書きたいひとコマを書いただけ。3(2の続き)「で、ナマエさんは倒れている直美さんを見たんですね?」『は、はい』カフェエリアの一角で、黒田と白鳥と向かう形で座るナマエは小さく頷いた。「覚えている事があれば教えてください。犯人の顔は見ましたか?」白鳥の問い掛けにナマエは首を横に振った。『一瞬の事でしたので、顔までは…あ、でも…』「でも?」『犯人のひとりが驚いた表情で“Kitty”って言ってました。』「Kitty…ですか。」黒田と白鳥は顔を見合わせ、ナマエに視線を戻す。コナンは近くのプランターボックスの陰でナマエ達の話を盗み聞きしていた。「(…Kitty?子猫って意味だが、何か意味があるのか?)」顎に手を当て、Kittyの意味を考えていると事情聴取を終えたナマエが席を立ち、カフェを後にする。コナンは足早にナマエの後を追った。
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コナンは唯一、犯人の姿を直接目撃したナマエに話が聞きたくて声を掛けようとした。だが、そんなコナンよりも先にナマエに声を掛けた人物がいた。「あ、ナマエ!やっと事情聴取が終わったのね!」グレースはカフェ近くに設置されたベンチから腰を上げるとナマエに駆け寄る。ナマエはグレースの姿を確認すると安心した表情を浮かべ、グレースの身体に抱き着いた。直美が拉致される現場を目撃し、ナマエ自身も犯人の手刀により気絶させられていたところをグレースによって発見された。そして息つく暇もなく警察の事情聴取が始まったため、心が不安で押し潰されそうになっていた。「ナマエ…」グレースはナマエの身体を抱き締め返すと優しく髪を撫でる。コナンはふたりの姿を見つめていたが踵を返し、その場を後にした。
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ピンガはナマエが事情聴取を受けているあいだに届いたウォッカからのメッセージを思い出していた。内容は直美が生み出した“老若認証システム”によって死んだとされていた組織の一員であるシェリーを発見したと言う物だった。添付された画像はシェリーとシェリーにそっくりな少女が老若認証で一致した事を示していた。これが本当にシェリーだとしたら一体どうやって少女の姿になったのか。それを知るためにシェリーに似た少女を拉致せよとウォッカ伝てにラムから命令がくだったとメッセージには書かれていた。「(ラムの指示なら仕方ねぇか…。)」ピンガが時計を確認すると時刻は20時をまわっていた。少女拉致の計画時刻は23時。それまでにここ、パシフィック・ブイから少女が泊まるホテルまで向かわなければならない。「(時間がないな…。)」少女を拉致している時刻にグレースがパシフィック・ブイ内にいない事が知られれば、後々面倒な事になる。そう考えたピンガはグレースがいない事にいち早く気付くであろうナマエを部屋から出ないように仕向けるため、ナマエが事情聴取を受けているカフェへと向かった。
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グレースはナマエの自室へ入るとナマエの首に手を伸ばした。「首は大丈夫?」ベルモットの手刀を受けたであろう箇所が見えるように髪を避けると首元を覗き込んだ。『もう痛みは感じないよ』と答えるナマエにグレースは大袈裟な声をあげる。「え、本当に?!ナマエの首、大きな内出血が出来てるわよ?」そう言って慌てた様子で医務室から拝借して来た湿布を取り出すと素早くナマエの首へと貼った。『え、そんなに?』驚くナマエにグレースは「かなり」と返すが、本当は湿布の下には内出血などひとつもない。「いい、ナマエ。今日はこのまま安静にしてなきゃ、ダメよ!ワタシは深夜業務が入ってるからずっとここには居られないけど、ワタシの言う事が聞けるわね?」ナマエの肩に手を置き、いつも以上に真剣な瞳でナマエを見る。そんなグレースにナマエは頷く事しか出来なかった。「…いいこ、ね。」グレースは妖艶な笑みを浮かべると、ナマエの唇に己の唇を重ね、ねっとりとした口付けを落とす。ぴちゃぴちゃと唾液が絡まる音だけが室内に響き渡った。
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ナマエの部屋を後にしたピンガはウォッカと合流すると四輪駆動車の運転席に座っていた。「急な任務だってぇのに、えらく機嫌がいいな。」ウォッカはピンガを見てそう言った。「あぁ、ちょっとな。」グレースの言い付けを素直に受け入れた褒美に口付けを落とすと一生懸命にそれに答えようとするナマエの表情を思い出し、ピンガは口角をあげた。ウォッカは理由を話さないピンガに肩をすくめると前方へと視線を戻す。「……見えた。あのホテルだ。」海岸沿いを走っていると煌びやかなベルツリーホテルが姿を現した。
🎞観ると🎞沿いのお話を書きたくなる\♡/