルへ置くと勢い良く席を立つ。『ちょ…夏子?!』澁谷の背中に向かって言葉を投げるも届かず、慌ただしく店を飛び出して行った。『慌ただしくてすみません。』ナマエは小さく頭を下げる。「いえいえ。…ところでナマエさん…あれからしばらく経ちますが、どうですか?」『少しずつ普段の生活に戻っては来てますが、やっぱり夜になると少し、怖いです。』カプチーノが入ったカップの縁を撫でながらそう答えたナマエは何かに気付いたようにパッと顔を上げた。『あ、安室さん!』「はい、なんですか?」『あれほど色々して貰っておきながら私…安室さんへの支払いが…!あのお幾らですか?』ナマエはそう言って鞄の中から財布を出そうとする。だが安室はにっこりと微笑み、それを制す。「ナマエさん…あれは僕が好きでやった事です。なので報酬は入りません。」『そ、そんなわけには!』ナマエ自身が気付いていないところで色々としてくれたに違いない安室に対してこればかりは引き下がれない。ナマエは強い眼差しで安室を見つめる。「……うーん…そこまでおっしゃられるのなら、そうですね。」安室は顎に手をやり、少し考える。そして
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    何でも許せる方のみ。深いこと考えたら駄目だ。
    ヘビースモーカーなK学同期原作知識ありトラ転女主です。

    ※本当の名前(トラ転前の名前)を明かせば存在自体が無かったことになる世界で、それでもお互いに恋情を持っていたfryのみは彼女のことを覚えていたら。



    ?「これは、駄目な私の [[rb: I F > しあわせな]] 物語」
    医療従事者の方々にはマジで申し訳ねぇ!▼僕が欲しいもの▼


    懐かしい場所に呼び出され《少し曰わく付きな彼女》が誰にも明かさなかった本名を教えてくれた。そして突然の『さよなら』を口にした瞬間、目の前のその身が砂のようにサラサラと消えはじめる。『目的を達成したらどうなるかわからない』と言っていた癖に、知っていたんじゃないか。どうにか抱き締めようとしたのに間に合わず伸ばした手の中にキラキラしたものを掴めただけで、手を開くと同時にそれも消えてしまった。彼女の吸っていたタバコの香りだけが残っている。僕には将来を共に歩むのならキミしか居ないのに、どうして。それからこの世から彼女を知る人間が消えた。警察学校同期達をはじめ彼女と親しくしていた者や彼女に関する情報全てが元より存在しなかったかのようにそれとなく改変され何も無い。彼女が好んで吸っていたタバコに火をつけ、あの日からもう何年もこのタバコを吸わなければ眠れないという事態に陥っている。重症だ。最早これは自傷行為に近いなと苦笑した。
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